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本当にあった!?万能の経穴!!

今回は扁鵲心書より、万能の経穴をご紹介します。
この書籍は南宋時代の1146年に竇材によって書かれました。

この中の黄帝灸法、竇材灸法という2篇に、ある症状に対してどの経穴に灸を据えるか?ということが書かれています。

まず黄帝灸法を原文ままですがご覧ください。

男婦虚労、灸臍下三百壯。 
男婦水腫、灸臍下五百壯。
陰疽骨蝕、灸臍下三百壯。
久患脾瘧、灸命関五百壯。 
肺傷寒、灸臍下三百壯。 
気厥、尸厥、灸中脘五百壯。 
纏喉風、灸臍下三百壯。
黃黒疸、灸命関二百壯。
急慢驚風、灸中脘四百壯。 
老人二便不禁、灸臍下三百壯、老人気喘、灸臍下三百壯。
久患香港脚、灸涌泉穴五十壯。
産後血暈、灸中脘五十壯。
暑月腹痛、灸臍下三十壯。
鬼邪著人、灸巨闕五十壯、臍下三百壯。 
婦人臍下或下部出膿水、灸臍下三百壯。
婦人無故風搐発昏、灸中脘五十壯。
久患傴僂不伸、灸臍俞一百壯。 
鬼魘著人昏悶、灸前頂穴五十壯。 
婦人半産、久則成虚労水腫、急灸臍下三百壯。 
死脈及悪脈見、急灸臍下五百壯。 婦人産後腹脹水腫、灸命関百壯、臍下三百壯。
腎虚面黒色、灸臍下五百壯。
嘔吐不食、灸中脘五十壯。
婦人産後熱不退、恐漸成癆瘵、急灸臍下三百壯。

ご覧の通り“灸臍下”ばっっっっかりです。
あとチラホラでてくる中脘と命関。

そうです!この臍下と、あと命関こそが万能の経穴です!

とは言ったものの、まだこれだけでは万能の経穴というには信用できない方もいることでしょう。

次に竇材灸法ですが、竇材は脾と腎を重視し、腎を補う目的で“臍下”(経穴でいうと関元)そして脾を補う目的で“命関”(食竇の別名)を使っているようです。


以下、関元と命関がどれくらい万能であるか篤とご確認ください。

一中風半身不遂、語言謇渋、乃腎気虚損也、灸関元五百壯。 

一傷寒少陰証、六脈緩大、昏睡自語、身重如山、或生黒靨、噫気、吐痰、腹脹、足指冷過節、急灸関元三百壯可保。

一傷寒太陰証、身涼足冷過節、六脈弦緊、発黄紫斑、多吐涎沫、発燥熱、噫気、急灸関元命関各三百壯。 傷寒惟此二証害人甚速、仲景只以舌乾口燥為少陰、腹満自利為太陰、余皆帰入陽証條中、故致害人。然此二証若不早灸関元以救腎気、灸命関以固脾気則難保性命。蓋脾腎為人

一身之根蔕、不可不早図也。

中風の半身不随には関元を五百壯。
傷寒の少陰病に関元を三百壯、太陰病には関元と命関に三百壯。

中風と傷寒に対して2穴で効果があるだけでも万能の経穴と言っても差し支えないですが、続いて見ていきましょう!


あとは訳すのが大変なので、気になるところは各々Google翻訳かChatGPTで確認してください。
読まなくても太字になってる経穴名だけ追ってもらったら大丈夫です!

