見出し画像

第18回 閉鎖商圏で失敗しないチェックポイント


オフィスビルのように限られた人だけが来店できる立地を閉鎖商圏といいます。今回は閉鎖商圏の出店の注意点について説明します。

閉鎖商圏とは

一般的なコンビニエンスストアは道路に面して建てられており、周辺の住宅や事業所から広く来店ができたり、道路を走る車がいつでも来店できる等、誰もが自由に来店可能な場所への出店が基本です。一方で限られた人しか来店できない立地を閉鎖商圏といいます。
例えば身分証を提示しなければ入れないオフィスビルや工場、学校や駅の改札内や空港、病院や大規模マンション内等が該当します。閉鎖商圏では一定の商圏ボリュームがあれば、外部が不便であればある程、出店場所に関係なく売れるお店になります。しかし出店前に商圏ボリュームの確認を疎かにすると、路面店のように新たな顧客を取り込めない分、全く売上の伸びないお店になってしまいます。
今回は代表的な閉鎖商圏であるオフィスビル内への出店を中心に、いくつかのケースをご紹介しながら出店の際の注意点をご案内します。

オフィスビル

①商圏ボリュームの確認

就業者や来訪者以外が入館することのできないオフィスビルの場合、外部から全く認知できない場所への出店であっても十分な就業者数や来訪者数で商圏ボリュームがあれば一棟のビルだけで出店が可能です。しかし出店を打診される時点では、まだビル建設自体が計画段階のこともあります。その中で如何にして必要な情報を集めるかが出店成功の鍵となります。ただ単に施主の資料に書かれた予定就業者数だけで判断するのは大きなリスクを伴います。特に気をつけたいのが勤務スタイルです。入居予定企業の業種によってその勤務スタイルは大きく異なります。例えば生命保険会社のように営業部門が中心の企業の場合、日中は殆ど外出しており、週に一度の会議時のみ全員が集まるというケースもあります。そうなると会議の日以外は想定ボリュームを全く満たさずに不振店となってしまう可能性があります。最低でも核となる企業がとのような勤務スタイルなのか事前に確認しましょう。

②超高層ビルの特性

およそ20階建て以上の超高層ビルの場合、朝夕の出退勤時や昼の休憩時間にはエレベータが大混雑します。一度に乗り切れなかったり、停止階の各階にすべて止まったりと地上階にたどり着くだけで5分以上掛かってしまう場合もあります。5分といえば一般的なコンビニエンスストアの商圏の横の広がりを「高さ」で超えてしまうのです。言い換えると戸建の住宅であればお店から350m離れていても徒歩5分で来店可能ですが、超高層ビルで0mでも徒歩5分圏外となる可能性があるのです。
このような場合は地上階に限らず空中階への出店も検討可能です。特に30階を超えるようなビルの場合、エレベータは地下から最上階まで各階に全て停止する事は稀です。利用者は地上から決められた空中階のスカイロビーにシャトルエレベーターで移動し、そこから更に別のエレベーターに乗り換えて目的の階に移動する方法が取られます。 このような方式はスカイロビー方式と呼ばれますが、そのスカイロビー階に出店するとそこから上の階の就業者にとっては最も利便性の高い店となります。

月刊コンビニ22年3月号図表_ページ_1

その他の閉鎖商圏の例

(工場)

一見就業者数の多い工場の場合でも、オフィスビル同様に勤務スタイルに気をつけなければなりません。一斉勤務なのか、3交代制なのか?一般事務職員は自由に来店できても製造ライン等に配置されている就業者は決められた休憩時間以外に来店する事は不可能なことがあります。このような場合、特定の時間だけに来店が集中してしまい、混雑から機会損失を発生させる反面、他の時間は閑散としてしまうような事例があります。また社員食堂が完備されている場合は売れる商品が限られてしまいます。

(学校)

学生数、教職員数だけでなく学年や学部学科による特性を調べましょう。特に大きな差となるのが文系学部と理系学部の登校パターンの違いです。文系学部では夏休み、冬休み、春休みがしっかりある事が多く、土日を含めると年間のほぼ半分が休みとなるような学部がある反面、理系学部では実験等がある為、休暇期間を問わず毎日のように登校する学部もあります。また1年生、2年生の教養学部と3年生、4年生でも登校日数は変わります。単にそのボリュームだけで判断するのではなく、学生がキャンパスライフをどのように過ごしているのかを現地で確認する事が重要です。また大学の場合は広いキャンパスに校舎が点在する事も多く、出店場所によっては通学途中にある学外の路面の競合店の方が便利で、せっかく学内に設置したのに来店するのは一部の学生のみといった事にならないよう注意しましょう。

月刊コンビニ22年3月号図表_ページ_2

(鉄道)

駅構内への出店も限られた鉄道利用者のみが来店客になる為、閉鎖商圏と同じ考え方になります。ただし、オフィスビルのように「わざわざ」来店する事は見込めません。歩行者の導線上になければ来店しないことから、同じ駅の中でも出店場所によって大きく売上が異なります。そして停車する電車の本数や上り線、下り線、乗り換え駅、就業地へのターミナル駅、居住地へのベッドタウン駅等、それぞれの特性から仮説をたてて出店しましょう。

(空港)

空港は最も大きな閉鎖商圏です。他の閉鎖商圏と異なるのは空港職員以外の来店客が観光客である事です。他の閉鎖商圏では毎日その施設内にいる人が対象となります。しかし、空港の利用客は年に数回~一生に一度という方もいらっしゃいます。駅同様に出店場所が非常に重要で、お客様から認知できるかどうかが鍵となります。更に出発客と到着客では出発客の方が空港に滞在する時間は長く来店機会も多くなります。それらを踏まえてより多くの利用客に認知される場所を選びましょう。

(病院)

病院では診療科目数や病床数、外来患者数が目安になります。そして診療科によりニーズは大きく異なります。内科であれば厳格な食事制限がある場合でも他の診療科では比較的自由に飲食が可能であったりと、売れる商品に差があります。また子ども病院などの場合は24時間保護者の付き添いが必要となり、その場合は3食すべてが院内のコンビニエンスストア頼みとなる場合があります。その他患者ケア用品、医療用品(ストーマ装具等)取り扱い可能品目により売上が大きく変わります。

(大規模マンション)
タワーマンション等の大規模マンション内は総戸数が十分であれば出店可能です。この場合、周囲が不便であればある程マンション内のコンビニエンスストアの利便性が増します。逆に駅とマンションの距離が近く、駅からの道なりに競合店があるような場合、マンション内店舗の利便性は低くなります。特に狭小店舗でしか出店できない場合は外部の路面店に品揃えの利便性で負けてしまいます。

このように閉鎖商圏のお店の出店にあたっては商圏ボリュームと外部の不便さ、外部の競合店との彼我の関係(立地、売場面積、品揃え、営業時間等)をしっかりと確認して出店場所を吟味し準備を進めましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?