プリンを零す。プリンを零す。
掬ったプリンが滑り落ちてカーペットの床にぐしゃりと落ちてしまった。
柔らかくて、壊れやすくて、食べられるためだけに生きているというのにそれをさせることなく私の口から零れたプリンを憎らしく睨みつけた。
「チッ」
一人でいるからつい口から汚い音がでてしまう。仕事を一日頑張ったご褒美に買ったこのプリンに対してキラキラとした瞳で見ていたのとは対照的に今は冷徹に潰れたプリンを眺める。
動くのすらもどかしい。めんどうくさいったらありゃしない。
大きくため息をつきながら立ち上がり、身体を一二のリズムで無理やり動かす。足を一歩前に出す、もう一歩の足を前に出す。それを何回か繰り返す。
キッチンについたら右手を伸ばしてカウンターに置いてある黴の若干生えた布巾を手取り、水を軽くかけて絞る。
そのままさっきまでの場所を逆再生みたいに戻っていく。
崩れたプリンはどんどんカーペットにしみ込んでいく。
「最悪だ!」
大きな声で叫んだ。私がなにをしたというのだ。わずかな幸せすらも手にさせてもらえないのか。
プリンをふき取り立ち上がった瞬間机の角に頭をぶつけた。
その瞬間机は大きく揺れ動き、プリンの容器はカラカラと音を立て回ったのが耳に入って来た。
頭に伸し掛かるとげついた小動物がぶつかったような痛みを感じながらも思考回路と未来予知はしっかりしていた。
「最悪だ。」
もう一度呟く時間すらないことは分かっていた。
真横で残ったプリンが全部ぐしゃりとカーペットに散った。
私なにか悪いことしたっけ?
カラメルがじわりじわりとカーペットにしみ込んでいく。プリンが沈み込んでいき液体になっていくまで私はそれを眺めた。
泣くほどのことではないが、怒って良いだろう。いや怒るったって誰にだ。
固まった腕を無理やり動かして、沈み込んでいったプリンをすくい上げるようにしてふき取る。黴の生えた布巾とプリンがぐしゃぐしゃに混ざっていく。
プリンを拭き終えて、立ち上がりシンクに行った。
シンクに水を流して布巾を洗う。付近からぐしゃぐしゃになった黄色の限りなく液体に近い個体が流れ込んでいく。
今日は特に最悪な一日だったな。明日はなんかいいこと起こっておくれ。
そう思いながら私はそのまま布団について眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
夢の中でもプリンを食べようとしてぐしゃりと落ちた。
プリンを拭いて眠った。
彼女がプリンを食べようとして食べられなかったのが、3858回目であることを彼女は知らない。
誰も知らない。
これはよく見る夢の繰り返し。
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