「未来」800号記念原稿

習いたての指でマッチを擦るように冷蔵庫のなかあなたを燃やす
一、三グラムの声で喘いでるそこだけがまだ凪を迎えず
眠ってる眸を指で開いたら底に魚が泳いでみえる 

水門まではだかで溺れて流されるみたいな夢をいつもみている
部屋はまた岸辺のように明けてゆく終わったあとの距離を離れて
まだ雨の止まない朝に巻かれない発条ひとつ頭蓋骨のなか
隙間から盗撮されているような青いインクの瓶が透けてる
漏れてくるひかりの先の一丁目一番一号明かりは痛い
永久凍土のなかであなたのままでいる死篭り卵になって笑えば
パブロフの犬の反射のようなもの一生をふいにする喜びは

#短歌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?