ガーシー除名は適切だったのか

私はガーシーという人間について元々あまり関心がない。
人として好きかというと、直感で苦手なタイプでもある。
だから好感度は低い。
ただし、今回のガーシーの除名については反対の立場を取る。

その理由を説明する。

前提

  1. 暗殺や不当逮捕を理由に国会を欠席しようとしている。

  2. 国会に来ないことを選挙の時点で明言して当選している。

  3. 憲法58条では「院内の秩序を乱した」場合懲罰を与えることができると記載。(いくつかの具体的事案については国会法が定める)

  4. 国会法124条で「正当な理由がなく召集日から七日以内に召集に応じない」場合懲罰を与えることができると記載。

  5. 参議院規則では「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者」を除名の対象として定めている

  6. 懲罰事由が「懲罰動議に基づく公開議場での陳謝に応じないため」

前提から深掘り

1
まず、暗殺が正当な理由となりうるか。
殺害予告や殺害未遂事件があったわけではないので、「暗殺」を正当な理由とはできないだろう。
逮捕が不当かどうかは議員本人が決める話ではないので論外。

2
「国会に来ないことを国民が承知していること」が正当な理由に値するのかについて。
そもそもこの理由で欠席届を出していないため無効。
欠席届を出したとして正当な理由とはならないと考える。
3にも関係するが、「院内の秩序を乱すことを公約にして当選した議員」が懲罰を受けなくていいかというのはまた別の話であるため、個人的には2についても正当な理由になりえない。
(懲罰を受けながら院内の秩序を乱すことが民意の反映と考える)

3
院内の秩序を乱したのか。
直感的には、院内の秩序は乱していないと感じる。
ただ、「当院しないことで院外から院内の秩序を乱した」という主張もある程度理解できる。
定義が曖昧すぎるので4の具体事案で深掘りする。

4
国会法で当院しないことは懲罰事犯の具体例とされている。
1,2より正当な理由がないと考え、4より国会法に招集に従わない場合は懲罰事犯とするとあるため、陳謝に関しては適切であったと考えられる。

5
除名は適切であったのか。
参議院規則では「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者」を除名とすることができるとある。
分解して考える。

a. 議院を騒がしたのか
→これも定義が曖昧だが、ある意味騒がしたと言える。

b. 議院の体面を汚したのか
→当院しないことを民意が承知しているため体面は汚していない。

aに当てはまるため、参議院規則の前半には値すると考える。
では議院を騒がした「情状が特に重い」のかを考える。

これは個人の価値判断による部分が大きいため私見を述べる。
私自身は「重くはない」と考えている。
「酷く議院を騒がす」と聞いて直感的に思い浮かぶ状況というのは、院内で暴れたり暴言を吐いたりして民主主義のシステムが停止するような状況と個人的に考えているからだ。
しかしガーシーが欠席していないことで民主主義のシステムが停止するわけではない。

6
実際の懲罰事由は「懲罰動議に基づく公開議場での陳謝に応じないため」である。
「正当な理由がなく召集日から七日以内に召集に応じない」ことではない。
では陳謝に応じないことが「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い」のかと考える。

これについても個人の価値観による部分が大きい。
「議院の体面を酷く汚す」と聞いて直感的に思い浮かぶ情景は、国民の信用を失わせるような状況と個人的に考えている。
当院しないことを民意が承知しているため欠席すること自体が参議院全体の信用を落とすことには直接つながらないと考える。
(ガーシーが当院しないことが他の参院議員の評価低下につながらない)

5からも陳謝しないことが民主主義のシステム停止につながるとも直感的には考えにくい。


結論

5,6から、「酷く参議院を騒がせたのか」or「酷く参議院全体の信用を落としたのか」が今回の懲罰についての本質であると考えられる。
除名のためには出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする点からも、この部分は議員自身の価値判断に委ねられているのだろうと考える。

私は5,6からも除名に反対であると考えたが、参議院での反対票は浜田さんのみであった。

個人的に今回の一番の問題点は、反対票が浜田さん一票だけであった点だと考えている。
5,6からもわかるように、除名については議院の価値観に委ねられているよるものが大きいからだ。
私は直感的にガーシーが「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者」に該当するとは考えないが、出席議院の99%は「該当する」と考えたことになる。
この曖昧な定義の文章を読み解いた上での投票行動であるならばもう少し票がばらけるのが自然ではないか。
論理的に考えず感情的に投票したor党議拘束やイデオロギーで投票したのではないかと邪推してしまう。

もちろん深く考えた上での判断をした議員もいただろうが、今回の件が日本政治の問題を大きく表面化させ多様に感じた。

感想

以前立花さんが「ガーシーという鉄砲玉をあえて当選させることで国民の参政意識を高めることも目的の一つである」と語っていた記憶がある。
これはある意味で半分成功で半分失敗であったと感じた。
確かに一時的には関心を持った人は少なからずいたし、このような当院しない議員を当選しないようにちゃんと吟味して投票しようと考えた有権者は増えただろう。
しかし、最後の結論にもあるように除名に反対した議員は浜田さん1人だったのである。
これが参院内でも接戦であれば、有権者は自分の一票をより吟味する意識が高まっただろう。
しかし現実で見せられたのは多数派が少数派を潰す構図だったのだ。
この点で失望した有権者も少なくないだろう。

有権者の参政意識や議員の本質について、少数政党ながら深く考えさせることをやってのけた立花さんは良くも悪くも天才政治家なんだろうと思う。
(やり方全てに賛同しているわけではない)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?