ハヌマーンの彼との出逢い4

少し歩こうか、と彼が言い、海の見える博物館や、林の中の小道をいろいろ話しながら歩いた。このあたりは私のパートナーや子どもたちとの暖かい思い出もいろいろあって、なつかしくなる。こんなことあんなこといろいろあったよ、と話すと、彼も楽しそうに私の話を聞いていた。私自身、実は小さい頃から彼の国に縁を感じていた時期が長らくあったこと、彼と話しながら思い出してきた。

飲み物を買って、またバスタオルの木陰に戻った。珈琲屋さんの前で会ってからあっという間に5時間。陽が傾き出し、海風が心なしか涼しくなっていた。

僕は母国に帰ったら決められた人と結婚し、大家族で暮らし、子供を育て、という大きな流れに沿っていくことになるだろう。すでに母国での結婚適齢期は超えているし、それは心配そうにしている母を喜ばせることでもあり、人生の課題のようなものだから、やるべきことと思う。でも自分が自分として、責任と関係なく自由意志で繋がるそのことを、僕は大切にしたい。人生のステージが変わって行く中で、そういうつながりは変化し、あるものは消え、あるものは形を変えて続いていく。今のご縁が、将来の何につながるのかは予測ができない。でも僕は、この縁に、強烈に惹かれている。お互いの来歴や、状況や、ケミストリーから、僕はエリーと、友達以上の繋がりを求めたくなっている。きっとエリーも同じような不思議な繋がりを感じているんじゃないかな、と、彼は上品で純粋な目で私を見た。

不思議な人だ、と思った。知らぬ間に彼への、彼の背景にある知の深淵や歴史や文化への興味が深まってしまっている自分に気づく。タトゥーの中のハヌマーンが、シヴァ神の下で静かに何か思いを決めている様子を、頼もしく、また美しく感じる。

さぁ、夕方になってきたね、今日はこれからどうしようか?と彼が言う。時間があるならぜひうちの近くの美味しいレストランで食べよう、それか、うちにおいでよ、料理するよ、と明るく彼が言った。

ああもう少しこの楽しい時間を過ごせたら、、、と願ってしまった私は、頭の中に言い訳を探した。美味しいものは大好きだし、このエリアにも興味がある、この後予定があるわけではないし、彼と美味しい料理やエリアを楽しむことは罪じゃないよね。

行こうかなと私は答えた。
行こう!と彼は自然に答えた。

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