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私に起こった二つの不思議な出来事

 真夏の日のことだった。
 その日は不思議なことが二つ起こった。
 それは私が子供の頃というだけのおぼろげな思い出である。
 一つ目は私の口から綺麗な金魚が一匹吐き出されたことである。
 二つ目は真夏の空に雪が降って来たことである。後に知ることであるがそれは風花というらしい。
 私が金魚を口から吐いたとき、その日は一日胃の中が気持ち悪くてどうしようもなかった。えずいてえずいて、ようやく帰り道で金魚を一匹吐き出した。
 金魚はびちびちと跳ね、私の目の前で踊っていた。私は鷲掴みにするようにして金魚を手に取った。あまりにも奇妙な出来事であったのであるが、あまりにも金魚が綺麗だったから家で飼おうと思ったのである。
 その時、空から雪が舞い、サンタクロースの格好をしたサンタクロースと思われる人物がそりに乗ってやってきた。
 私はそのサンタクロースに会うのは四回目くらいだったからもう驚かなかった。
「君、その金魚を私にくれないか?エニスフィード横丁の三番地の子が君の持つ金魚を欲しがっているんだ。」
 サンタクロースは紳士に私にそう言い聞かせた。
「またなの。」
 私は辟易して答える。
「あぁそうだ。」
 サンタクロースは深く頷いた。こうなるとサンタクロースは梃子でも動かない。私は渋々と金魚をサンタクロースに渡した。
「ありがとう。メリークリスマス。」
 サンタクロースはそうして消えていった。後に知ることになるのだがエニスフィードという町は存在していなかった。
 そうして私の手元から金魚は消えた。雪はしばらく降り積もり真夏だというのに少し量が出来た。
 あぁあの金魚欲しかったなと、ふと大人になった今に思う。とても綺麗な金魚だった。色は何色だったか思い出せない。ただ綺麗だったということだけ思い出せる。
 補足的であるが、サンタクロースは私が精通をしたその年から私に物をねだらなくなった。だがしかし、私が精通しても12月のクリスマスに、枕元にプレゼントが置かれ続けた。サンタクロースの一般的正体について知るのはそれからさらに先のことであった。

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