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【書評】本当はこわくない新型コロナウイルス

<本の概要>

大阪市立大学医学部の名誉教授である井上正康氏による著書。最新の研究結果や医学的知見を駆使して「日本でのコロナ感染が欧米各国に比べると抑えられている理由」を解説。コロナは日本においては”少し感染力の強い風邪”と称し、過剰反応することに対して警鐘を鳴らす内容となっている。

<この本を読んだきっかけ>

最初のきっかけは家族から本を勧めたこと。面白いから読んでみなと軽い感じで本を渡された。twitterやYoutubeなどでも自粛賛成派・反対派により様々な議論がされているのを見かけるが、医学に精通した人からの「コロナウイルスそのものに対する分析」という観点での発信は珍しく、興味深いなということで読み進めた。

<読書後の感想>

テレビや新聞では報じられないようなウイルスに対しての「リアル」な情報が描かれており、非常に読み応えがある。著者が自粛反対派へとベクトルを振り切った立場なので、所々強引な意見もあるなとは感じる。ただし大部分はデータを元にした建設的な指摘なので、インパクトのある内容ながらも信憑性を感じさせる。第三波到来ということで連日不安を煽るような報道が増えている今こそ、見る価値があるのではないかと思う。

<本を読んでの学び>

日本が欧米に比べて感染を抑えられている理由として、本書では旧型コロナウイルスの存在が挙げられている。東南アジアには昔から土着のコロナウイルス(HCoV)が存在しており、多くの人々は免疫力を持っている。そのため、同じコロナ仲間の新型コロナにもある程度の免疫力を発揮し、それが感染抑制につながっているそうだ(欧米にはこのような旧コロナはあまり存在しておらず、免疫を持つ人が少ない)

コロナウイルスの種類や免疫のメカニズムについては著書内でより詳しく述べられているが、こういった情報は初耳だったので非常に勉強になった。衛生環境や生活習慣の違いはテレビなどでもよく語られていたが、正直それだけで桁違いな感染規模の違いが生まれるのかは疑問を感じていた。「遺伝子レベルですでに感染のしやすが違う」と言われれば、このような格差にも納得がつく。

無論、上記の内容が科学的に証明されているわけではないので100%鵜呑みにするわけではないが、一定の影響はあるのだろうと感じさせる内容だ。著者も言うように突然変異を繰り返すウイルスではあるので油断は大敵だが、過剰に怖がったり心配し過ぎたりはせず、正しい予防対策を行いながら経済を回すことの重要性を改めて理解することができた。


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