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北米の歩き方(Canada ver.)

アメリカに飽きてきたところで、一足伸ばしてカナダに遠出するのも気持ちが良いものである。

けちけち旅

貧困学生の貧乏旅において重要なのは、いかに交通費と宿泊費を抑えるかである。この2つが支出のほとんどを占めるからである。そこで旅のポリシーとしては、第一に陸でつながっているところは飛行機など使わないということだ。筆者とその友(Joon)はボストンからモントリオールまで深夜バスでのらりくらりと向かった。

早朝5時の検問所

寝ぼけている時に立ち向かってはいけない人物トップ3は、車校の教官、キレ気味の母親、そして入国審査官だ。筆者は睡眠にかなり敏感なので、揺れの激しい車内の不安定なシートで深い眠りに付けるわけもなく、寝ぼけ状態でバスをおろされ検問所に入ってしまった。

パスポートを手渡し、迎えた1問目。
少し強面のおじさんと迎えうつ。

審査官:"Where do you live?" 
とフランス語訛りの英語。

ん、目的地を聞かれているのか(と誤解)。
自分:" Montreal." 
自分:" I mean, Montreal, Quebec City, Toronto, and Niagara Falls." 

ん、表情が険しくなったぞ。どうした?
審査官:"Sir, I am asking you "Where do you live" "  
口調がさらに厳しくなる。
自分:"So I am staying at Montreal, Quebec…" 

持っていたパスポートが机の上におかれる。ついに逆鱗にふれたみたいだ。
審査官:" It's a simple question, I'm going to ask you again, "Where do you live"" 
自分:" ….What do you mean?" 
審査官:" … WHERE DO YOU LIVE?"
自分:" Oh, I live in Massachusetts, US." 

そう、「どこに住んでいるの」を「旅行中どこに住もうとしてるの」と誤解してしまったのだ。

今考えれば、一回目の解答で"Montreal" で止めておけばまだバレなかったものの、ケベックシティとトロント、しまいにはナイアガラの滝と言ってしまったことで、質問を理解していないのがさらされてしまった。ただ、審査官からしてみれば、朝5時から自称カナダ4か所を拠点にして生活してる怪しさ全開の男に出会って疑いをかけるのはむしろ当然だろう。

それにしても、審査官のおじさんの目力が半端なくてちびりそうだった。背後には紫色のオーラがメラメラと漂っていた。もう少しニコニコしてくれたら心に余裕ができて早く気づけてはずなのに。どうしてこう、入国審査官はみんな不愛想なのだろう。職業柄、厳しさが必要なのはわかるんだけどさ。

空港とか大きい場所の入国審査ゲートには、「審査官の対応はどうでしたか」をBad~Greatの5段階くらいの表情絵文字で評価するパネルがあるときがある。

もしそれがあったなら、今回の男は間違いなく"Bad"である。

モントリオールのノートルダム大聖堂。彫刻と電照が煌びやか。
おじさんそこどいてくれ。

フランス語圏にステップイン

「ケベック地方はフランス語話者が8割」とかそんなことを地理で習ったのをうっすら覚えてるだけで、実際に行くチャンスがあるとはつゆにも思わなかったけど来れてしまった。深夜バスしか勝たん。

筆者は大学の第二外国語でフラ語を学んでいたので、ここぞとばかりに付け焼刃の"Français" をかましていく。

手始めは" Bonjour" 。店に入ったらだいたい店員さんと言葉を交わす。

フランス語は"r"の発音がどうもトリッキーである。
世の中のおじいちゃんがするような、痰を吐くときの「カーッ」って音の、その一歩手前みたいな音を喉で鳴らさないといけない。
「世界一美しい言語」に大変失礼な説明の仕方で怒られそうだが、実際そういう音だから仕方がない。

他にも、"Tres bien" (良いです)とか、"Merci beaucoup”(どうもありがとう)とか、”Au revoir"(さようなら) 、簡単なフレーズは意外と覚えている。

思い返してみれば、これらはフラ語のスピーキングの先生が毎度必ず授業はじめ終わりに使っていた挨拶だ。憂鬱だった1限のzoom授業も、こうしてどこかで恩恵に与かっているのだと思うとなかなか感慨深い。

トロントの市民市場。フランスの食文化の影響もあってか、
肉の畜種が豊富。うさぎ、ガチョウ、シカ、七面鳥などが大集合。

Better than America, Mixture of Everywhere

カナダを一言で表現するなら、この言葉に尽きると思う。アメリカより食べ物は安いし、フランスの影響もあるのかセンスがあって美味しいし、地下鉄はきれいだし、街は落ち着いているし、夜の治安もいいし、人もフレンドリー。「過ごしやすい」がぴったりの言葉かもしれない。

ただ、カナダのシティは正直ぱっとした魅力がない。他のメジャーな都市に置き換えることができる。ケベックやモントリオールはパリ、オタワはワシントンD.C、トロントはNYCといった具合である。北米最大級の中華街もトロントにある。さらにトロント周辺にLondonという町まである。
つまり、カナダ旅行は実質世界旅行である。

