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厳しくも優しいBリーグでありたい

私がBリーグチェアマンに就任して、最初に取り組んだ大きなプロジェクトが暴力暴言根絶を目指す「暴力・暴言・ハラスメント追放プロジェクト」の設立でした。バスケ界全体としても日本バスケットボール協会が掲げる「クリーンバスケット、クリーンザゲーム~暴力暴言根絶~」に則ったもので、啓蒙活動の実施、処分の厳格化、通報窓口の設置を行っていくというのでした。

なぜか。Bリーグでは、パワハラ・暴力など過去にも数件発生しており、これらのことが社会通念上許されなくなってきていることへの認識の希薄さ、プロのコーチ・選手としての心得の欠如などから起因していると認識しリーグとして撲滅に向けて厳しい姿勢で臨むことが必要であると考えたからです。この領域に踏み込むことは、リーグとしても大きな負担とリスクも発生します。しかし、何もせずカルチャーを変えられないと「バスケで日本を元気に」なんて言っている場合か?と何度も自分自身、自問自答を繰り返して決めました。

やらねば理念実現に背を向けることによる長期的リスク。やればやるで通報の頻発による負担とあぶりだされた事案が短期的にはBリーグをむしろ揺るがす事態になることも出てくるかもしれない。長期的には正しくてもそこまで理解してもらうことはなかなか難しい。もしかしたらその間にスポンサーが離れてリーグ運営が立ち行かなくなるかもしれない。珍しく不安を抱えながらスタートしたのです。しかし、悩んだ時は、本質に立ち返り、何を成し遂げようとしている組織なのかを考え大切なものを守っていくことを優先していきます。時間はかかるかもしれませんが浸透すれば限りなくゼロに近いていくと信じています。

もしかしたらチーム現場では選手たちとコーチ陣の関係に疑心暗鬼が生じているあるかもしれません。当然監視体制においてスタッフにも負担をかけているかもしれません。何よりもあぶりだされた時、発生したクラブは大きなダメージを受けます。本人は言わずもがなです。何かが起こった場合や通報があった場合は、しっかりと専門チームで対処して事実確認をして裁定していきます。処分を下すことでダメなことはダメだと厳しく本人にもクラブにも向き合い、各クラブも対外的な説明やお詫びなど行っていきます。もちろん、リーグも同様です。実際、社会的制裁や職を失うという意味では経済的な制裁もある種受けます。何よりもプロスポーツ界である以上、名前も顔も立場も地元では知られているので外を歩くことさえも憚れることになることもあります。ご家族も辛い思いをすることもあるでしょう。

謹慎期間は、社会貢献活動やボランティアなどをしながら自身を内観し見つめなおす時間を持つというのが一般的です。今後、タイミングや事の重さにもよりますが、過去に処分を受け入れたコーチや選手などを受け入れていくクラブも出てくると思います。そこは各クラブと本人の話し合いの中で決まることなのでリーグがとやかくいうことではありませんが、しっかり本人が反省していることが確認でき、クラブがレピュテーションリスクに対する覚悟があり、再発防止にしっかり取り組んでいくのであれば基本的に私のスタンスは容認、むしろ良いことだと思っています。また、再起を応援していきたいとも思っております。

当然処分のレベルにもよりますが、ダメなものはダメという厳しい向き合いと心底から反省して真摯に改心した本人の再起を認めていくという矛盾を成立する寛容さが必要ではないかと考えています。

何かあるとSNSの力も手伝って人をとことんまで追い込んだり、叩きのめして再起不能にしてしまうことがBリーグどうこうの話ではなく社会全体に緩やかに蔓延している気がしています。

被害を受けている人を救い、加害者を戒め、誰かを極限まで追い込むのではなく、誰もが生きやすい、つまり、暴力・暴言・ハラスメントがなくなるBリーグを作ることが目的のプロジェクトです。トカゲの尻尾切りになってはいけません。誤解を恐れずに申し上げると厳しくも優しい、Bリーグでありたいと思っております。


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