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もしもWikipediaがweb3だったら

最近話題のweb3ですが、どうも具体的な活用イメージができずに悩んでおります。

そこで、web3を理解するために、既存サービスを例に、それをweb3的に立ち上げるとしたら、どういうものになるのか妄想だけで考えてみたいと思います!

今回は事例として、"Wikipedia"を取り上げます。

まず考える前提として、簡易的にビジネスモデルは、「Wikipediaのサイト内に広告を掲載し、その広告収入を貢献度に応じて分配する」ということにしたいと思います。一般的な「広告ビジネス」をweb3でやるとどうなるか?!

それでは以下、私が考えてみた、立ち上げからのプロセスです。(実際のプロジェクトを1つも知らないため的外れな可能性がありますが、逆に先入観なく考えるとこうなるという思考実験としてお付き合いください!)

サービス立上げから収益分配までを妄想する

以下の5つのフェーズに分けて、それぞれで行うべきことを考えてみました。

①組織の立上げ
②ガバナンスルールの設定
③運用開始
④収益分配
⑤モニタリング

①組織の立上げ
・「多言語百科事典を立ち上げる!」というミッションをもとに、コミュニティを創設
・そのコミュニティメンバーで、資金を出し合い、ガバナンストークンを発行

②ガバナンスルールの設定
トークン保有者の投票に基づき、以下のガバナンスルールを設定
=====
・広告収入のうち、[5]%分をガバナンストークン保有者へ、[5]%分を経費用トークンへ、残りの[90]%を執筆者へ還元すると決定
・広告をサイト内のどこに貼るかを決定
・貢献の評価は、誰が、PVを稼いだ記事を、どのくらい書いたか、で決める
 - 貢献度は自動的に計算できるように、「1記事の月間PV」/「サイトの総月間PV」で記事貢献度を決め、「1執筆者の当該記事記載文字数」/「当該記事の総文字数」で「記事毎の執筆者貢献度」を決定するものとする
=====

③運用開始
・Wikipediaのウェブサイトを開設
・コミュニティメンバーがひたすら記事を書く
 -執筆した記事はそれぞれNTF化し、オンチェーンで管理
・サイト内に、ガバナンスルールに基づき広告掲載を行う

④収益分配
・広告収入が支払われると、コミュニティ全体の信託口座へプール
・売上高の[5]%分をガバナンストークン用の信託口座に移管
・売上高の[5]%分を経費用トークン用の信託口座に移管し、当該金額相当額のトークンを発行
・売上高の[90]%を報酬用トークン用の信託口座に移管し、当該金額相当額のトークンを発行
・ガバナンスルールに基づいたスマートコントラクトによって、貢献度に応じて報酬用トークンを貢献者へ配布
・メンバーは報酬用トークンを用いて経済活動を行う

⑤モニタリング
・信託口座に想定通りの残高があることを信託銀行等に認証してもらい、それを記録
・経費用トークンを用いて、監査法人への支払い、ガス代、その他経費を支払う
・定期的にガバナンスルールを見直す


考えてみた感想

○総論
例えば、サイト内の広告位置の検討は、「広告収入の最大化か?!」、「ユーザビリティの最大化か?!」といった組織哲学を投票で決めることであり、しかもその結果が明示的に記録されるというのは、フラットな意思決定ができており、非常によいと思います。まさにティール的ともいえるかもしれません。

また、Wikipediaはものすごく素晴らしいサービスですが、貢献した人たちは全てボランティアで報酬を受け取ることができません。今のままWikipediaを報酬制にしようとすると、いちいち誰かが貢献度を計算し、該当者の世界中の銀行口座(+KYC)を確認し、送金手数料を支払って送金する、というプロセスを行わなくてはならず、運営にリソースと費用が掛かりすぎて、労力に見合った報酬を払うことはほぼ不可能です。

これをweb3で実現することによって初めて、Wikipediaのような世界中の大勢の人がちょっとずつ関わるケースにおいて、得た収益の大半を貢献した方々へ、貢献の大小にかかわらず報酬として支払うことができるようになるのは間違いないとおもいます。これによってこれまで報酬を支払うことができなかったようなプロジェクトにも報酬をもたらすことができるかもしれません。

○貢献度算出の難しさ
現状のWikipediaは、「最高の多言語百科事典を作ろう」というモチベーションだけでやっているが故にある程度のクオリティが確保されているとも感じます。

しかし、金銭的インセンティブが介在すると、ガバナンスルールをチートして稼ごうとする人が現れて、結果的に質が落ちる可能性があります。今回のケースでいうと、PVの多い人気記事に対して、どうでもいい内容を追記しまくれば報酬が簡単に得られてしまいます。

つまり、貢献を評価するルールを決めるのがめちゃくちゃ難しい。自動配布できるくらいシンプルなものが望ましいですが、それでいてチートされないって、余程考え抜かれたルール設計でないと成立しないですよね。

「テキストを書く」というだけでもこのくらい難しいので、他のビジネスではもっと貢献度の評価が難しいと思うと、活用できるビジネス事例は限られてきてしまうような印象も受けました。しかも、報酬目的に参加するので、一気にビジネスが立ち上がって初期に収益がそれなりに入ってこないと、やる気を失い、すぐに閑散としてプロジェクトは死んで行ってしまいそうという悩みも。

