いけないことをした

昼の月のように掠れる台本の言葉はきっと息が足りない
昼の月、押しても押しても掠れてる言葉にきっと息が足りない
子や猫を目にしたとおり屈んでは骨を近づけ母の落葉
かつて銃を握った革の手袋のテカリのような痛みの月は
便座のかたちがうっすら残る家族とは消えてもどこかに残るスジあと
電球の明かりにうなだれ縦書きの文字はねむりの宙吊りになる
歩き出す歩幅どおりに止みはじめ雨を引き継ぐ雲の切れ切れ
煮こぼれの汁が親しく赤くなり私はきっと許されている
蜘蛛の巣がいけないことをしたあとのその高さまで空を払った
紙コップ一杯分の寂しさを零しても零しても零しきれない
どの蛇口も捻りっぱなし一日を頑張りますと父は動かず
蛍光灯の怒りのような点滅が谷折りを山折りへと見せる

#短歌

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