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その《天才》は孵るのか 漫画メダリストscore33感想

メダリストscore32『狼』score33『あひるの子』を経て、全日本ノービス編は《天才》と向き合うシーズンなのだということをここに来て再度突き付けられている。私が。勝手に。


誰よりも軽やかにかわいく着氷する鹿本すずは作中では《天才》を冠していない。彼女は2位である以上1位と比べられる立場にいて、1位が《天才少女》である以上彼女は《天才》に敗れてきた者なのだ。
しかし彼女には観客からの《天才》の称号は必要ない。何故ならば彼女が真ん中に立つことが一番かわいいことなのは自明の理なのだから。

中部大会で3回転ルッツ+3回転ループを跳び、狼嵜光を《天才少女》にしたジャンプを跳んだことで《天才少女》となった八木夕凪は、「光ちゃんも頑張って!」と声をかけることができる。
その分差を感じただろうけども…


狼嵜光は《天才少女》として《天才》であるコーチを食らい付くし、彼の存在を氷の上から消すかのように彼の残した跡を進む。優勝を逃さない限りフィギュアスケートを奪われない安堵感を持って他者の視線といい重圧をものともせずに君臨する。


score32『狼』では本当にその演技に圧倒されてしまった。誌面から伝わる演技の圧は本当にすごい演技を見ている時のように読者を圧倒した。

演技の圧を表現する画力だけでなく、その天才の演技を目の当たりにして高揚する観客の顔、畏怖する関係者の顔、成功を願う者の顔、1人の天才を中心に様々な感情が渦巻くリンクには拍手の雨が降り、熱狂を運び込み様子が一変する。その会場の空気感がこちらまで伝わってくる展開にもうひれ伏すしかない。


そんな《天才》によって空気がおかしくなっているリンクを感じつつも亜昼美玖ならば大丈夫だろうという思いがあった。

美玖はフィギュアスケートを始めた歳、コーチの経歴、演技の方針、勉強面、全ていのりの上位互換として描かれてきた。

また、一方では司の指導の元で自分自身で選択するいのりと対比して洸平に選択を委ねる美玖としても描かれており、チームあひるの決着がいのりの演技にも繋がっているのだろうという思いからも期待があった。

さらに彼女は優勝ではなく上位入賞して滑れる舞台を1つ増やすという目的で滑っていることが描かれていたため、光の圧倒的演技は想定内である。

これらのことからもう微塵も疑っていたかった。つるま先生の掌の上で完全に踊らされている。

メダリストscore1にはこう書いてある。「氷の上は世界一の選手でもやりたい技を100%成功させるのは難しい」「代価もわからず飛び込んだ夢見る小さなわたしたちは数えきれないものを支払っていくんだ」「スケートを続けるのに必要な能力はあります…それはリンクに賭ける執念です」

もう全部書いてある。

世界一の選手でもやりたい技を100%するのは難しいんだから、今孵ろうとしている卵達は尚更のことだ。


だから金の卵は孵らないし、卵から産まれたものは醜くないあひるの子だし、醜いあひるの子だって氷の上ではメダリストになれず《芸能界》という空に舞いあがる白鳥となる。

卵の中にいくら才能があったとしても、殻を破り無事に孵ってお披露目ができなければ《天才》にはなれないのだ。そして、殻を破るには周りの手助けだけではなく、中から突き破っていく本人の力が必要なのだ。

スケートリンクの廃止後に自身がフィギュアスケートを続けるために必要な周囲の犠牲に目を向けたとき、自身のリンクに賭ける執念が負けた美玖は殻を破っていくことはできなかったのだろう…

それでも彼女にとってフィギュアスケートは間違いなく大切なものであった。父が迎えに来ず一人だったとしても、フィギュアスケートをはじめて洸平とジュナと3人でいることで寂しさは減っただろうし、2人がいないときだってスケートリンクの家族連れを見てもおにぎりを食べて自然に笑顔が浮かぶ。氷の上ではひとりぼっちが凄く格好良くなるし、氷から降りた彼女にはチームあひるという家族がいることが繋いだ手の描写から伝わってくる。

そして、白鳥ジュナが芸能界に舞いあがったように、多くのコーチ達が自らの人生の先に生徒を指導しているように、天才と呼ばれなくても学校の子が誰も知らないとこで死ぬ気で頑張ってる彼女達はその頑張りと大切だったものを糧に新しい物語に進んでいけるのだ。


逆に天才は新しい物語へ進んでいけるのだろうか。夜鷹純は氷から逃げられず、光に彼の路を辿らせることで自身の路を消そうとしているように見える。

光は普通の生活を犠牲にし《天才少女》となり続けている、夜鷹純の路を辿りきった先の彼女自身の路は、更に彼女が氷から降りた先の物語はどこに続くのであろうか。


score32で光は司に夜鷹純に言われた言葉を話す。「勝利に一番必要なものは犠牲だって」


チームあひるはチームあひるであるが故に犠牲を払わず勝利の女神の掌の中で孵ることはできなかった。


そして我らが主人公結束いのりは光と並び立ち、追い越すために4回転サルコウを選択することで周りから《天才少女》と呼ばれることを選ぶ。その圧に勝つこと、運を味方にすること、周囲の犠牲の上に夢を選ぶこと。

自身が劣等生であるが故に、家族やクラスメイトや学校の先生などの周囲の人間が《犠牲》となって自身の生活が維持されてきたいのりは自身の生活の側にあるその存在をよく理解しているのであろう。

いのりはメダリストになる夢のために《自分自身》で周囲の犠牲という代価を払ってでも、リンクへの執念を消さない。そして犠牲が犠牲とならないために、光へ勝つ覚悟を決める。

彼女が選んだ1つ1つの選択の結果はどこに続くのであろうか。《天才少女》になろうとする彼女の物語はどこへ続いていくのだろうか。私達はただ観客の1人としてこの物語を固唾を飲んで見守り続けるしかないのだ。





それはそれとして!お財布を開くことはできる!!!!!!!

メダリストのグッズが出ますね!!!!アニメイトの店舗でメダリストのグッズが買えるんですか???????Tシャツもクリアカードも出るとか嬉しすぎる!超人気コンテンツじゃん!(そうですが?????)


有償アクリルスタンドも出る!!!!!うれしー!!!!!!!!お財布が嬉しくて悲鳴をあげています!!!!!!!

頑張れお財布!頑張れ預金通帳!!!!公式グッズがコミックスの購入特典と、抽選の複製原画と、抽選のクオカードと、抽選のTシャツと、大賞記念の缶バッジとポストカードの時代はもう御仕舞い!!!!新時代の幕が開いた!!!!!!

でもオタクの財布は有限なので加減してね!!!!!!!!!!!


あと最後に

私の狂いとメダリストの感想noteのために最新話まで買ってくれたフォロワーに圧倒的感謝。お陰さまで今回もnoteが書けました。

おしまい

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