令和3年司法試験結果の概要

本日令和3年司法試験の最終結果が出ましたので、受験状況や合格率の推移をまとめてみました。グラフの説明や分析結果は後日追記します。
→(9/8)追記しました。

受験状況

(参考・・・「令和3年司法試験受験状況」)
・出願者:3,754人(前年4,226人)
・受験予定者:3,733人(前年4,100人)
・欠席者:303人(前年397人)
・受験者:3,424人(前年3,703人)
・受験率:91.7%(前年90.3%)
 ※受験率=受験予定者に占める受験者の割合
・採点対象者:3,392人(前年3,664人)
 ※採点対象者=全科目受験した者の数


出願者・受験者数の推移(2012~2021)

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 司法試験の出願者・受験者は年々減少しており、特に受験者は昨年に引き続き4000人を割り込むこととなりました。これは、新司法試験制度に完全に移行した2012年当時の受験者数の半数以下に当たります。
 この減少傾向は来年も続くと予測されていますが、再来年には在学中受験制度(2年次までに所定の単位を修得している者に対し、法科大学院在学中の司法試験を認める制度)が導入されると共に、法曹コース(法学部で3年学修後にロースクールへの入学を認める、いわゆる「3+2」の教育課程。参考資料)の利用者が初めて司法試験を受験する年となり出願者・受験者の増加が見込まれます。その増加が一時的なものにとどまらず継続的な増加をもたらすのか、また後述する合格率への影響が気になるところです。

短答式試験の結果

(参考・・・「令和3年司法試験短答式試験結果」)

・短答合格者:2,672人(前年2,793人)
・短答合格率(短答合格者/受験者):78.0%(前年75.4%)
・短答合格点:99点(前年92点)
・平均点:126.4点(前年118.1点)

令和3年司法試験短答式試験(左)、令和2年司法試験短答式試験(右)

短答結果(令和2・3年)

 短答式試験の合格点・平均点は共に昨年から上昇しています。昨年は民法で債権法改正の内容が初めて出題されたこと等もあって最低ラインを下回る方が続出し、合格点も例年より大きく下がりましたが今年は受験生の対策が進んだようです。合格率も、昨年から順当に上昇しています。

主要LS(※)修了者及び予備試験合格者・全体の短答合格率

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(※「主要LS」は、以前の記事と同様に「令和2年司法試験における法科大学院別合格者数が50名以上だった7つの法科大学院」と定義しています。)

 主要な法科大学院修了者や予備試験合格者の短答合格率をみると、予備試験合格者の短答合格率100%が目を引きます(ただし、過去にも予備試験合格者の短答合格率は100%になったことがあります(2013年))。
 予備試験合格者の次には京都大学(88.1%)、慶應義塾大学(84.6%)、早稲田大学(84.4%)と続いています。この3校は去年から合格率を伸ばしており、特に早稲田は昨年短答合格率が大きく下がっていた(76.9%。「大きく下がった」というよりは数年前の水準に戻ったという見方が正しそうですが)ところからの増加であるため、その上昇ぶりが際立っています。一方で、東京大学(82.9%)、一橋大学(81.8%)、神戸大学(78.8%)は去年よりも短答合格率が減少しています。

最終合格者数・合格率

(参考・・・「令和3年司法試験の採点結果」等)

・最終合格者:1,421人(前年1,450人)
・最終合格者/受験者:41.5%(前年39.2%)
・最終合格者/短答合格者:53.2%(前年51.9%)

受験者数と合格率の推移(2012~2021)

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 合格率(最終合格者/受験者)が2012年以降初めて4割を超えたことが大きく話題になっています(なお、新司法試験が施行された最初の年である2006年は、新司法試験受験者の合格率が48%でした)。
 一方で合格者数は1,421人と、2012年以降最少となり政府目標の「1500人以上」を2年連続で下回ったことになります。

主要LS修了者及び予備試験合格者・全体の最終合格率

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 短答合格率と同様、予備試験合格者の最終合格率が93.5%に上り受験者全体や主要LS修了者の合格率を突き放しています。
 昨年度の予備試験はコロナ禍によって合格発表が2021年2月8日に延期されており、予備試験合格者は例年より短期間での準備を余儀なくされていました。それにもかかわらず上記の合格率につながったことは、予備試験合格者の高い実力を示している(一方で、予備試験が「法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」という本来の意義からかけ離れた高水準の実力を要求していることが推察される)といえそうです。
 主要LS修了者の最終合格率は高い順に京都大学(185人中114人/61.6%)、一橋大学(110人中64人/58.2%)、慶応義塾大学(227人中125人/55.1%)、早稲田大学(231人中115人/49.8%)、東京大学(199人中96人/48.2%)と続きますが、このうち東京大学と一橋大学は10%超下落(参考:前年度の東京大学の合格率は59.4%、一橋大学は70.6%)した一方早稲田大学は15%近くの増加(前年度36.1%)と、大きく変動しています。

初回合格率

 今年の司法試験合格者のうち司法試験受験回数が1回目だった方は1,024人に上り、合格者の72.1%を占めています。そのため、主要LS修了生や予備試験合格者の初回合格率を比較することには重要な意義がありそうですが、法務省提供のデータには受験回数と受験者数・合格者数の関連性につき上記以上に詳細なものがありません。
 もっとも「法科大学院等別合格者数等」には、法科大学院ごとに修了年度別の受験者数・合格者数が既修と未修に分けて記されています。厳密には、司法試験1回目の受験者が全て直近の年度の修了者とは限らない(たとえば、令和元年度に修了したもののコロナ禍での「受け控え」で令和2年司法試験を受験し、令和3年司法試験を受験した方は今年初受験になります)のですが、さしあたって「司法試験実施の直近年度に法科大学院を修了した者の最終合格率」を初回合格率と解して分析を行いました。

主要LS修了生の初回合格率(既修)

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 今年の初回合格率が高い順に並べてみますと、京都大学(101人中86人/85.1%)、東京大学(84人中65人/77.4%)、一橋大学(65人中46人/70.8%)、慶応義塾大学(111人中76人/68.5%)、早稲田大学(104人中69人/66.3%)、神戸大学(38人中25人/65.8%)、中央大学(76人中38人/50.0%)となります。また、全法科大学院修了生の初回合格率の平均は61.0%です。
 このうち京都大学、東京大学、一橋大学は(後ろ2校が今年大幅に下落したとはいえ)例年初回合格率が70%以上で安定しており、慶応義塾大学が3校に追随しています。これに対し、早稲田大学・神戸大学は全大学院の初回合格率とさほど変わらず、中央大学は2016年以降全大学院の初回合格率を10%超下回り続けています。以上のデータはしばしば言われる「東京一+慶」という上位ローの構図を明らかにすると共に、下位の法科大学院から募集停止になり主要LSに所属する学生の割合が高まることで、全法科大学院修了生の合格率等の平均値が主要LS修了生の平均値に近づきつつあることも示しています。

主要LS修了生の初回合格率(未修)

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 今年の初回合格率が高い順に一橋大学(15人中9人/60.0%)、慶応義塾大学(20人中9人/45.0%)、早稲田大学(18人中8人/44.4%)、神戸大学(11人中4人/36.4%)、東京大学(40人中13人/32.5%)、中央大学(9人中1人/11.1%)となります。全法科大学院修了生の平均は26.6%となり、既修と比べて全体的に20~40%低くなっています。
 未修の修了者は既修と比べて非常に少なくなっているため、1人の合否が合格率にもたらす影響が大きく、既修と比べて年毎の変動が激しいです。 その中でも比較的安定しているのは一橋大学と慶応義塾大学でしょうか。


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