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ジブンのためだけれども。

小説にあった一文が
ドラマで主人公が言った一言が
頭にこべりつき、その後の人生の判断軸になることはよくある。

6年以上前に読んだものなのに、未だに物事を考えるときにその判断軸で動くことが多々ある。

それは人間は自分のためだけにしか涙を流せないということ。

誰かが死んで、それで悲しくなって泣いてても、それは結局、その人がいなくなちゃった自分のことがかわいそうで泣いているんだって。自分のためにしか涙が出ないんだって、そう聞きました。ーたっだら、ぼくはそれです。人が自分の身代わりになったことの責任に耐えられない。
辻村深月 『ぼくのメジャースプーン』p486 より


この文章を読んでからか、はたまた元々の自分の性格か
私は身の回りで起こった不幸や失敗をどうしても自分と関連付けてしまう。

もしももう少し配慮ができていたら
もしもあの時あの子に一言かけていたら

不幸は
失敗は
起こらなかったかもしれない。

だからだろうか。

人に強く注意することが苦手だし、怒ったことなど家族に対して以外2度くらいしかない。

自分が相手の意見を否定したりすることで、相手が悲しんでいるという責任を逃れたい。
本当は伝えた方がいいのだろうが、どうやって伝えればいいかわからない。

そうやって考えて考えて結局は何も伝えず、自分で抱え込んで終わることが多々ある。

高校三年のとき。
最後の地区大会の前々日だった。

チームメイト全員で練習する最後の日になるかもしれないと思い、いつもより一本早い電車で学校へ行きたかった。
でも、一本早い電車に乗るのに最寄りの駅まで行くバスがなかった。
田舎だったから、バスの本数は少なく、いつものように母親に駅まで送ってもらうよう頼んだ。

「いいよ、その代わりしっかり起きてね」

そんなことを言われた気がする。
その日はいつもより早く私も母も就寝した。

翌朝、低血圧で朝が苦手な私は不機嫌な母親に起こされた。
そんなに怒らなくてもいいのにと思いながら準備をしたのを覚えている。
母親が運転する車で当たり前のように駅に行き、朝練へ行った。

部室へ行き、掃除をする。
“大丈夫、いつも通りでいけば勝てるよ"とかいいながら、最後の練習を終わった。

遅練後、帰りもバスがないと思い、いつものように迎えにきてとラインを入れようとしたが、
「お母さん入院することになりました。
 明日の試合はおばあちゃんが送り迎えしてくれることになってるから。
 あと、夕食は冷蔵庫に入ってます。」
そんなメッセージだったと思う。

どういうことか理解できなかった、
一番聞きたいことが入ってない。
どうして入院するの。
どこが悪いの。

そして今朝は本当は不機嫌ではなく、体調が悪かったんだと気付いた。
いつも通りバスで駅まで行ってれば体調が悪化することはなかったかもしれない。

私がわがままを言ってしまったから。

病気と朝早く駅まで送ってもらったことには因果関係がない可能性が大きい。でも、少しでも自分が母親の異変に気がついてたらこんなことになってなかったかもしれない。

いつも通り試合を見に来て、ショットが甘いのスマッシュのコースが悪いとかいいつつよく頑張ったねって言ってもらえれる気がしていた。

そんなものは一瞬で無くなる。

母親の心配もあったが、何より自分のせいで入院してしまったという気持ちが大きかった。

相手のためではない。全ては自分がかわいくて自分の責任にしたくない。

ジブンノセイデ

幸い母親の病気は命に関わるものではなかった。
試合の一日目が終わった後、お見舞いに行くと”病院食が美味しくって”と照れ笑いする母親の前には、空っぽになった食器がいくかあった。
しまいには「優勝しないと許さないから!」と喝を入れられた。

私は目に見える範囲の人が傷つくことがものすごい嫌だ。
いい子ちゃんでも、優しいからではない。
自分が動かなかったから目の前で苦しんでいる。
その責任を負いたくなくて一生懸命になっている。

相手のためではなく全ては自分のため。相手に寄り添うことさえも自分のためになっていく。全ては自分中心で、自己中な生き方に時々うんざりしてしまう。

しかし、

もっとああしとけば、
もしあのとき違う選択肢をとっておけばと、
責任感や後悔を感じてしまう裏側には、
大切な人は苦しまずに入られたかもしれないというその人の幸せを願う気持ちがある。

責任を感じるから、自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを人はそれでも愛と呼ぶんです。
辻村深月 『ぼくのメジャースプーン』p486

この文章を読むたびに少し救われる。
暖かくて、人間らしい。

人間って
自分って
とことん不器用で愛おしい。

#コラム
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