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ロビー・グロスマン、衝撃のブレイク

ロビー・グロスマンはどうやら本物かもしれない。

そう気づいたのは確か開幕したてのアストロズ戦の後、ファンタジーベースボールでなんとなくグロスマンをその日を凌ぐために獲得して少し経ってからである。

30歳の外野手は、2019年にはOPS.682という物足りない成績を残し、再契約の372.5万ドルすらも割高に感じられる選手だった。
だが今年のグロスマンはそんな懐疑の声を打ち消すかのように打ち続け、OPSは1.0を超え、fWARは162試合あった昨年の数字を既に追い越している。

昨年の様子だけでは誰しも予期できなかったであろうグロスマンのブレイクについて今回は扱っていく。


要因1 : 強い打球が打てるようになった

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既に定番の物差しとなった打球初速が、グロスマンのブレイクのほとんど全てを物語ってくれている。

元々、86~87mph程度に止まっていた打球初速が、今年は平均を上回る89.3mphまでアップしたことがブレイクの主な要因であることは間違いない。


またローンチアングルも1215.4と上昇している。

これは全安打中のローンチアングルと色でハードヒット%を示した直近2年のヒストグラムだ。
これらを見ると分かる通り、2019年に比べて速い打球が出るホットスポットがローンチアングルが高いところに移っている。

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一般的に、打球初速とローンチアングルはトレードオフの関係にあり、ローンチアングルが低いほど速い打球も打ちやすい。
したがってグロスマンがローンチアングルを上昇させつつ、打球初速も上げたということは2マイル弱の上げ幅でもなかなか難しいことだったということだ。


要因2 : アプローチに変化

グロスマンは元来優れた選球眼で知られていた選手だ。ほとんど選球眼の1ツールの選手だったと言っても良い。

だが、今年のグロスマンの打席の中でのアプローチは例年と違っているように見受けられる。
簡潔にいうと、慎重なアプローチから大胆なアプローチへと変わっている。

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<用語>
Swing% → 全投球の内のスイング割合
Zone Swing% → ストライクゾーン内のスイング割合
Chase% → ボール球に対するスイング割合
Meatball Swing% → 甘い球に対するスイング割合

baseball savantの数字をまとめたこの表によれば、グロスマンは全体的に(ボール、ストライクを問わず)積極的にスイングするようになった
特に甘く来た球に対してのアプローチは劇的に変わっている。

だが、ここで面白いと思ったのは、積極的なアプローチに移行してもなお初球スイング率はむしろ下がっていて、武器である四球奪取の能力は相変わらず高いというところだ。
グロスマンが強くボールを叩けるようになり、それを警戒したのかストライクゾーンに来る球自体も減っており、グロスマンはより自分の選球眼を活かせるようになっているのかもしれない。


要因3 : 引っ張り打球の増加

最後の上げる要因は引っ張り志向の打撃に変えたということである。

2019年の打球チャート

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2020年の打球チャート

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以上の2つのチャートを見比べてもらえば分かる通り、グロスマンはガンガン打球を引っ張るようになっている。


去年だかにマーク・キャナのブレイクについて取り上げた時に、偶然CLEのフランシスコ・リンドーアとホセ・ラミレスが打球を引っ張るようにしたことが活躍に繋がっているという主旨の記事を見つけた。

同記事内によれば、流し打ちやセンター返しに比べて引っ張った方がホームランにしやすく、また速い打球を打ちやすいことを利用して、リンドーアとラミレスは体格差のハンディを埋めているという。

グロスマンも決して体格に恵まれているわけではなく、パワーもないタイプの打者だ。
打球をより多く引っ張り方向に打ち出すことで、自身のパワーを最大化するのは理に適った選択だったと言えるだろう。


終わりに

今回はあくまで数字のみでブレイクを語ったが、グロスマンのスイングの変化などを解き明かそうとするのもまた面白いかもしれない。

開幕前は、クリス・デービスがフルタイムDHとして復帰する可能性もあったため、”よくて対右のプラトーン”以上の存在ではなかったグロスマンだが、蓋を開けてみればチームの誰よりもWARを稼ぐ選手はこのグロスマンだった。

覚醒した打撃のみならず、昨年ゴールドグラブファイナリストに残った堅実な守備も衰えておらず、また既に4盗塁も決めるなど走塁貢献も抜群だ。
もし、162試合あるシーズンでこの調子を維持できたなら、20-20を達成していたかもしれない。その上アプローチも素晴らしいのだから、FA市場でマイケル・ブラントリー(HOU)に見劣りしない契約を得ていた可能性だってあっただろう。

ただ嘆いても仕方がない。グロスマンには是非このまま調子を維持して、HOUを打ち破っての地区優勝までチームを導いてくれることに期待である。


また、最後にはなるが、

「セス・ブラウンで事足りるし、3.75Mは高すぎ」と公言して憚らなかった私のことをどうか許してほしい。


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