悔し涙と決意
ピッ、ピッ、ピーーー!
試合終了の笛がグラウンドに鳴り響いた。
思考が停止した。
周りを見渡すと、多くのチームメイトが涙を流している。
私は、そんなチームメイトを見ながらグラウンドを後にした。
11月3日。
この日は、入れ替え戦という、私たち文教大学体育会サッカー部にとってとても大事な試合の日だった。
入れ替え戦の重要性が分からない人のために、簡単に説明する。
私たちは1年間、リーグ戦を全力で戦ってきた。それはもちろん、やるからには優勝をしたいからという理由である。
しかし、それだけではない。
来年、関東大学サッカーリーグNorte1部に昇格したいからという理由でもあった。
今年の、関東大学サッカーリーグNorte2部のリーグ戦システムとして、1位と2位は「自動昇格」。
3位と4位は「入れ替え戦」というステージに進み、「入れ替え戦」で勝てば、昇格出来るというシステムだった。
私たち文教大学は、優勝を目指してやってきたが、リーグ戦途中にして、優勝が絶望的となってしまった。
そんな私たちに残されていたのは、入れ替え戦で勝利をし、Norte1部に昇格する事のみだった。
私たちの、入れ替え戦にかける思いは本当に強かった。
舞台は栃木県足利市にある、足利西部多目的運動場(通称:あしスタ)。
相手は、白鴎大学さん。
入れ替え戦のルール上、Norte1部のチームは、引き分け以上で勝利となる。
つまり、Norte2部の私たちが昇格するには、勝利をするしかなかった。
相手も負けてしまったら、降格をしてしまう為、もちろん必死になる。
そのため、試合はとても白熱していた。
そんな中、私たちは先制をし、試合時間残り10分まで1対0で勝っていた。
このまま勝てるかもと、誰もが希望を抱いていた。
しかし、セットプレーで失点をし、同点とされてしまった。
そのまま刻々と時間が過ぎ、
ピッ、ピッ、ピーーー!
試合終了の笛がグラウンドに鳴り響いた。
試合は同点で終了した。
私たちは、
試合には負けていないが、
勝負に負けた。
思考が停止した。
周りを見渡すと、多くのチームメイトが涙を流している。
私の目には不思議と涙は無かった。
私は、グラウンドで涙を流しているチームメイトを見ながら、グラウンドを後にした。
すると、正面から歩いてくる両親が目に入った。
両親は、自分の目の前まで歩いてきて、私にこういった。
「ナイスプレー、よく頑張ったな。」
私は、両親からのこの一言で、自然と涙が溢れ出た。
試合に勝ち、日頃から応援してくれている両親を喜ばせたかった。
そう思えば思うほど、涙が止まらなかった。
しばらくして、両親は自分の元から離れたが、それでも涙の止まらない私は、人目のつかない所で泣いていた。
人前で泣いたのはいつぶりかというほど、最近は泣いてこなかった私があそこまで泣いたのは、それだけ自分の中で想いが強かったのだと思う。
時間が経ち、泣き止んだ私は、自分の中でこう思った。
「もう二度と同じ思いはしないし、させたくない」
と。
自分は幸いなことに、まだ2年生ということで、来年がある。
お世話になった先輩方と結果を残して、良い思い出にしたかったという思いは強かったが、結果はもう変わらない。
今年成し得なかったリーグ優勝、Norte1部に昇格を、来年はなんとしてでも取りに行く。
もう二度と同じ思いはしたくないし、させたくない。
新しい代になり、任された副キャプテンという立場でチームを優勝まで導く。
その思いを背負いながら、私たちはこれからもひたむきに練習に取り組んでいく。
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