ゴミ箱はゴミを捨てたい。
ゴミ箱がゴミとして捨てられたものは、捨てることが出来ないものだった。
ゴミ箱は捨てる場所を求めて旅を続ける。ゴミ箱は終着点ではなく、過程である。最終的にゴミは燃やされるなり、なんなりとされ墓場である処分場に行くはずである。
しかしゴミ箱はどこに行ってもそのゴミは捨てることは出来なかった。そこに捨てるなと言われてしまった。ゴミは溜まり続ける一方であった。
ゴミに入っているものは大麻だったり拳銃であったり、誰かの殺意の後だったり、失恋だったり、誰かの死体だったりした。それらが捨てられると困るものばかりであった。
ゴミは膨れ上がった。ゴミはどんどん重くなる自分に嫌気がさした。そして同時にゴミを捨てていく人間にも嫌気がさした。
私はもういっぱいなんだ。助けてくれ。そう言っても誰も聞くことはない。
このゴミを生涯かかえてくれと人間はいう。それは無理だと私が言っても人間は私の中にゴミを詰めていく。
もういっぱいだ。溢れている。そう叫ぶ口も塞がれた。
そうして何年だろうか、何十年だろうか、いや何日だろうか、私の中のゴミは溢れていた。ゴミは表面張力のようになっており慎重に歩かなければすぐに零れてしまいそうなものとなっていた。
私が進むと人々は眉をひそめて去っていく。カラスでさえゴミを漁ることはしなかった。私は孤独だった。
頭の中から身体の隅までみっちりと詰まったゴミにうんざりしていた。
私はこのゴミを捨てたかった。ただそれは出来ないことだった。
……人間がいる限り。
人間を滅ぼそう。それが私の願いとなった。
私はそうして人間を滅ぼそうとした。人間の嫌なこと、人間の弱さはゴミである私にとっては容易に想像が出来たし準備することが出来た。
そうして私は人間を滅ぼした。一人残らず。それには一年もかからなかった。
人間を滅ぼした後に気が付いた。私の存在意義がなくなってしまったことに、このゴミを捨てた後には私にはもうゴミ箱としての役割はないのだということに。
あぁ、困った。
だから私はゴミを取り出して人間を作り直した。
大麻、拳銃、殺意、失恋、死体、憎しみ、悲しみ……
人間の形は不出来であったがまぁまぁうまくいった。そうして幾度も人間が死んで、生まれた。
そうして繰り返され千年、万年、数週間の日々が過ぎた。
私の中のゴミはまたいっぱいになっていた。
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