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橋のはなし

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人類の三大発明といえば、「道」「階段」「橋」である。中でも、橋は、河を渡るための手段として始まり、創造的思考に基づいて様々な発展を遂げて現在に至っている。その架橋の歴史と美しい姿…
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2024年3月の記事一覧

11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー

知識を得ることの大切さ  吉田兼好による随筆「徒然草」の一節(第52段)に、次のような話が出てくる。  ある時、仁和寺(注1)の老僧がひとりで男山八幡宮(注2)に参詣した。ところが老僧は山麓の極楽寺、高良の末社に参拝したのみで、山上にある本殿は拝まずに帰ってきた。そして、次のように言ったそうだ。  「お参りの人々がみんな山に登って行く、山登りに来た訳でもないのに・・・・」、あらまほしきは・・・・先達ということだ。  すなわち、知識と経験が豊富なはずの仁和寺の老僧でも、

10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

メソポタミア文明の誕生  人類の歴史上にはエポックメイキングな出来事がある。その多くは、気候変動によって引き起こされた。  長かった氷河期が終わると紀元前6000年頃からヒプシサーマルと呼ばれる気候温暖化が始まり、大型動物の生息地であるステップ(草原)が森林に覆われることで、食糧危機が引き起こされた。  これに対して、人類は農耕と牧畜による生活方式を発見して対応する。しかし、紀元前3000年頃に寒冷化が始まり、アジア・アフリカ地域の北緯35度以南の降雨量が激減して砂漠が広

9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー

天草市の町山口川に架かる祇園橋  石造りの桁橋は、橋脚数を増やすことで広い川幅にも対応できる。技術の水平展開である。  熊本県天草市船之尾町の町山口川に架かる祗園橋は、橋長:28.6m、全幅:3.3mで、約30cmの角柱の橋脚が5本並立の9列、合計45本が立てられている。川上側の橋脚は水切りのために三角に尖っている。  祗園橋は、1832年(天保3年)に庄屋の大谷健之助が発起して、庶民の協力によって建造され、石材は下浦村(現在の下浦町)産の砂岩を使い、石工も下浦村の石

8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー

飛び石から桁橋への垂直展開  創造的思考力を伸ばすために、橋を対象にして水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみた。  水平展開では、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな役割を見出して、現在でも数多く使われている。  一方、垂直展開では、より多くの人が安全に川を渡るために、「飛び石」を基台とし、板状の石や丸太を上に置いてつなぐ橋が考え出された。  飛び石は、橋脚の原型となり、橋脚の上に橋桁を乗せることで、桁橋が誕生した。  この垂直展開の例と

7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

垂直思考で飛び石から桁橋へ  創造的思考力を伸ばすために、水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみる。  水平展開とは、対象とする技術や知識などを他の分野や領域に適用することである。一方、垂直展開とは、対象とする技術や知識などを深めてさらに進化させることである。  実際、水平展開として、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな効果が見出された例があげられる。  一方、垂直展開として、より多くの人が安全に川を渡るために、「飛び石」を基台とし、板状の石