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ブロックチェーンとDAOの関係性
この記事のサマリー
1.DAOとは中央管理者なしでコミュニティメンバーが自律的に運営する組織
2. 近年DAO市場が拡大しているのは、ブロックチェーン技術によってDAOを作成 / 運営する障壁が大幅に下がったから
3. 具体的に下がった障壁とは、1)新規メンバーとの契約締結、2)メンバーによる経営意思決定、3)タスクに対する報酬 の仕組み整備の障壁である
4. ただし、ブロックチェーンを用いても、DAOの完全な実現には課題が山積みである。
この記事の目的
「ここ二、三年で分散型自律組織(DAO)の市場が急速に拡大しており、将来的には全ての組織は株式会社→DAOに置き換わる」
という主張を見て次の三つの疑問が浮かびました。
そもそもDAOという概念は昔からあったのになぜ近年急速に伸びているのか
DAOと株式会社、それぞれにメリットデメリットがあるはず、それは何か?
メリットデメリットを踏まえた上で、DAOが適している業界は何か?(つまり、全ての組織がDAOに置き換わるという主張に反対している)
本記事では、一つ目の疑問に対する私なりの解を説明します。
告知
次の記事で、二つ目 / 三つ目に対する解を説明いたします。
また次の次の記事では、実在する具体のDAOを複数取り上げて、DAOの構造化や今後のDAOの進化の方向性について議論します。
DAOとは
分散型自律組織(DAO)を一言でいうと、
「中央管理者なしでコミュニティメンバーが自律的に運営する組織」
です。
下の図の左側は従来の株式会社の組織形態、右側はDAOです。
株式会社では一番上に中央管理者が存在し、トップダウン方式で運営がなされています。
一方でDAOでは中央管理者がいなく、メンバーが皆横並びで(厳密には横並びではないものもあるが)運営されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1658024242747-T6rRhjqcuO.png?width=1200)
なぜ、近年DAO市場が急速に拡大しているのか
このようなDAOという概念は昔から存在していましたが、ここ2、3年で一気に市場が拡大しております。なぜでしょうか。
それは
「ブロックチェーン技術によってDAOを作成 / 運営する障壁が大幅に下がったから」
つまり、
「DAOの供給可能性が上昇した」
からです。
具体的に考えていきます。
一般的に市場が拡大するということは、ざっくりと二つの要件を満たす必要があります。
1)需要の存在 / 顕在化
2)供給可能性の上昇
順番に見ていきます。
1)需要の存在 / 顕在化
株式会社という組織形態は2022年現在当たり前の存在で、最適な組織形態だと考えられがちです。
しかし、所詮400年ほど前の大航海時代に人類が作り出した歴史の浅いものに過ぎません。さまざまな問題点を抱えています。(具体的な問題点は、次の記事で議論します)
この問題点に対して不満を抱え、その問題点をDAOなら解決できると考えている人々 / 業界が存在します。
つまり、DAOに対する需要は以前から存在していました。
2)供給可能性の上昇
以前からDAOの需要があることはわかりましたが、ブロックチェーン台頭前まで、DAOを作成 / 運営することは大きなハードルがありました。
では具体的にどのようなハードルが存在しており、ブロックチェーンはそのハードルをどのように下げたのでしょうか。
DAOの作成 / 運営を、ステップに区切って考えます。
DAOを作成 / 運営するステップを細かく分けると8段階に分かれます。
<作成>
初期メンバーでのDAOの作成
資金調達
<運営>
新規メンバーとの契約締結
メンバーによる経営意思決定
経営意思決定に沿ったタスクの分配
メンバーによるタスクの遂行
タスクに対する評価
評価に応じた報酬
この中でブロックチェーンによって大きくハードルが下がったステップは、
1)新規メンバーとの契約締結
2)メンバーによる経営意思決定
3)タスクに対する報酬
です。(逆にいうと他のステップはいまだに課題が多い、例えばタスクの分配や評価はまだざっくりとしかなされていない)
※ 作成の段階のハードルも一定下がったとは思いますが、現状存在するDAOのほとんどが立ち上げ段階では中央集権的な運営を行い、徐々に規模が拡大していくにつれて自律分散的な運営に移行していくので、今回の議論には含めません。
ブロックチェーンが、それぞれのステップをどのように簡略化したのかを具体的に見ていきましょう。
1)新規メンバーとの契約締結
従来は、組織と新規メンバーが契約を結ぶ際に、その契約の有効性を第三者(法、裁判所)が担保していました。
