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ある幸せな家庭の一面

扉を開ける10秒前から分かる。ドタバタとしたうるさい音。私はリビングで飲んでいた紅茶を持ち上げ台所に向かう。
「ただいま」
近所迷惑なんて気にしない大きな声とともに扉を開けるのは息子である。
「おかえり」
私はまだ残っていた紅茶を台所に流して、カップを洗い場に置く。息子の次の言葉は決まっている。
「お腹減った。」
洗面所で手を洗いながら帰って来た時より大きな声でそう叫ぶ。そんなに叫ばなくても家中響き渡っているというのに。
「はいはい」
私は息子が聞こえているのか聞こえていないのか分からないくらいの声量で相槌を打つ。冷蔵庫から冷凍ご飯を温める。
「あとね、今日あとで水野くん家に遊びにいくから」
手を洗い終わった息子はそう言いながらソファにどさっと座り込みテレビをつける。
「チャーハン作るよ」
なにをするにもうるさい息子をほほえましく見ながら私は電子レンジでチンされたご飯を茶碗にいれる。
「わかった!」
 息子はそういうとテレビに映っているなんてことない旅番組をぼんやりと見つめる。その間に私は卵を茶碗の中に入れてかき混ぜる。かき混ぜ終わったらフライパンを強火で火をつける。
 茶碗の中にオイスターソースすこしと塩と胡椒を入れる。塩は少し多めにいれるのがポイントである。フライパンにごま油を引いたら一気にかき混ぜたご飯を入れる。
 ジュワッっとフライパンから音が鳴る。ジュージューとなっている間にご飯を手早く混ぜる。
 あ、そうそうお肉も少し入れておこう。冷蔵庫からすでに切られたベーコンをいくつか入れる。
 そうして手早く混ぜたらあっという間にチャーハンの出来上がり。白い皿に盛りつけて、息子に声をかける。
「できたよ」
 すると息子は跳び起きて台所まで向かってくる。
「ありがと!」
 私の目ではなくチャーハンを見ながらそう言い放つ。そのまま行こうとする息子にスプーンを慌てて渡す。
 ソファに座ってチャーハンを食べる息子を見つつ私は使い終わったフライパンを洗う。
 こんな日が続くのはあとどれくらいだろうか、このにぎやかな日々の欠片を私は忘れずにいきたい。

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