あなたの隣の「陰性」者は本当に陰性?

7月に入って、日本の新型コロナウイルス感染者数が急増している。1000人以上増えている日もあり、4月の非常事態宣言時よりも倍以上になっている。

8月6日に朝日新聞は、感染症研究所が「無症状などの人が感染に気づかないまま、感染を静かにつないでいた可能性があると指摘」したと報道している。
(https://www.asahi.com/articles/ASN8654YRN85ULBJ014.html)
感染症の研究結果をまとめると、3月頃に流行したウイルスとは、結構違うものが6月以降に出現した。ウイルスは他人に移る時に、少しづつ変わるものだが、この新種は、この「少しづつ変わった」ウイルスたちが存在していない、ということになる。3月のウイルスを A、6月のウイルスを B、とする。A他人にうつると A’ に変わる。以下、A’’、…というように少しづつ変わって、Bになる (図1)。

画像1

通常は感染者は検査を受けるので、A’、A’’、… の全てのウイルスが記録される。ところが、この6月のウイルスに関しては A’、A’’、… の記録がない。ということは、これらのウイルスを持った人の検査をしなかった、ということになる。

感染症は、あからさまに感染していることがわかっている人からは伝染りにくい。というのも、普通ゴホゴホと咳をしている人にわざわざ近づいたりはしない。一般には発症前の人と接触したり、発症している人がいても気にしない場合に感染しやすくなる。新型コロナウイルスの場合、無症状の感染者が多いということであるので、自分が感染していることに気づかないまま、普通に他人と接触して、感染を広めてしまった、のではないかと感染研究所は結論づけている。

PCR検査推進派の朝日新聞なので、当然、無症状あるいは軽症の人がPCR検査を受けたならば、陽性であることがわかって、行動を自重するので、
感染が広まったと宣伝するであろう。(この記事は有料記事で、結論までは読むことができない。しかし、朝日新聞を購読する気にもならない)。果たしてそうであろうか。


感染症研究所の推論には一つ誤りがある。「これらのウイルスを持った人の検査をしなかった」からは、「この人たちが無症状あるいは軽症であった」、の他に、「この人たちは検査をしたが、陰性であったので、記録がなかった」という可能性を見落としている。今回の、感染研究所の報告では、陰性であった者のサンプルは使われていないと思われる。

PCR検査ではウイルスを持っているに持っているにもかかわらず、陰性と判定されてる「偽陰性」がかなりの割合で存在することが指摘されている。日本疫学会の報告では一般のPCR検査キットは、感度が6、7割程度である。つまり、10人のウイルス保持者がいれば、6、7人に陽性の結果が出るが、逆に言えば、3、4人は陰性の検査結果が出てしまう。日本では、7月に入って、1日平均して1万5千人が検査を受けている。感染率を1%とすれば、約150人が感染者である。その中で、40乃至60人の「偽陰性」が出現する。韓国製や中国製などの粗悪品はとり多くの「偽陰性」が出現することも報告されている。

「偽陰性」の危険性は前回の「第二波の原因はPCR検査増」
(https://note.com/11_komori/n/n6bcc689d8280)で指摘した(計算ミスがあったので、ここで訂正させてください)。要約すると、同じ無症状でも、PCR検査を受けていなければ、他人に伝染すかもしれない、伝染されるかもしれない、と考えて、予防をする。陽性ならば、行動を自粛する。しかし、偽陰性で無症状の人は、自分が陰性と診断されているので、安心して、大手を振って、いつも通りの行動をする。もちろん、マスクもしないし、集近閉も守らない。周りの人も、安心して近づく。しかし、無症状とはいえ、感染者なので、接触すれば感染してしまう可能性が高い。また、陰性なので、行動を追跡されることもない。ここから、感染研究所の結果に、失われたウイルス変化、が現れたものと思われる。陰性者の検体が保存されているのなら、それらをもう一度調べ直してみることをお勧めする。

統計に詳しい専門家は、私も含め、早い段階から、偽陰性に注意を促していたが、朝日新聞をはじめとするテレビや新聞などのメディアは、無視し続けている。文春は、7月31日に渋谷健司の話を用い、「はびこる「PCR検査拡大は不合理」説を公衆衛生の第一人者が論破!【偽陽性の問題はほぼ100%ない】 」を書いている。(https://bunshun.jp/articles/amp/39414?page=1 )

タイトルにある「偽陽性」というのは、「偽陰性」の逆で、感染してないのに、陽性反応することを言う。PCR検査では、理論上「偽陽性」は0%である。実施する時に、どうしても、他の何かが混入してしまうので、運用上は0ではないが、丁寧に取り扱うことで、ほぼ0にできる。しかし、PCR検査増で問題になっているのは、「偽陽性」ではなく「偽陰性」である。

経済の復興のためには人と人との直接交流が不可欠である。交流する時に、相手が陰性でないと困る。しかし、その陰性がホンモノかどうか誰が保証できるか、と言う話である。「陰性証明」を持っていたとしても、実は陽性で無症状なだけかもしれない。したがって、PCR検査で陰性であっても、十分な対策をした方がいいことは明らかである。

大相撲で、阿炎関が7月場所中にキャバクラ通いをして、強制休場、そして、出場停止の処分を受けた。大相撲では、場所前力士全員にPCR検査をして、一人の陽性者も出なかったらしい。阿炎関は自分が陽性でないから、また、通っていたところでも、店の人は全員陽性ではないと言われていたはずであるから、行っても大丈夫だと思っていたと考えられる。今回はたまたま、彼も付け人も大丈夫であった。しかし、あくまで結果論である。もし、阿炎関が感染していたら、彼の対戦相手の6人。さらに対戦相手の対戦相手、と指数関数的に感染者が増える。
最悪のケースを防ぐために、相撲協会は場所中に決してそう言うところへ行かないようにとのお達しを出しているわけである。

検査はもともと、医療関係者が、患者の病因を特定するためのものである。特定することで、適切な治療をすることができるからである。したがって、たとえ感染者らしき人と接触したとしても、症状がないうちは、検査をせずに、もしかしたら、他人にうつすかもしれないと考え、マスクをして、集近閉を避けて、行動をしたら十分ではないか。そうすることで、偽陰性からの感染を防げると思うのだが。

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