一脳疽発背、諸般疔疽瘡悪毒須灸関元三百壯以保腎気。
一急喉痺、頤粗、頷腫、水穀不下、此乃胃気虚風寒客肺也。灸天突穴五十壯。
一虚労咳嗽潮熱、喀血吐血六脈弦緊、此乃腎気損而欲脱也。急灸関元三百壯、内服保元丹可保性命。若服知柏帰地者、立死。蓋苦寒重損其陽也。
一水腫膨張、小便不通、気喘不臥、此乃脾気大損也、急灸命関二百壯。以救脾気、再灸関元三百壯、以扶腎水、自運消矣。
一脾泄注下、乃脾腎気損、二三日能損人性命、亦灸命関関元各二百壯。
一休息痢下五色膿物、乃脾気損也、半月間則損人性命、亦灸命関関元各三百壯。
一霍乱吐瀉、乃冷物傷胃、灸中脘五十壯、若四肢厥冷、六脈微細者、其陽欲脱也、急灸関元三百壯。
一瘧疾乃冷物積滞而成、不過十口、半月自癒。若延綿不絶乃成脾瘧、気虚也、久則元気脱盡而死、灸中脘左命関各百壯。
一黄胆眼目及遍身皆黄、小便赤色、乃冷物傷脾所致、灸左命関一百壯、忌服涼薬。若兼黒疸乃房労傷腎、再命関三百壯。
一翻胃、食已即吐、乃飲食失節、脾気損也,灸命関三百壯。(命関當作命門)
一尸厥不省人事、又名気厥、灸中脘五十壯。
一風狂妄語、乃心気不足、為風邪客於包絡也、先服睡聖散、灸巨闕穴七十壯、灸瘡発過、再灸三里五十壯。
一脅痛不止乃飲食傷脾、灸左命関一百壯。
一兩脅連心痛乃恚怒傷肝脾腎三経、灸左命関二百壯、関元三百壯。
一肺寒胸膈脹、時吐酸、逆気上攻、食已作飽、困倦無力、口中如含冰雪、此名冷労、又名膏肓病。乃冷物傷肺、反服涼薬、損其肺気、灸中府二穴各二百壯。
一咳嗽病、因形寒飲冷、冰消肺気、灸天突穴五十壯。 
一久嗽不止、灸肺俞二穴各五十壯即止。若傷寒後或中年久嗽不止、恐成虚労、當灸関元三百壯。
一癘風因臥風湿地処、受其毒瓦斯、中於五臓、令人面目龐起如黒云、或遍身如錐刺、或両手頑麻、灸五臓俞穴。先灸肺俞、次心俞脾俞、再次肝俞腎俞、各五十壯、 周而復始、病愈為度。 
一暑月発燥熱、乃冷物傷脾胃腎気所致、灸命関二百壯。或心膈脹悶作疼、灸左命関五十壯。若作中暑服涼薬即死矣。 
一中風病方書灸百会、肩井、曲池、三里等穴多不効、此非黄帝正法。灸関元五百壯、百発百中。 
一中風失音乃肺腎気損、金水不生、灸関元五百壯。
一腸癖下血、久不止、此飲食冷物損大腸気也、灸神闕穴三百壯。
一虚労人及老人与病後大便不通、難服利薬、灸神闕一百壯自通。 
一小便下血乃房事労損腎気、灸関元二百壯。
一砂石淋諸薬不効、乃腎家虚火所凝也、灸関元三百壯。
一上消病日飲水三五升、乃心肺壅熱、又吃冷物、傷肺腎之気、灸関元一百壯、可以免死。或春灸気海、秋灸関元三百壯、口生津液。 
一中消病多食而四肢羸瘦、困倦無力、乃脾胃腎虚也、當灸関元五百壯。 
一腰足不仁、行步少力、乃房労損腎、以致骨痿、急灸関元五百壯。 
一昏黙不省人事、飲食欲進不進、或臥或不臥、或行或不行、莫知病之所在、 乃思慮太過、耗傷心血故也、灸巨闕五十壯。
一脾病致黒色色痿黃、飲食少進、灸左命関五十壯。 或兼黧色、乃損腎也、再灸関元二百壯。 
一賊風入耳、口眼歪斜、隨左右灸地倉穴五十壯、或二七壯。
一耳葉焦枯、面色漸黒、乃腎労也、灸関元五百壯。 
一中年以上之人、口乾舌燥、乃腎水不生津液也、灸関元三百壯、若誤服涼薬、必傷脾胃而死。 
一中年以上之人、腰腿骨節作疼、乃腎気虚憊也、風邪所乗之証、灸関元三百壯。若服辛温除風之薬、則腎水癒涸、難救。 
一腿間発赤腫、乃腎気風邪著骨、恐生附骨疽、灸関元二百壯。
一老人滑腸困重、乃陽気虚脱、小便不禁,灸神闕三百壯。 
 一老人気喘、乃腎虚気不帰海、灸関元二百壯。 
一老人大便不禁、乃脾腎気衰、灸左命関関元各二百壯。
一両眼昏黒、欲成内障、乃脾腎気虚所致、灸関元三百壯。 
 一瘰因憂郁傷肝、或食鼠涎之毒而成、於瘡頭上灸三七壯、以麻油潤百花膏塗之、灸瘡発過癒。
一破傷風、牙関緊急、項背強直、灸関元穴百壯。
一寒湿腰痛灸腰俞穴五十壯。 一行路忽上膝及腿如錐、乃風湿所襲、於痛処灸三十壯。
一香港腳少力或頑麻疼痛、灸涌泉穴五十壯。


