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自殺未遂

男は人生に失望し、希望を探すゆとりもなくなって、

しかし、死ぬ勇気もなくて二階から飛び降りた。

高速道路でも聞いたことのない加速が耳を叩き、

男は両の足で着地した。

背中にも痛みがあったが、足を脱臼、かかとを粉砕骨折し、

自分で呼んだ救急車で運ばれた病院で整復を受けた。


男は1か月両の足をついてはならぬと言われ、

毎日携帯に入れたデスメタルを聞いてイライラを逃がした。


足は細り、足をつかないリハビリは当たり前の姿勢を維持することも難しく、しかし精力的な医療従事者に励まされ、もう戻ってきてはいけないよ、など数々の言葉と共に3か月で退院した。


足にはボルトのとんがりが残り、脱臼した右足の合う靴がなかなか見つからないなど小さな苦労をしたが、

人は簡単に死ねないと悟り、人生を生きている。


23歳の派遣社員と病院で一緒になった。

彼も人生に失望し、カルトにハマって幻覚に包まれた状態で11階から飛び降りたらしい。

しかし、彼も脊椎などあらゆるところを骨折しつつも生還した。

自殺未遂者は精神科とリハビリ科のある病院に集められていた。

その精神科の医師の診断書はほかの医師には読めず、医師も病棟にいないことが多かった。

生きる力は湧いてくる。死に向かう力さえも生きる力の一部ではないかと思う。

男はリハビリに打ち込み退院を早め、派遣で労働しながら、大学を卒業した。

しかし、持病がたたって障碍者雇用で月収15000円に届かない。

親とつつましく暮らしているが、40手前という年齢からまだ頑張れると挑戦を続けている。

歪んだ足、曲がったアキレス腱を元気に使い、

母に代わってスーパーへ行ったりしている。

パラサイトと言えるだろうか。

世の中にはいろいろある。

愛と希望と信仰は最後まで残る、という聖書の言葉を胸に、

男は夜の中、祈って眠りにつき、朝日を楽しむ。

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