江戸前鮨のスズキ

 今週の月曜日都立大学にある鮨屋「新田中」に行った。この鮨屋は日本の伝統ある江戸前鮨を70分間5千円ぐらいで食べ放題できる鮨屋でそのコスパの良さから多くの予約が入る人気店だ。僕が最近食べログを入れてからずっとマークしてたお店でもあり5月下旬に6月の予約が取れたので友達と行くことになった。
 店の中に入るとTHE鮨屋っぽい木の椅子と木のカウンターがありあんまり本格的な鮨屋に行ったことがなかった僕は少々興奮しながらお店の人に挨拶をした。もちろん回転寿司にあるタッチパネルや柔らかいソファのようなファミリーシートはなく身長が低い人が可哀想な座高の高い椅子だけがコロナのご時世関係なくギュウギュウに詰められているのを見て食べる前にこれが江戸前かと不的確な納得をした。
 ぎゅうぎゅうに詰められた席に案内され職人さんに食べ放題の説明を受けると時間を無駄にしたくないという思いから早速僕と友達はネタが書いてあるメニューを見た。おすすめネタは自分達が座った席から右側にホワイトボードがありそこに書いていたのとお酒と通常メニューは各席のブロックごとに置かれていた。食べ放題は最初に中トロや赤身などが固定で握られてきてそれを食べた後に好きなメニューを頼めるというシステムらしく最初のマグロをペロリと平らげすぐに注文をしようとした。
 しかしここで問題が発生した。おすすめネタのホワイトボードの字が読めないのだ。魚の漢字が読めないのとお店の人の字が単に汚く読めないのとのダブルパンチであったためかなり困惑した。
回転寿司であれば漢字が読めなくてもタッチパネルを押せば注文できるしそもそも漢字にふりがなが振ってあるケースが多い。しかしそこはやはり江戸前鮨。注文は口頭で漢字に振り仮名は振ってない。字がものすごく江戸前。よく小学校の時の漢字ドリルにその漢字の起源とかいって載ってるのがあったけどそれの文字が文字になる一歩手前の字。僕は江戸前鮨を予習しおけばよかったと後悔した。せめてせめてでも魚の漢字を読めるようにしとけばよかったと思った。魚の漢字と読み方が乗ってるお風呂で覚える的なシートを買おうと考えるもそれももう手遅れ。小学校や中学校の義務教育ではわからないことがあったらすぐ先生や他の人に聞きましょうねと習った記憶があるが江戸前鮨の雰囲気と職人さんのオーラに制圧され

「あれなんて読むんですか?」

と質問が出来なかった。野暮な質問になってしまうと感じ控えてしまった。
出来なかったししちゃいけない気もした。そんな字も読めない大学生の若造が本格的な鮨屋で鮨を食べる行為は聖書の意味がわからないキリスト教徒と同じようなものでまず魚の漢字を勉強してから行かないといけないのではないかと錯覚した。魚の漢字が読めないと職人さんに嘲笑されるのではないかとも不安になり次回からは鮨の漢字を学び回転寿司で復習してから行こうと口の中でほのかに残る中トロの油の甘味を感じながら肝に銘じた。

 そんなこともあり一旦漢字が読める安パイなメニューにするかと友達と相談したがせっかく来たのにもったいないという話になり頑張ってギリ読めるやつを間違っててもいいから頼むことにした。しかしやはり心の中のモヤモヤが消えない。読めないネタを頼むは恥ずかしいし江戸前鮨独特のこっちが勝手に感じているしきたりの圧が津波のように押し寄せてくる。

そんな時一つだけやけに読めそうで輝いているおすすめネタがあった。

スズキ


 この表記ではなく真ん中のズに昔のひらがなが使われていたためなかなか読めなかった。でもおすすめメニューの中の数少ないひらがなであったためgoogleの暗証番号入力の時に目を凝らすのと同じような感じで頑張って読んだ。

こっこれは! スズキだ!
研究者ばりにひらめき
すぐさま職人さんにスズキを頼んだ。
(シャレを効かせるにはヒラメも頼みたいところ)

やっとの思いで読解したスズキ
おすすめネタのスズキ
江戸前鮨のスズキ
終盤にきてのスズキ
スズキこそが鮨界の主であるのだ!
頭の中がスズキでいっぱいになり
職人さんからスズキが握られて来た時スズキのドーパミン 

スズパミン

がピークを迎えた。
目がトロんとし握力が弱々しくなりなつつも頑張ってスズキを口に運んだ瞬間
僕の脳は感じた。






やっぱ鮨は中トロがええねぇ〜。




スズキも美味しかったけど期待しすぎたのかな。

やっぱ中トロです。
いや黒むつもめっちゃ美味しかった。
とりあえずみなさんも是非鮨新田中行ってみてください!コスパ最強。お誕生日とか彼女とのデートとかに。

それじゃまた来週!



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