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結婚すると異性のともだち減るよね問題

むかしむかし、M君という同僚がいた。

M君はこぎれいだけれども確実にヲタの香りを漂わせるメンズで、空気が読めないためか完全に職場でも浮いている存在だった。
ともだちもすごく少なそうな雰囲気を醸し出していた。

私はわりかし人のお話をふんふんと聞くのが好きなので、M君の鉄道の話だとか機械の話だとかそういう話をふんふんと聞いていた。
聞かれてもいない話をまあよくしゃべるメンズだった。

M君は私に一冊の本を貸してくれた。
ライトノベルで主人公が理屈っぽい感じだったけど、それなりに面白く拝読した。
(タイトル忘れちゃった。完全デジタルな世界に入り込んでしまうといった物語だった)

M君が水戸に旅行に行く際(十中八九一人旅)お土産に藁に入っている納豆が欲しいといったらちゃんと藁に入ってる立派な納豆を買ってきてくれた。一本。ありがとう。

M君はある製品についてかく語りき。
「あの製品のある部分をなくしたら製造費の0、いくら円省けるんですよ。これはすごいことですよ」。

たったそれだけの金額しか省けないの? 
と答えたら、彼はにやりと笑って
「製品って何百万って単位で製造するでしょう?0、いくらだけでも莫大な利益に繋がります」。
鼻の穴を広げてとても得意そうに教えてくれた。

M君は私に初音ミクの存在を教えてくれた。
お気に入りの曲をドトールでけっこうなボリュームで再生してくれたため、周りの目を気にした私は「大丈夫、今度聴いてみる」とボリュームを一気に下げたらM君は少し悲しそうな目をしていた。

M君は言った。
「暗いところで撮影すると、ISO感度上がってノイズざらざらになるでしょ?
人間も同じなの知ってた?」

知らない。さすがに人間の目はカメラのレンズとは違うんじゃない?
そう返答したけど、夜、真っ暗な部屋の中で、ざらざらとした視界を見て、M君の話を思い出した。なんでもかんでも否定から考えてはダメだ。暗闇のなかでそんなことを思っていた。

M君はただの過去の同僚で、神に誓ってエロいことは何もしてないし、今となっては連絡先さえ知らないけど、たまに彼の言葉を思い出したりする。勝手にエッセイに仕立ててごめん。

M君、いまは友だちできてるといいな。

とか言ったら「失礼な。それよりこのVtuber知ってます?」とかまたエンドレスの話になるんだろうな。

結婚すると男友達はどんどんいなくなってしまうし、ふたりで会うことも減るし、サシ飲みなんてありえなくなる。※個人の感想です。

でもイチ人間として確実に「いいヤツ」なたぐいの人と、異性という理由だけで関係が継続できないのが少しだけさみしい。

人間が性器の取り外しが可能な生物だったとして、自宅に性器を置いて出かけることができたなら(それは配偶者への配慮の行動として。)捨てずにすんだ人間関係もあるんじゃないか、なんて思ったりする。

そういえばM君に「『やばい』のビジネス敬語って何か知ってます?」と聞かれたことがあった。

なんだそれと思って右から左に聞き流してたら
「『お客様、やぼうございます!』って言うんですよ」
と鼻の穴を広げながらドヤ顔で言っていた。

そんなM君の未来に幸あれ。

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