○トークン配布設計の難しさ
報酬用トークンの配布ルールは、簡易的に「収入相当額のトークンを発行する」としてみました。このようにすると、信託口座にある現金と同額分しかトークンが発行されないため、実質的に法定通貨ペッグのステーブルコイン的なものとして成立するのではないかと思いました(これ正しいでしょうか?)。

こうすることで、配布されたトークンをそのまま通貨的なものとしてすぐに使うことができて利便性が高くなります。報酬支払いを月次ではなく、日次で行えば、「執筆(貢献)⇒トークン配布⇒消費」が1日のうちにシームレスに行われる世界を実現することも夢ではないかも?!

ただし、このような設計にすると、全体的にPVが稼げるようになるまで頑張った初期の人たちがあまり報われず、サービス・PVが大きくなってから執筆者として入ったほうがコスパが良くなり、最初に頑張るインセンティブが失われます。

では、毎月発行されるトークンは報酬に寄らず一定とするとしたらどうなるでしょうか?その場合、以下のようなイメージになります。
・1ヵ月目:1万円の収入 ⇒ 100トークン発行し、貢献した人たちで分ける
・2ヵ月目:10万円の収入 ⇒ 100トークン発行し、貢献した人たちで分ける
・3ヵ月目:100万円の収入 ⇒ 100トークン発行し、貢献した人たちで分ける

すると、以下の様にトークンの価値は大きく伸びていくことになり、初期の参加者が少ないころに貢献してトークンを手にしていた人はより高い価値を享受しやすくなりますが、あとから参加した人は参加者が増えている分どんどん報酬を得るのが難しくなっていきます。
・1ヵ月目:1万円/100トークン ⇒1トークン100円
・2ヵ月目:11万円/200トークン ⇒1トークン550円
・3ヵ月目:111万円/300トークン ⇒1トークン3,700円

実際の配布ルールは、ここまでシンプルなものにはなっていないと思いますが、しっかりと考慮しないと、どうしても時期によって有利不利が生じることになります。インセンティブがアラインされていない人たちが混在する中で、コミュニティ運営を行うのは非常に難しく、長期的に安定して運営することは困難難になることが予想されます。

○DiFiの存在意義
こういうプロジェクトのガバナンストークンや報酬用トークン(ステーブルではない場合)が増えてくると、今存在しているトークン同士をスワップできるDeFiのようなサービスの存在意義が高まる。

ガバナンストークンは保持したまま、一定の金利を払ってステーブルコイン等にスワップして、経済活動するみたいなことが簡単にできるようになり、web3で稼ぎつつ、オーナーシップは維持したまま、経済活動もちゃんと行えるという素敵な形を構築できる気がします。(まだ現状だと、DiFiは、トークン同士をひたすらスワップする循環型になっていて、ボラ高い銘柄同士の貸株市場においてアービトラージを狙う人のためのサービスになってしまっている感じが少ししています。)

よくにわからなかったこと

検討している中で以下の点で良くわかりませんでした。

・ガバナンスルールに基づき、実際に広告を張れるエリアをサイト上に作るのは誰がやるの?
・↑のタスクにはインセンティブないの?あるとしたら、なんかやるたびにいちいちルール決めてこの作業は何トークンみたいなことを合意しながらやらないといけないのか?
・なにかアクションを取りたいと思うたびに、discordで議論し、投票用のシステムで投票し、、、というプロセスを取らないといけないのか?(より正しい意思決定はできるかもしれないが、意思決定がものすごく遅くならないか?)
・執筆者に配布される報酬用トークンは、信託口座にある現金と同額分しか発行されないというルールにすれば、基本的に法定通貨ペッグのステーブルコインとして流通可能という理解は正しいか?
・各記事をNFT化しておいたところで、記事の引用から得られるべき収入に対して、どのようにしたら権利主張でき、執筆者に還元ができるのか?
・wikipediaなので、各記事は任意の参加者が内容を書き換えることができるが、メタデータをファイルサーバへ参照して、ファイル自体は書き換え可能にしておけばNFT化する意味はあるという理解でいいか?(フルオンチェーンじゃないけどそれでも意義はあるのか?)

最後に

web3に関しては知識が浅いので、かなり粗々な妄想ですが、、「不特定多数のメンバーに少額でも報酬を支払いたいが、現行のウェブ/金融システムではコストとリソースがかかりすぎて難しい」というような類のプロジェクトであれば、web3のはまりはすごく良い気がしました。

一方で、DAOの要素まで入れ込もうとすると、できるプロジェクトはかなり限られてくるような気もしました。多少中央集権的だけど、中間マージンをできる限り薄くし、不特定多数の貢献した方々へできる限り報酬を還元するために使っていくのがまずはいいのかなぁなんてことを思った次第です。

理解を深めるためのたたき台として、間違っているところ、こうしたらもっとよいというところ、是非コメントいただけると幸いです!よろしくお願いいたします。


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