しかし、ブロックチェーン技術(特にスマートコントラクト)の登場で、契約の際に第三者からの担保が必要なくなり、契約締結のコストが大幅に削減されました。
これは分散型自律組織に限った話ではなく一般的な組織にも当てはまる話です。
2)メンバーによる経営意思決定
分散型自律組織の最もコアな部分である、メンバーによる分散的な経営の意思決定のハードルも下がりました。
分散的な意思決定を行う方法は色々とありますが、最も代表的な"投票"に絞って話を進めます。
投票制度を導入する際に重要な論点は、
a)メンバー全員に投票するモチベーションを醸成できているか
b)メンバー全員に投票に必要な情報が行き渡っているか
c)メンバー全員が投票にハードルなく取り組めるか
d)メンバー全員の投票権が正当なのか
e)投票結果が正当に反映されるのか
の5つだと考えます。
(余談ですが、日本の国政選挙だとa)とc)がボトルネックになっている気がします、若者の有権者比率が少ない問題の解決 & ネット投票早くしてほしいですね。)
ブロックチェーンによって、b)、d)、e)の達成が容易になりました。
a)メンバー全員に投票するモチベーションを醸成できているか
正直、この点は現存するDAOでも成功しているとは思えませんが、スマートコントラクトを用いた投票インセンティブ等の付与などで解決しようとする動きはあります。
b)メンバー全員に投票に必要な情報が行き渡っているか
組織の運営をブロックチェーン上で行うことで、誰でも(組織内 / 組織外との両方)コードを閲覧できるので運営の透明性は担保できています。
しかし現実問題として、誰でもコードを閲覧できる -> 誰でも投票に必要な情報を入手できる とは言い切れないでしょう(非エンジニアの人も多くいるので)。この点は解決の余地がありそうです。
c)メンバー全員が投票にハードルなく取り組めるか
特に影響はないです。強いて言うなれば、匿名性を保ったまま無駄な個人情報登録の必要もなく投票に臨めるようになったことでしょうか。
d)メンバー全員の投票権が正当なのか
c)と若干被るかもしれませんが。
投票制度において、投票者の投票権の正当性担保は最重要論点です。政党選挙では、投票権と個人情報とがっちり紐づけて正当性を担保しています。
しかしブロックチェーンを使うことでこの正当性の担保が大幅に簡略化できます。
具体的には、ブロックチェーン上の "トークン" という仕組みを用いることで、個人情報を提供する必要なく、投票権の正当性の担保ができるのです。
これはガバナンストークンと呼ばれています。
e)投票結果が正当に反映されるのか
この論点はまだ完全ではないですが、ブロックチェーン(スマートコントラクト)で部分的に担保できています。
例えば、"システムに改変Aを加えるべきか否か"という投票を行うとします。
1)まず投票が行われる前に、改変Aのプログラムコードを作成しておきます。
2)さらに投票が可決されると、改変Aのプログラムコードが自動的にブロックチェーンにデプロイされるような投票スマートコントラクトSを作成します。
3)スマートコントラクトSで投票を行います。
こうすることで、"システムに改変Aを加えるべきか否か"が可決されたら自動的にシステムに改変Aが加えられるので、投票結果が正当に反映されます。
ただ、投票の対象が必ずしもシステム改変に関するものではないので、この点も改善は必要です。
3)タスクに対する報酬
最後に、タスクに対する報酬がどのようにブロックチェーンによって簡略化されたかです。
分散型自律組織では、報酬として大きく二つが挙げられます。一つ目が金銭的報酬、二つ目が投票権報酬です。
一つ目の金銭的報酬だけでしたら、法定通貨でも対応可能ですが、二つ目の投票権報酬に関しては、ブロックチェーンの"トークン"がないと実現が困難です。
以上で議論してきたことをまとめます。
1.DAOとは中央管理者なしでコミュニティメンバーが自律的に運営する組織
2. 近年DAO市場が拡大しているのは、ブロックチェーン技術によってDAOを作成 / 運営する障壁が大幅に下がったから
3. 具体的に下がった障壁とは、1)新規メンバーとの契約締結、2)メンバーによる経営意思決定、3)タスクに対する報酬 の仕組み整備の障壁である
4. ただし、ブロックチェーンを用いても、DAOの完全な実現には課題が山積みである。
次の記事では、
・DAOと株式会社、それぞれにメリットデメリットがあるはず、それは何か?
・メリットデメリットを踏まえた上で、DAOが適している業界は何か?(つまり、全ての組織がDAOに置き換わるという主張に反対している)
の二つの論点に答えていこうと思います。
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