さて、パッと経穴名を見ていただくだけでも関元、関元、関元、命関、命関、命関、たまに中脘、巨闕、神闕、関元、命関、関元…
と、関元と命関がどれほど沢山の疾患に効果があるかお分かりいただけたかと思います。


【独自スクープ】竇材が部下に送ったとされるLINE


一頑癬浸淫或小児禿瘡、皆汗出入水、湿淫皮毛而致也、於生瘡処隔三寸灸三壯、出黄水癒。
凡灸大人、艾炷須如蓮子、底闊三分、灸二十壯後卻減一分、務要緊実。若灸四肢及小児、艾炷如蒼耳子大。灸頭面、艾炷如麥粒子大。其灰以鵝毛掃去、不可口吹。 

最後に経穴ではなく壯数に注目していただきたいのですが、まさかの“三壯”。

私はこれを読みながら、壯数が多過ぎるのは竇材が10単位でしか数えられないのではないか?これは現代の臨床で使うなら10分の1、もしくは100分の1で良いのでは?と甘えたことを考えていました。
ですが、ここで“三壯”と書かれているということは竇材はちゃんと数を数えられるし、三百壯と書かれているものは三百壯据えるべきなのでしょう。

大変申し訳御座いません。
竇材先生の記載通り、厳しく多壯灸を徹底致します。

如癲狂人不可灸、及膏粱人怕痛者、先服睡聖散、然後灸之。一服止可灸五十壯、醒後再服、再灸。

あと狂った人には灸を据えるべきではないと、据えるなら睡聖散というものを服用させた後に五十壯、覚醒後に再度服用させて五十壯…それでも症状が治まらなかったら…もしかして永遠に続くやつ…?

睡聖散については以下の様に書かれています。

睡聖散
人難忍艾灸痛、服此則昏睡、不知痛、亦不傷人。
山茄花(八月収)火麻花(八月収)
収此二花時、必須端荘閉口、齋手足采之。若二人去、或笑、或言語、服後亦則笑、則言語矣。采後共為末、毎服三銭、小児只一銭、茶酒任下。一服後則昏睡、可灸五十壯、醒後再服再灸。


さて、竇材灸法は以上です。如何でしょうか。
ここまで読んでいただけた方なら、関元と命関を万能の経穴と呼ぶことに抵抗は無いと思います。
これで明日からどんな悩みの患者さんが来院されてもこの2穴で対応することができますね!大量の艾を用意して患者さんを迎えましょう!


しかし、これでもまだ万能の経穴否定派の方は居るかと思います。

気持は分かります。

臨床で期待したような結果が出なかった時など、自分の技術や勉強不足という事実を認めたくないが為に鍼灸の可能性を捨てたくなりますよね。
私も壁にぶち当たる度に、こんな鍼と艾なんぞで何をやってるんだという気持になります。

山盛りの艾で患者さんが灰や骨に成るまで燃やし尽くしたところで、改善しないものは改善しません。

それでも!私達が万能の経穴を諦めてしまったら、どうしてもトンデモ医学を信仰したい患者さんたちはどうなるんですか!?

そんな捻くれた患者さんまでも救う安全なトンデモを作るために、私はこれからも万能の経穴を探し求め、鍼灸の可能性を追求し続けます!!!

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