千と千尋のあいつら

金正恩、モントリオールに降臨

筆者の個人的な楽しみの一つに、旅先での散髪がある。時間をもてあましたら、地元民が通っていそうな床屋に立ち寄り、「ご当地スタイル」とだけ伝えて切ってもらう。今まで、マレーシアのコタキナバルと台湾の花蓮でやってきたが、今回は果たしていかに。

舞台はモントリオールの街中から少し外れた住宅街。霧がかった薄暗い夕暮れで、建物も濃いレンガ色なので少し不気味な雰囲気が漂う。その中に、ぽつんと「New York」の看板とサインポールを発見した。

モントリオールのNew York。事件性が高いと直感する。
行ってみるしかない!

おそるおそる入ってみると、陽気な若い黒人のお兄ちゃんが迎えてくれる。その手前横にはヒスパニック系のボス的なおじさんがドカッと椅子に腰かけている。

"Can I have my hair cut here…?" 
" (何か知らない言語で意思疎通する)" 

どうやらオッケーみたいだ、黒人のお兄ちゃんが椅子まで連れてってくれる。しかしここで問題が発生した。このお兄ちゃん、スペイン語とフランス語を話すが、英語が分からないみたいだ。そして筆者は英語しかだめだ。使えるカードは" Amigo" と " Si"の2枚だけ。いざ尋常に勝負。

試しに、" Canada Style" と伝えてみるが、そんな髪型は心当たりにないようで、「もっと具体的に」的なことを言われてしまった。

こうして晴れて、人生で初めてジェスチャーで髪を切ることになった。

後ろは「ブー(バリカン)」、横も「ブー」、上は「チョットダケ」的なことを、手振りで伝えてみる。

" No problem, no problem " 
それならよかった、じゃあ任せよう。
ただ経験上、こういうお兄ちゃんの「No problem」は、だいたいNo problem じゃない。

無事散髪を終え、帰路途中でJoonに一言。
「俺金正恩じゃね、髪型」
「うん、俺も思ってたけど言わないでおいた。途中バリカンが薄くなるまでまでは韓国の中学生で持ちこたえてたんだけどねぇ。」
「・・・」

どうやらバリカン1枚で着地点が少し北にずれてしまったようだ。筆者はメガネをかけてるし、最近ハイカロリー食が多く丸くなってきたところであったのでなおさらである。

カナダのフランス語圏の散髪屋「ニューヨークカット」で、スペイン語の黒人のお兄ちゃんが日本人の髪を切ると、北朝鮮の独裁者が誕生しまった。
絵の具の色全部混ぜたら黒になるみたいなことか。

CNタワーは無機質で少しがっかり。真ん中のドーナツが上下可動式になれば面白いのに。

カナダの食べ物

特に美味しいものなし。

Guessするのはracist なのか、思いやりなのか。

ケベックシティの服屋に立ち入ったときのこと。店員は私たちを見て、”Hi”と挨拶してきた。僕たちも挨拶を返した。
少したって白人の子連れ家族が入ってくる。店員は"Bonjour”と挨拶をした。すると彼らは"Hi”と返した。アメリカ人の家族みたいだ。店員は、この家族のことをフランス語話者と思ったらしい。

要するにこの店員は、客の見た目に応じて挨拶の言語をかえているのだ。

アメリカのタブーみたいなものの一つに、「人の属性(性別、国籍など)を見た目で判断してはいけない」がある。一歩間違えるとRacistになるから。一つ、思い出すことがある。渡米間もない頃に、新しく知り合う人と会話するときに「自分はどこ出身だと思う?」と楽しみ半分で問いかけることをよくしていた。
大半の人はGuessしてくれるのだが、ごく一部には、「いや~ほんとにわからない。」と、いくら回答を迫っても答えてくれない人がいた。

本当に全く分からない可能性ももちろんあるのだろうけど、彼らの少し困惑した表情から察するに、おそらく「答えたくなかった」のだと思う。外してRacistになりたくないから。

こう考えると、このケベックの店員は見た目だけで人の属性を判断しているからRacistになりうるのだろうか。果たして、それは他人に合わせようとする優しさ・思いやりなのだろうか。本人からすれば、もちろん後者なのだろうが(そう信じたい)、間違い方によっては前者になり得る可能性も十分にあった。

人を見た目で判断することは諸刃の刃なのだろう。
ちなみに筆者はよく東南アジア(マレーシアやベトナム)出身みたいだと言われる。

旅のMVPはナイアガラの滝

圧倒的な威圧感。威圧感とは反対に、テーブルクロスが机から滑らかに滑り落ちるみたいに、静かに深い音を立てながら落ちていく瀑布。一度見つめ始めたらしばらく動けなくなる類の光景だ。

夜のナイアガラ(アメリカ側)も結構いける。









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