短歌的実験(4)
素性の知らぬ背骨をすっとなでるとき感情論は火事の話に
円筒形の器にふたつ穴を開け心臓が土になるのが最後で
首筋の影を擽る舌先の瓢塚ひとつ肌が冷たい
おんなと一緒に患部のなかに蕩けては秋の写真が黄ばんで写る
筐体の壁をすべすべに磨き上げ蜜蜂はとまることができない
閂はスポンジ状に、表までよろけるように、蕩けるパドック
ベランダからの海、靡き寝の切れ端が盗んだことばのように吹かれる
斜面から膨満になり満ちて引く細長い足だけの息子は
黴臭と精液臭のスメル住めるプラスティックの皿の(さしとい)
#短歌