日下部 邑里 / kusakabe yuri
冬のはじまりを告げるように冷え込んだ朝。京都市西陣地区ではその冷たさがよりいっそう肌で感じられた。しかし当時京都市内で暮らしていた私は自転車で走ることができる許容範囲だ、とペダルを意気揚々と漕いで冬のはじまりの朝を駆けていく。
京都市内の大通りである千本通を一本中道に入るだけで、大通りの車の音は遠くに消えていくようだった。町家が静かに集まって暖をとっているかのようだ。細い道沿いに並ぶ一軒一軒の佇まいから奥ゆかしさを感じられる。
そのうちの一軒、古い町家で暮らしはじめた日下