『市子』観たよ

『市子』

 見てから1週間ほど経ってしまったけれど。(公開してなかったので2.3週間経ってしまったけれど。)

 とかく杉咲花。花さん……。

 「うちは市子や」
 市子は離婚後300日のあれで無戸籍の人間になった。障がいをもって生まれた妹月子は戸籍を持っているが寝たきりなので市子は月子のふりをして年齢を偽り学校にいくようになる。それも母親に言われたからだ。
 普通に、ただ生きるために、結果的に市子は4人の人間を殺した。義父、月子、北くん、SNSで繋がった死(志)望の女。
 義父を殺したのをみてた自称市子(月子)のヒーロー北くんは義父の遺体を線路におくよう言って手伝った。北くんもストーカーとして結構やばいやつだけど、一緒に犯罪者になったっていう罪の繋がりでもっと歪んだように思う。罪の繋がりねぇ、、、どろついてて設定としてはめちゃくちゃ好き。(…フィクションに限るよ……!!!)北くんの立場を思うと、長谷川くんの前から姿を消した市子が頼ったのが北くんってそりゃ北くんもヒーロー気取りになっちゃうよね〜〜と少し同情もする。市子にとって北くんは邪魔な存在だったんだね。ストーカーとか自意識過剰なのがキモイとかではなく、月子として見てくる北くんが邪魔だった。ようやく市子として生きていけそうなのに北くんは過去を蒸し返してくる。罪がどうとかよりも月子としての過去の人生。だって市子は月子じゃなくて市子。市子として生きるためにその罪は必要なことだった。無戸籍になりたくてなったんじゃない、ただ普通に生きたいだけ。愉快犯ではなくてそうせざるを得なかった市子。市子の選択肢はものすごく、狭かったんだね。
 それでも、長谷川くんを本当に愛して、一緒にいたいと思えた。だからこそ、長谷川くんの前から姿を消した。永遠に市子を失って消えていく。好きじゃなかったなら、きっと長谷川くんも殺さなきゃならない対象だったと思うんだ。だから、愛をもってせめてもの救いだったと思うよ。
 市子を肯定はできないけど同情はする。自分は長谷川くんみたいに必死になれるだろうか。人を殺したのを知ってどこまで寛容になれるだろう。悲劇な過去を背負った結果だから市子だって本当は殺しなんてしたくないと思う。思いたい。それとももう感情がないのかな。どうしようもなくてそっちに感情が湧かないのかもしれない。月子を殺したときは
どうしようもなく静かにゆっくり淡々と。お母さんが「ありがと」といって皿洗いをしてるあの空間。あのシーンて結構強いものだと思う。でもうまく言葉にできない。義父を刺したときは泣いた。今まで募ってきた感情、生き方、自分自身が全否定されていく今が悔しくて殺す選択になる人生に泣いてるような。北くんらを殺すとき、というか北くんを、一緒に殺すときはどんなんだったんだろう。絶対抵抗しただろうって思う。じゃあどうやって海に落ちてったんだろう。気になる。まぁそこは置いといて。殺人、その選択肢しかなかった、それならばただ抱きしめてあげたい、という長谷川くんの立場には自然となっていくのだと思う。
 杉咲花はこういう役がすごくあってるのかな。すごいよかった。あらためて、すごい俳優だ。大好き。また演技みたい。

 

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