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人と、組織と、コーヒーと、凄まじいUX

先日、Code For Japanのチームメンバーから連絡が来まして、

「会社でコーヒーツアーをやっているから来てみませんか?」

とのこと。


私の会社には社内にカフェがありまして、

私は、ほぼ毎日仕事の前にはそこのカフェでコーヒーを買ってから仕事をするぐらいにには、コーヒーが好きです。


更に、友達でコーヒーに少し詳しい友達がいて、目の前で豆の種類や淹れ方を変えたコーヒーを出してくれて、

「よく淹れ方とかで変わるとは聞くが、おっしゃるとおり割と変わるもんだなぁ」

と感心した思い出もあるので、午後休をとって行ってきました。


まあ、タイトルで大枠は伝わるかと思いますが、自分の想定していたレベルを遥かに超えた経験だったんですよ

コーヒーを御馳走してくれた中川さん、誘ってくれたMさん、株式会社アマナの関係者の方々に、感謝とリスペクトを込め、この記事を書いてみたいと思います。


1つのマシンのために、デザインされ尽くした空間

株式会社アマナさんの天王洲アイルにあるオフィスでご馳走していただけるとのことだったので、仕事を13時で切り上げ、14時半ぐらいには天王洲アイルに着きました。

お邪魔させていただける上に、タダでコーヒーも振る舞ってもらえるそうなので、流石に手土産ぐらい買っていこうと思い、天王洲アイル駅のスタバに寄って、ラズベリーとホワイトチョコレートのクッキーみたいなやつを買いました。


そのままアマナさんのオフィスに向かい、Mさんと合流。手土産を手渡して、オフィスをぐるっと見学させていただきました。

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そのあと、Code For Japanのチームメンバーでもう1人参加する方がいらっしゃったので、その人と合流し、コーヒーを振る舞って頂く場所に移動しました。


足を踏み入れた瞬間分かりましたね

「これはスタバの手土産とか食べる感じのやつじゃない」

と。


生憎写真を取り忘れてしまったので、ネットから拾った画像になりますが、

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これですよ。


普段私服で仕事ができる会社に属しているので、チノパンにロンTみたいな格好で会社にも、遊びにも、飲み会にも行ってしまうんですが、

今日も例に漏れずチノパンにロンTでした。

ちょっと後悔しました。


で、Mさんからのご紹介で、中川さんを紹介していただきました。

話を聞くと、

アマナはビジュアルコミュニケーション事業を行なっている会社で、フォトグラファーやクリエイターなど、様々なクリエイティブ活動を行っている人が所属をしているとのことですが、中川さんは「コーヒー」をクリエイティブの題材として、活動しているクリエイターさんだそう。

クリエイターながら、事務所のようにアマナに所属しているわけではなく、れっきとした社員さんらしいです。


詳しくは以下の記事を御覧ください。(先程の画像も以下の記事から取りました)


話を戻します。

案内された場所はアマナ天王洲本社のギャラリーカフェの「IMA cafe」(※コロナ禍につき、現在休業中)というそうなのですが、一際目を引くのはテーブルのど真ん中に鎮座する物々しい機械。

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これがコーヒーをドリップする機械らしいのですが、ただのコーヒーマシンとはわけが違うらしく、

NASAのコーヒー好き好きエンジニアが、コーヒー好きすぎて開発してしまった、バリスタのコーヒードリップの動きを完全再現する機械だそうで、日本にまだ3台ほどしか存在しないそう。


バリスタの動きを計測させて、このマシンにそのデータを食わせると、それと同じ動きでコーヒーをドリップし続けてくれるらしく、日本の都内にある3台のマシンのうち、2台は中川さんの動きを記憶しているらしいです。(記事後半で動画載せます)


このマシンをIMA cafeに導入すると決めてから、このマシンの為にIMA cafeの空間設計をしたそうで、

マシンが際立つようにテーブルの奥行き、幅、高さを設計し、

マシンのためだけにテーブルに配線用の穴を空け

マシン以外は際立たせたくないので、その他機材は他の台に追いやり、高さを1段下げる。

マシンの色が銀なので、それが目立つように壁の色やその他のマシンの色を決め、

なんなら中川さんのシャツの色も黒でしたね(これは気にしてるのかは知らん)


