実験的短歌(1)
実験的短歌(1)
焦点をすこしずらせば影像とその人物が吊り下がっている
川面へと砕けるひかりが脱皮するいつまでぼくをつづけるのだろう
貴婦人のようなつぼみに添えている鳥が初めて空を飛んだ日
飛行機の墜ちた日のこと海岸に耳の打ち上げられた日のこと
眠れない小鳥とともに春の夜は花粉を肺の奥まで吸い込む
ペリカンの空に守礼の浮かびきて骨盤のなか綿布をたたむ
生まれなかった姉の名前をなぞりつつ血の染みる船を内海に出す
たくさんの林檎は落ちてこの星の血液のなかに捕食されゆく
やがて燕がコップの底に墜落し小枝の足は南方へ向く
この世からひとり亡くなりライ麦の椅子の発狂の足跡のラビリンス
さまざまにまざまざと人は死んでゆく小鳥のような表情をして
むぐら這う奇妙な線のその先の朽ちた扉が若さを揺るがす
鍵穴のようなあなたの痩身に過ぎりしものよ噴き上がる水
鳥の影を王族の夢を追いながら回り続けるルービックキューブは
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