岬まで行かなかった

詰所と宿舎を往復するバイクが無免許
アクセルを、切り裂く快感にアメリカは、と
カーブは牧草地のたまてばこへ、知らない
保定枠は軽く、暴れたりして仕方なかった
縫合のあと武蔵境まで一気に帰らなかったわけで
飛行機の中の窓や座席の記憶だけが軽い
壁があるかないかの違いだけで削ぎ落とした
時計台は改装工事中で
窓二重で、北国ならではと新鮮だ
抜糸は江島さんにしてもらった
体温を足指にかざせば崇教真光
好かれていたことをほろりと受けとらず
ロッカーに置き忘れてある、今になって後悔しきり
南向きのシンクの棚のうえに白い文字盤のセイコーの腕時計
が、砂丘の行く、行ったあとらしい
くるくるとスナップを効かせては排水する妙技
とっくり結びと鈎なしペアンによる外科結びと
骨、そこそこに自慢した
淘汰とは床に叩きつける妙技
燃されて土に還らなくてもこの星のなかにとどまる言い訳
生理学教室のうらのジギタリスの咲いたまえで写真とってもらって
ペンタックスの一眼レフじゃなかったかな
顔くらいの大きさで、きみは大分の桶屋の娘だって
言われて、笑う
大皿のたらこスパゲッティをおよばれされて
三鷹駅から徒歩十分の、ハイファイセットは雨のメロディーで
薄れるからぼくらはガガーリンくらいのヒーローで不毛
駅から真っ直ぐ道路が海のように反射して
国立と同じところなんてどこにでもある
パーラーの床にティートカップから
漏れた乳汁だけが正義のようにうまいこと汚れる
#詩

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