見出し画像

「好きだけど別れたい」を身を以て知った話

時々、恋愛漫画やドラマ等である「お互いに好きだけど一緒にいられない」問題。

個人的には納得できていなかった。

好き同士なら一緒にいればいいじゃん。
好きだけど別れたいってどういう状況? と思っていた。

とても失礼な話だけど、自分から可哀想な状況に身を置いて悲劇のヒロインぶってるだけじゃない? とも。

未熟な私にとって、それくらい「好き」という気持ちは絶対で、本気で好きなら努力でもなんでもして、状況を覆せる。それができないのは、その程度の気持ちだからだと。もしくは、正しく想い合えていないからだと。

本気でそう思っていた、が。

1年ほど前、好きで好きで好きでたまらなかった恋人に、ひどく裏切られたことがあった。

「なんで」「どうして」「そんな人だったのか」

人を罵倒したことも、声を荒げたこともない私が、初めて本気でキレた。

ただ、彼は自分がした行為を「私への裏切り」とは思っていなかった。どうして私がここまで怒るのか、本気で分かっていなかった。

いま振り返ると、私が「付き合っていれば当たり前だと思っていた」ことが、彼にとっては「当たり前じゃなかった」だけのこと。

事の発端は、考え方や捉え方の違い。

ただ、当時は信じていたのに「裏切られた」という気持ちが強く、自分を抑えられなかった。

彼に悪気はなく、変わらず私を想ってくれていると知った後も尚、私は彼を責めた。

傷つける言葉もたくさん言った。
何日も何日も責め続けた。

彼は弁解も反論もせず、ただひたすら「ごめん」とうなだれて、私の言葉を受け止めるだけだった。

ただ、

「こんなことになるなら、好きになるんじゃなかった」

そう言った時はさすがの彼も、ひどく傷ついた顔をしていた。
そんな彼の表情を見て、私はさらに傷ついた。

私はまだ彼が好きだった。

幸せにしたかったし、辛い思いもさせたくなかった。だから、彼にそんな顔をさせる自分が許せなかった。

けれど、彼がしたことを理解して水に流すこともできなかった。
「あなたはこう思ってたのね。でも私はこう思っているから、これからはこうしてほしいな」なんて冷静に話し合えるほど大人ではなかった。

一緒にいたら傷つけずにはいられない。

私が傷ついた分だけ、彼を傷つけたくなる。
そんな醜い自分もどんどん嫌いになっていった。

もういっそ、別れるしかないのか。

こんなに好きなのに、彼も同じくらい好きでいてくれていることが分かるのに、一緒にいたらお互いをひっかき合うだけ。

ああ、こういうことか。

だから「好きだけど別れなくちゃいけない」んだなと。夜中にひとりでむせび泣きながら、頭では呑気にそんなことを思った。


それから1年と少しが過ぎたいま、私はまだ彼と一緒にいる。

一緒にいられた理由は色々あるが、1番は彼が言い訳せずに私の怒りを受け止めてくれたことだ。

その後の彼の態度が誠実そのものだったことも大きい。私が何に傷ついたのかを理解し、受け入れようと努めてくれた(私にはできなかった……)。そして、私の考えに合わせて行動を変えてくれた。

とにかく私を安心させるために尽くしてくれたおかげで、私はまた、彼を信頼できるようになりつつある。

ただ、今日まで何度も本気で別れを考えたし、一緒にいることは簡単ではなかった。
以前と同じように笑える未来が見えなかったし、私は半年以上、ほとんど毎週、彼を責め続けた。

そこまで関係が破綻していても離れないのは、愛ではなくただの依存だと言われるかもしれないし、実際そうなのかもしれない。

正直、いまの私にとってはどっちだっていい。

もうお互い「あんな思いはしたくない」と心から思っているから、同じ失敗は繰り返さないだろう。

それでもまた起こってしまったら、その時はその時だ。

とにかく、私は深い傷と引き換えに、付き合う上で大切なことを学んだ。

考え方や価値観は、ある程度あわせられる。
ただ、誰しも「これだけは譲れない」という価値観もある。

今回は、私にとっての「譲れないもの」を踏みにじられた気がした。それが分かったいま、彼が私に合わせることで和解した。

けれど、もしも「これだけは譲れないもの」が一緒で、なのにお互いの意見が真逆だったら。

きっと関係は続けられない。

そして決定的に違う、しかも譲れない価値観を隠したり、無理矢理あわせようとすれば。

たちまち関係は破綻する。

好きなだけでは、どうにもならないこともある。
むしろ大好きだからこそ、許せないし受け入れられないことがある。

もとは赤の他人同士なのだから、違いがあって当たり前で、近しい存在になるならその違いを認め合えるか否かが全てなのかもしれない。

いくら相手を分かった気になっても、日々が過ぎる度に新しい面を知る。

それを楽しめるか、疎ましく思うかは、人としての器次第なのかもなぁ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?