そりゃぁ最初に目に飛び込むわなぁと納得しました。

顧客から見つけさせるUX

いよいよコーヒーを振る舞ってもらえることになりました。


噂のマシンでコーヒーがドリップされていきます。


ドリップする場所が5箇所あるのに、お湯を落とすノズルは1本で、ノズルが移動しながらコーヒーをドリップします。

ノズルが5本あれば更に効率化はできますが、あくまで「バリスタの再現」であるため、ノズルは1本でやるそうです。


動きを見てるだけでもテンション上がります。


最初に淹れてもらったコーヒーは1種類の豆だけを使ったコーヒーでした。

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あえてグラスの真ん中ぐらいまでしか注がないことで、空間に香りを充満させるそうです。


味や香りは、私がメチャクチャ食レポが下手なので、控えさせていただきますが

とにかくここまで徹底してUXを設計されると、こちらもその気になってくるというか

普段使っている言葉が使いやすいので、その言葉で言わせていただくと、エンドユーザー(今回で言うコーヒーを飲んでいる我々)がクリエイターの創意工夫に気づき始めると、エンドユーザー側から工夫を探し始めるんですよね


ワンピースの作者が、伏線を大量に埋め込んでいるから、読者が「これも実は伏線なのでは?」と、作者が気にしてもいないところを気にしてしまうように

私もここまで徹底したマシンやグラス、中川さんの話を聞くと、出されたコーヒーも必死に味わおうとするんですよ。


正直私はコーヒーは眠気覚ましの意味で飲んでいることがほとんどなので、中川さんの淹れたコーヒーがドトールで出されても、何も気づかずPC作業のお供としてゴクゴク飲んでるかもしれません。

逆に中川さんが淹れたコーヒーが私の見えないところで、スッとドトールのコーヒーと入れ替えられても、メチャクチャ味わって飲むと思います。

そして飲んだあとに中川さんから「実は今出したのはドトールのコーヒーで…」とネタバラシされても、中川さんのコーヒーのほうが、圧倒的に美味しいと感じていると思います。


多分ドトールも、スタバも相当拘って、美味しいコーヒーを出してるんですよ。コンビニの1L100円のアイスコーヒーより美味しいのは確かだし。

ただ、普段コーヒーを飲むときは、ラベルに書いてあるこだわりや歴史などを全く読まずに飲んでいます。

今回の経験では、中川さんから「味わってください」と言われたわけではなく、コーヒーやツールへのこだわりや洗練された空間を体験したことで、私からコーヒーから生まれる体験を取りにいこうとしてたんですよね。


普段そんなことしないのに、香りを嗅いでみたり

普段どおりグッと飲んでみたり

ちょっと口に溜めてみたり

ちょっと冷ましてみたり


コーヒー豆も海外と直接やり取りしている一級品なので、勿論美味しいのですが、そのコーヒーの美味しさを100%味わえるUXを設計していた現場を見れて、「これがUXを設計するということかぁ」とメチャクチャ感銘を受けました。

偉そうに「俺はハイブランドだから、センスの良い奴らにしか理解されないんだぜ。悔しかったら理解してみろよ」みたいな感じではなく、全く違和感や不信感を感じさせずに、エンドユーザー自ら飛び込ませるUX。凄まじい。

五感+時間軸にまで訴えるUX

コーヒーツアーの中でも、実際に今からミルで砕くという豆を見せてくれて、目の前で砕いたり、

香りを嗅ぎやすいように、口が大きくて鼻先まで入るワイングラスでアイスコーヒーが出てきたり

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よく分からん形の入れ物でシロップが出てきたり(上記写真のちょうど今注いでいる入れ物)


