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朝の海で

朝の海で波の音をまちつづける彼女。やわらかい風が世界に生む小さい波。

渚にちかづく、泣いている彼女。

悲しいからではない、虚しいからだ。

彼女の白いからだに穴がいくつも生まれて、そこを風がとおりすぎていく。

いつからこんな虚しさを抱えているのだろう。


波でぬれた砂浜をはだしで歩いていく。波にかき消されていく足跡と足音。


世界でいちばん美しい方程式を書くあの数学者でも、答えはわからない。

けれども、彼女がながす朝の涙は、ぼくの心をひどくしめつけた。それはたしかだった。

#詩




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