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脳味噌の中知っているか?

 人を殺して後悔したのは今日が初めてである。

 私は座り込んで頭を抱えた。目の前には脳味噌がでろりと現れている女の死体が一体転がっている。

 あぁ私は見てしまった。その脳味噌を見てしまった。

 人を殺すのは土曜日の昼下がりが良いと決めていた。なぜなら皆が元気でにぎやかであるからである。人を殺すのには明るければ明るいほうが良い。

 気分も明るくなるし殺すときの手も軽くなる気がするからである。私は車に乗ってお昼には繁華街につくように早朝から向かっていた。

 車の中には殺人に必要な道具を一式そろえていた。忘れ物を一つでもしてはいけない。私は殺しを十二回今まで行ってきているが忘れたことは一度たりとしてなかった。

 繁華街につくと一人で歩いている女を見つける。わざと人通りの多い狭い道(ただし監視カメラがない)で車の中から顔を出して

「すみません、道に迷ってしまって」

と言うと優しい優しい人間は道を教えてくれる。知らない人に車から声をかけられたら危険って知っているはずなのにみんな優しいからついつい教えてしまうのだ。そこまでいったらもうほとんど成功と言っていいものであとは口車に乗せてそのまま車内に乗せるとそのまま女は意識を失って倒れ込む。

 今回もその手筈で普通の女を攫ったつもりだった。家に帰り女が暴れるのを楽しみながら解体をしていった。解体されていく女も今までの女や人間と動作やしぐさなどは一緒であった。その代わり映えのしない様に十二回行ってきているがそろそろ飽きを感じていた。

 いつもと違うのはその「飽き」だろうか。最後に頭を鋸で切り取って脳味噌を取り出そうとして驚いた。

 脳味噌の中心にプラスチック状の何かが入っていた。私はそれをよく見てしまった。

 プラスチック状の中には小さな人が入っており私を見ると会釈したのである。

 この現実世界のものではない。UFO、異星人、異世界……想像してもしきれない。あまりの光景に私はその場から動けなくなっていた。

 どれくらい時間が経っただろうか、死体からは血がほとんど流れきっていた。死体をチラリと見るとまだプラスチック状の中に小さい人が入っており私を見ている。

 私は震える手で、そのプラスチックに触れると中から声が聞こえた。

「~~~~。」

 何を言っているか聞こえないが何か声を発していることは分かった。プラスチックを引っ張ると脳味噌とプラスチックの塊の中に太い血管のようなものがあり、繋がっていた。

「~~~~~~。」

 中の人は何かを喋っている。私はこれをどうすればいいのか分からなかった。

「~~~~~。」

 中の人物が首を横に振った。そうして私をもう一度見た。

 私も中の人をじっと見つめた。中には髪が生えた中性的な成人らしき見た目ということ以外分からない。

 そうして、中の人はプラスチック状の中で何かを押して、消えた。

 残ったのは中心部分に穴が開いた脳味噌だけであった。

 あれから私は街中で視線をやたら感じるようになったのである。殺しはバレていない。だが殺人を犯すのはもう怖かった。

 またあの人を見てしまうかもうしれない。

 いや今もあの人たちが私を見ているかもしれない。

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