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正偽の芸能プロダクション

今田耕司さんと鈴木おさむさんの舞台「正偽の芸能プロダクション」の初日と2日目の2公演を観劇してきた。
感想をひとことで言えば、しんどい。
どの角度からみてもしんどい舞台だった。

先ずオープニングで流れる漢&D.Oのスタンド・バイ・ミー。
少年時代の兼近大樹を連想させる歌詞がスクリーンに映し出され、EXITファンであれば初っ端からしんどい。


主人公は今田耕司演じる芸能プロダクションの社長殿山なのだが、どうしてもりんたろー。の役である葵を軸に観てしまう、ほぼダブル主演の物語りだった。
というか、EXITを組む前のりんたろー。の物語りそのもので、そこに肉づけしたのではないかと思えた。

コンビ組みたての頃、それだけで嬉しそうだった葵は、自分だけが売れて変わっていく、というか本性を現していく相方響(山本彰吾)の態度に次第に萎縮して何度も何度も響や殿山に頭を下げながら懸命にお笑いに向き合おうとする。
前のコンビのエピソードを知っているりんたろー。ファンにとってかなりしんどい。

また、人気俳優の氣楽(久保田悠来)が結婚してしまえば「ファンは85%以上減るでしょう。あなたのことを男性として見ているんです。」と殿山のサポート役である倉井(平井まさあき)に言われるところは、結婚報道以来Twitterで見かけなくなってしまったりんたろー。ファンが観たら首がもげるくらい頷いただろう。ここも85%の(?)りんたろー。ファンにとってしんどいポイントだ。
「この台詞聞いてるりんたろー。さんどんな気持ちっすか!?」
2日目の舞台では意地悪な響の台詞を借りてツッコミたくなった。



響が葵に向かって吐き出す言葉は元夫から私が言われ続けた言葉と同じで、沸々と怒りが湧き、りんたろー。目線で観ているファンの啜り泣く音が聞こえてくるなか、私は完全に過去の自分と重ねてしまい、気づくと歯を食いしばりすぎて顎と首と肩がバッキバキに痛くなっていた。
ネタを書けない響が葵に「俺に足りない物を持っているから」と言う場面は専門学校卒の私に大学中退の元夫が「あんたがうちで一番高学歴だな」と自虐的で乾いた笑いをしたときを彷彿とさせた。
見下している人間が自分の持っていないモノを持っていることは(たかが専門学校卒業ということでさえ) 彼らのようなムダにプライドの高い人にとって認めたくない、耐えられないことなのだろう。
「厳しくさせたのは誰だよ!?」と問い詰める響の台詞もモラハラ夫の言葉そのもので、怒られないようビクビクしながら過ごす毎日が否が応でも蘇ってきて本当にしんどかった。
こちらが何をしても何をしなくても怒る理由はモラハラをする人次第なのだ。だから葵が響に言われた通りネタを10本書いても、もしそれ以上書いたとしても怒鳴られ、殴られることには変わりがない。
未消化な感情は何度反芻してしもまた飲み込んでしまえばいつまで経ってもなくならない。
葵と違って私は少しずつ吐き出してきたつもりだったけれど、いまだに胃袋に残って腐っているのではないかと感じるくらい胸糞が悪いしんどいシーンだった。
葵は響だけでなく殿山や氣楽に言われることも全て受け入れてしまう。
もし葵みたいに優しくて気弱な性格だったら、今でも私はあの舞台のフェンスの中に囚われたままだったんだろうか?


葵は絞り出すように自分の思いを話し、コンビを解散。殿山はピンでは売れない葵より人気のある響を選び、葵は事務所をクビになる。
その後公園で清掃の仕事をしている葵と殿山は再会する。
氣楽の事務所独立によって孤独になった殿山に目を輝かせながら自分の夢を話す葵。
葵の言葉に失いかけた仕事への情熱を取り戻す殿山のシーンはそれまでの緊迫した気持ちがほぐれ、やっと心が温かくなる。
葵に笑顔が戻ってきたことにもホッとするが、、、

無機質な椅子と机、演者一人ひとりを囲むように立てられたフェンスというシンプルな舞台装置と印象的なポスターと同じ暗いピンクとブルーの照明。
最後にこのフェンスが衝撃的なシーンの現場を表現するのだが、シンプルな舞台装置だからそこ登場人物の心情やさまざまな場所を想像させることができるんだなぁと感心させられた。
笑顔を取り戻した葵と殿山だけでは終わらない衝撃のラストシーンもしんどかった。


吉報を聞きたかった。



冒頭に書いたスタンド・バイ・ミー。
そのタイトルの意味を考えると、りんたろー。がかねちに言った言葉が思い出される。

「お前だけはずっと側にいろよ」

りんたろー。のイケボと照れる兼近がこれまたしんどい、、、




敬称略、勝手に画像拝借失礼いたしました

https://www.instagram.com/p/Cp9iUDky6RO/?igshid=YmMyMTA2M2Y=
Rintaro from EXIT Instagramより

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