夏休み
夏休みが始まる。
徒に学生期間を延ばしているけれど、心中穏やかってわけじゃないんだ。むしろ、この中途半端な苦しみが、中途半端がゆえに、うっすらと視界に靄をかけている。
夏。今年の夏は、力いっぱい勉強したい。
いつか準備が整って、着実に、納得できるかたちで、ブルドーザーみたいに物事に取り組める時が来ると思っていたけれど、それは幻だった。当然のことながら、すべての瞬間が取返しがつかないから、とにかく今すぐに駆け出さなくちゃならなかったんだ。そして、転ばなくちゃならなかった。走らないから転ばない日々が、僕から奪ったのは体力だけではないはずだった。
今日も僕には言葉がなかった。
本当は叫びたかった。嘘をつくんじゃねえと。
孤独に純度があるのか。本物の孤独だとか、偽物の孤独だとか。そんなことどうでもよくて、他者といることの意味にさえ気づけたら、それでよかった。
ままならぬ生活の中で、じっと何かに抵抗するべきだ。明け渡してはならない何かがあるはずだ。ためらいながら、疑いながら、外に出ることを怖がらないで。
「これくらいしか人間らしいところがなくて」
心の中で言い訳じみた言葉がこだまする。人間らしさってなんだよ、おい。
いつになったら苦しくなくなるのか、わからなくて不安だけど、きっとこの苦しさは生きている限り不可避なやつで、もっとこう、僕は僕の分の人生しか生きられない、あなたはあなたの分の人生しか生きられないってことから目を逸らさないで、優劣の尺度から離れて、もっと世界を肯定したい。
「本当は人と話すのが好き」だなんて嘘で、誰のことも好きになる気がないとしたら、どうしよう。ふっとそんなことを考える。
世の中は恋愛をありがたがっているし、私も誰かとの親密な関係に幸福を見出したいと思っているけど、何かが引っかかる。
何もかもどうでもよかったらどうしよう。気の迷いなんかじゃなかったら。
極力、自覚的かつ意図的に生きる夏にしましょうか。でっかいうねりもあるのでしょうが。
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