るるるるるるる
これは夢の中の出来事である。と思いたい出来事が先ほどあった。
新宿の某百貨店にて特設展が設けられていたのを出先で見かけた。
白の布地で出来た看板に黒のポップ文字で書かれていた。「るるるるるる」の文字。
見ると30センチほどの筒状の中に黄色く蠢く何かが入っていた。
「どうぞ今なら「るるるるるる」1000円で販売しております。お刺身としてもデザートとしてもいただけます。」
女子高生くらいの見た目の女が声を張り上げて売り子をしていた。レジには責任者と思われる中年の男性。
遠目からでも分かるその蠢く黄色い物の異常さに私は思わず立ち止まった。しかし周りの客はちらりと見るばかりでそれが当たり前と思っている。
「お客様「るるるるる」ご試食いかがですか?」
女子高生の恐らくバイトが近づいて来る。私を「るるるるるる」のある方に手招く。私は立ち止まり女子高生に尋ねる。
「るるるるるるとはなんですか?」
バイトの女は笑顔で定型文的回答をする。
「るるるるるるるとはべべべべにてよく食べられているものでにににににが開発したものです。皆さんお刺身だったりさっぱりとした味ですのでデザートとしても食べられています。この容量で1000円というのはお得ですよ。」
その定型文的決まり切った回答がその「るるるるるるるる」が私だけが知らないものかのように扱われているのである。
立ち止まっているばかりの私に対してその日雇いは私の元から一瞬離れ小さなコップに入った黄色の蠢くものを出してきた。
「良かったら一口どうですか?」
私の目の前に黄色の蠢くカップをさあどうぞとばかりに出すその類人猿に私は負けてコップを手に持った。
「飲めばいいんですか?」
震える声で尋ねる。
「一気に飲むと喉を詰まらせてしまう可能性が高いですので咀嚼してください。」
その哺乳類は私の問いに答える。
私は震える手でそのコップにあるものを一口入れた。
途端に目の前が真っ暗になり次の時には私は布団の中にいた。
私は確かに百貨店に居たはずなのだが……。今は何時だ。何日だ。何年だ。
慌ててスマホを確認する。
時刻は4時。12日。2021年。今日は人に会う約束が七時から会ったのである。だから私
は新宿に行ったのであるが、今からでも間に合うのに新宿になぜそんなに早く行ったのだろうか。いやそんなことは夢だ。夢と現実がこんがらがっている。
早く出かけなければ。
私は急いで準備をしてドアを開けた。マンションのエレベーターを待つ所で声をかけられた。
「こんにちは」
振り返るとそこには、
現在18歳、女、佐藤柚希、605号室、156センチ、実家暮らし、アルバイト学生
がそこに居た。
「こんにちは」
私は挨拶を返した。さっきまで出会っていたかの気持ちになる。不思議だ。
サポートをしていただけると私の創作活力がかなり向上致します。これからも頑張ろうと思えます。 頂いた分は創作活動に還元していきます。