短歌的実験(3)

耳のなかの海

まだ海を知らない山羊が午後二時のプールに肩甲骨を浮かべた
やわらかい海を包んだ赤玉を終わったからだの膝に並べる
づがいこつまだやわらかいころだったそらへ吹かれるあかいセロファン
海のない船着場からふるさとの夜を通って花弁に触れる
ひるま食べた果実の匂いをさせながら地肌の翅が海へと曲がる
転がって転がりつづける思い出が凹面鏡のなか(ゆるされない、される
一ツノ沈黙シタ火事ヲ愛シテハ地球創造説ヲ再読スル
巣の中の雛は非常に錆びやすく黄銅色のシンバルは鳴る
ペルセウス流星群の爪先を牢獄にいて罅隙(かげき)から見る
せいけつにかつせいひつに磨かれた月の仕事を少女に伝える
ワタクシを解剖し終え緑色の月のひかりで埋めてほしいよ
よく響く三色菫と月の水を並べるように肌をあずける

#短歌

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