五感で楽しめる工夫がされていて楽しかったのですが、過去と未来の時間軸でも楽しめる工夫がなされていて、すげえなぁと思ってました。


アイスコーヒーでも、氷が溶ける毎に風味が変わるようになっていたり、

1個前に出されたコーヒーとの比較だったり

メチャクチャ遡ってコーヒーの歴史の話だったり

逆に将来的にコーヒーを個人で楽しむにはどうしたら良いかだったり


今丁度スタバでコーヒー飲みながらこの記事を書いているんですが、スタバのコーヒーも思わずちょっと口に溜めてみましたもんね

あのイベントで終わらず、将来的にもUXが影響し続けてるのは驚きです。

まずはプロダクトへの圧倒的な理解

コーヒーだけにとどまらず、アイスクリームやシロップなどコーヒーの美味しさを引き出すことに全集中したメニューを堪能し、コーヒーツアーが終了したあとは、実際にキッチンの方に入らせていただき、色々マシンを見せてもらいながら、中川さんと雑談しました。


中川さん自体、もともとカメラマンなどをやっていたそうですが、アマナへの入社をきっかけにコーヒー1本に絞ったそう。

もともとアマナ入社前から、休みがあればコーヒー豆の産地へ行くほどのコーヒー好きだったそうです。


コーヒーの種類や特徴、歴史などにメチャクチャ詳しいのは勿論なんですが、私が特に印象深かったのは、日常生活におけるコーヒーのポジションへの理解です。

「寿司やワインだと、元々高級で特別なときに食べるイメージがあるが、コーヒーは普段から色んな人に親しまれている」
「『ワイン飲みに行こう』と言われるとすごく身構えるが、『コーヒー飲みに行こう』と言われると、気持ち楽に来てくれるので、逆にコーヒーを徹底的に探求すれば、そこのギャップがインパクトになるのでは無いかと思った」

コーヒー自体、日常生活での接点が多く、観察がしやすいものではありますが、それも含めて自分が扱う商品に対しての深い知識のみならず、人に与える影響や確立しているポジションまでも言語化できているのが、ここまでのUXを生み出す源なんだろうなと思います。


というか、私が誘われたときに、すげー油断して行ったのも、勝手にレベル感を想像してスタバで手土産買ったのも、UXの一部だったってことですよね。恐ろしい…

次に組織の理解

とはいえ、個人がコーヒーにいくら詳しく、熱量が高かったとしても、個人でバカ高いコーヒードリップマシンを買うことは容易ではないでしょうし、ましてやそのマシンを中心に空間を設計し直すなど、不可能に近いことです。


その裏には株式会社アマナという組織としてのコーヒーへの理解が隠れていました。


中川さんは社長直轄でコーヒークリエイターをやっているそうです。

なので、会社全体に自分の活動を大きく示すことができ、スピード感を持って動いていくことができるそう。

更には新入社員には新卒、中途に関わらず、研修に「コーヒー研修」が入っており、全社員が一度は中川さんのコーヒーを飲めるように設計されていたのでした。


クリエイティブという分野は結果が数字で出にくく、事業拡大を狙う会社からするととても出資のしづらいところです。

さらに、カメラマンやアーティスト、ミュージシャンなどといった、メジャーなクリエイターならまだしも、「コーヒークリエイター」という異色の肩書きで理解を得るのには相当の苦労があったんだろうと思います。


それを理解して今出資している企業、経営者、そこまでこぎつけた中川さんとその関係者の方々には尊敬の意しかありません。


また、そんな沢山の方々の力や協力を経て、あの1杯のコーヒーを中心としたUXが組まれていると思うと、とんでもない体験をさせてもらったんだなぁとあとからしみじみ思います。

本当に午後休取ってよかった。午後休最高。


まとめ

アマナさんでのとんでもない体験について色々書かせていただきました。


おそらく読んでくれた方の中にはこの経験をしたいと思っている方もいることでしょう。

残念ながら会社の都合上、11月一杯で一時休業になってしまうそうです。


しかし、コロナ禍前は普通にギャラリーカフェとしてコーヒーを販売していたそうで、一般客も購入できたそうですよ。

是非コロナが落ち着いたら行ってみてください。是非経験してみてください。テンション上がりまっせ。

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