詩的実験(8)

詩的実験(8)

鉱物質の味のする
赤土の付着した
春生まれのきのこを睡らせる
あるとき
夜から感染するという病気に
罹ったが
放牧されたことばを
葡萄酒で希釈したところ
唐黍の聴力のように
遠くまで届いたので
ペン先から滴る血のように
一度だけあなたに告げた

生まれなかった姉の
歌えないフレーズを
細いからだの毒を
眼のなかの蛹を
鏡をとおして
わたしは置き去りにされのだった

内海は濃いミルク
乳房に留まり
内臓のどこかの隙間に
紛れ込んだ硬貨が
取り出せない
ぼくがスクレーパーで
心臓を浮き立たせている間
羽が生えてくるまで
帆船がオリーブオイルの中に沈むとき
空は傾くという

油と水の味のする風景のあなたは古い鏡を降りる
シルエットは麦の穂先に吹かれつつ鶏骨のなかの空が涼しい

#詩

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