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物語の端くれを引っ張る

わたしは児童小説を書いている。2作品目を書き終えたのが、10月ごろだっただろうか。そこから、炎が消えたかのように、書くのをやめてしまった。

でも、実際はくすぶっていた。

本当は書きたい、と。

その理由は、また、彼らに会いたいから。

もっと、格好のいい理由を取り繕うこともできるだろうけど、ただシンプルに、彼らに会いたいのだ。

そのことを考えるだけで、涙が出てくる時もあった。

彼らは待ってくれている、いつでも、そこに。


物語を書き始めるのは、小さな針穴に糸を通すような、そんな注意深さを要する。

ここか? いや、そこではない。

ここ? いや、違う。そうではない。

お! ようやくか!!!

油断は禁物だ。

すぐに、するすると、糸は落ちてしまう。


今日は、なんだかいけるかも。そんな予感がして、初めの一文を書いてみる。すると、考えもつかなかった言葉が浮かんできた。

ようやく、するりと収まったのだ。

そして、すぐさま、その糸の端くれを引っ張ってみる。一つの言葉が、次の言葉を繋いでくれる。今はまだ、どんな景色になるかも分からない。不安で、怖いし、完成するかさえ分からない。

それでも、引っ張ってみたいのだ。

引っ張って、何も出てこなかったとしても、それはそれで笑って受け入れよう。

引っ張って、自分でも見たことのない景色を見たい。そして、願わくば、大切な人たちとともにその景色を見たい。

光の先にある景色を。

#エッセイ



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