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禁断の階段改訂版 第六話-新たなステップ

 裕司は新たに二つの事を始めようと決めた。一つはもちろん相手を探す事だ。男を相手にするのは正直未だに気は進まない。でもそんな事を言っていては変化は望めない。
 そしてもう一つは化粧をすることだった。
 裕司はネットでカリスマ女装子として名高いS子のサイトをよく見に行っていた。若そうだし元々の容姿も整っているのだろう。サイトに載っている画像はどれも女の子にしか見えない。
 ただそれも化粧があってこそで、女装初期のものとして掲載されている写真では、女性の服装ではあるもののウィッグは被っておらず化粧も口紅程度で素顔が分かってしまいそうなレベルだ。化粧をしている完全女装とは全然違う。
 そういう事を考えると、今の自分が所詮女性の格好をしているだけの男であり、女装とはとても言えないと痛感する。今まではそれでも満足できていたが、他人に相手をしてもらうためにも化粧は避けて通れないと感じていた。
 裕司は前にも何度か行っていた新大久保の女装洋品店を訪れると、新しいウィッグや化粧品セットなどを購入した。
 夜になると寝室へ向かい、着ているものを全て脱ぎ捨てるとベッドの下の引き出しを開けた。
 選んだのはサイドストリングのモスグリーンのパンティ。片方ずつ脚を通し、腰まで引き上げると。ベージュのパンティストッキングで下半身を包み込む。
 ブラジャーはブラウンのチューブトップのタイプ。身体の前でホックを止めて後ろに送るようにしてカップを前に持ってくるとその中に人工乳房を仕込む。化粧品と共に買った三万円以上するシリコン製の高級品だ。それまで使っていたウレタン質のものとは触った時の感じがまるで違う。
 上はリンゴの絵があしらわれたタンクトップ。普通のブラジャーだとストラップが見えてしまうのでブラジャーはストラップのないチューブトップのものにした。スカートは蛍光色の黄色いフレアのミニスカート、股下十センチ位で持っている中では一番丈が短いものだ。
 それから洗面所の鏡の前に買ってきた化粧品と、あらかじめプリントアウトしておいた『初めてのお化粧』と言うサイトの文章を見ながら、化粧を始める。
 よく顔を洗うと化粧水と乳液を塗り、更にその上からファンデーションを重ねていく。眉毛の端のまばらな部分ははさみでカットし、足らないところをアイブロウペンシルで書き足すと、瞼にアイシャドウをなじませる。それからチークカラーと口紅を塗り、最後に新しく買ってきたウィッグを被る。
 おおっ…
 鏡に写った自分の姿に驚かずにいられなかった。真新しい栗色のボブヘア、細い山形に整えられた眉毛、肌のきめが整った白い顔、そして赤みのやや強いピンクのルージュに彩られた唇。今までとは雲泥の差だった。
 自分でもおこがましいが、どこから見ても女とは言わないまでも、遠目になら十分女の子で通じるのではないかと思えてしまう。
 化粧を終えるとデジカメを三脚にセットし何も無い白い壁を背にして、タイマーで写真を何枚か撮影すると一番可愛く見えるものをパソコンの方に保存する。そしてメッセージを投稿するためにあらかじめ調べておいたホームページにアクセスする。
 そこは〇〇〇倶楽部と言う名前で、定期的な集会も催しているなどかなりしっかりしたところのようだ。値段も良心的で集会への参加にも興味が湧いたが、今の目的はそれではない。
 相手募集の掲示板に入ると祐司はメッセージを入力していく。

  都内在住のセーラー服大好きな三十代の女装っ子初心者です。
  今まではオナニーだけで満足していたのですが、
  最近物足りなさを感じるようになってきました。
  決して同性愛者ではありませんが、最近女装関連のサイトにいくように
  なって同じ趣味の方と身体を重ねてみたいと思うようになりました。
  男性の方に女性として扱われる事にも興味はありますが、
  今回はレズプレイをしていただける女装っ子さんを募集します。
  都内もしくは近郊の方で会っていただける人がいらっしゃいましたら
  連絡下さい。いきなり会うのは怖いのでまずはメッセージ交換から
  始めましょう。
  清潔感のある方を希望します。出来たら細めの方だと嬉しいです。

 男性、いわゆる純男を相手にと言うのは最終的な目標ではあるが、いきなり最初からというのも怖い。その点同じ女装者相手のレズなら入りやすいかなと思ったのだ。
 文章を入力すると、先ほど撮影した画像を貼り付け、最後に名前を入力する。
 女の子の私の名前、西嶋…め、ぐ、み、
 書き込みのボタンを押すと、玄関へ向かう。この事であの昂奮を取り戻すことは出来ないと分かっているが、めぐみになった手始めにやってみたい事があった。
-続く-

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