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私の使える魔法

私が使えるたった一つの魔法、それは暗い雨空を晴れにすることが出来るというものである。
あぁだがしかしこの魔法はいささか使うのが憚られる。
なんせ……
私は教室の中で一人立って凶弾されていた。
「どうしてそんなことをしたんですか。」
先生が問い詰める。周りを見渡してもクラスの中で私の味方は誰一人としていない。
「遠足に行きたくて、私のおかげで晴れたでしょう。」
昨日は雨の予報だった。しかし私はどうしても遠足に行きたくてその魔法を使ったのである。
「それとこれとは別です。どうして……」
先生は私を軽蔑するように見つめてはっきりと言い放つ。
「うさぎの首を切り落としたのですか?」
「遠足は晴れなければ行けないじゃないですか。」
私は一つため息をついた。私のおかげでみんなは昨日遠足に行けたというのに、クラスメイトは誰一人として感謝をしていない。
 そこから先は堂々巡りで結局私のことを頭のおかしいやつだと思われて終わった。それだけなら良かったのにその日から私は虐められた。
 クラスで飼っているうさぎのミミちゃんの首を切っただけなのに。である。
 なんて愚かなクラスメイトであろうか、どうして先生は分かってくれないのであろうか。
 あぁ私にはその時常識というもの世間のマナーが足りなかった。
 生き物の首を安易に切り落としてはならない。という常識が足りなかった。
 私の魔法は私が一人の時でしか発動しない。だから誰かに見てもらう訳にはいかないのである。あぁ残念である。
 淀んだ雨雲の下、うさぎの首を切り落とすとうさぎの首から真っ青な血が吹き出るのである。上に上にと伸びていったうさぎの血は広がっていき、灰色の空を青い空へと変えてくれる。
 それはとても綺麗でうさぎ一匹の命程度で十分すぎるほどの光景と恩恵であった。
あぁ残念だ。分かってもらえないのが残念だ。
クラスのK君に殴られながら考えた。
あぁ大きくなって、誰かを好きになって、初めてのデートの日が雨だったら
切り落とそう。
K君の首を切り落そう。
この私を虐めている一人一人の顔を忘れてはいけない。
いつかの晴れの魔法のために。

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