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【OAK】マット・チャップマンをTORにトレード

ついにひとつの時代が終焉を迎えました。先日のマット・オルソンに引き続き、マット・チャップマンの放出を完了し、”2人のマット”が率いたA'sは跡形もなく消え去りそうです。

総括

OAK獲得
ガンナー・ホグランド(Gunnar Hoglund) RHP
ケビン・スミス(Kevin Smith) 3B/MLB
ザック・ローグ(Zach Logue) LHP/AAA
カービー・スニード(Kirby Snead) LHP/MLB

TOR獲得
マット・チャップマン(Matt Chapman) 3B

大出血なしで3Bのグレードアップに成功したTORと、ハイフロアーな即戦力中心のパッケージでバリューダウン中のチャップマンを売り切ったA'sの両方にメリットが見込める、非常にフェアなトレードだと感じました。

前のバシットとオルソンのトレードでは、MLBに既達のタレントがパシェのみとプロスペクト中心のパッケージを組んでいました。ハイフロアーかつデビュー済みのタレントを好んで獲得する(そしてそのためにアンダーペイを吞みやすい)A'sにとっては珍しく、マイナーデプスの増強に走るトレードが続きましたが、ここでやっとA'sらしいトレードが来ました。

ファイヤーセールを実施してデプスチャートを空にした後に、他球団に食い尽くされた後のFA市場になけなしの資金で乗り込むわけにもいかないため、売りトレードの中で来年のデプスを整備するのはA'sにとっては喫緊の課題だったかと思います。スミス以下3人は来年のチームですぐに出場機会を得られそうな面々ですから、理にかなっています。

そしてMLBレベルのデプス整備をチャップマンで行ったのも納得できるポイントです。チャップマンはここ2年でかなりバリューが落ちていたため、バシットやオルソンにようにプロスペクト中心の妥当なパッケージを引き出すのは難しかったと思います。
デビュー済み、ハイフロアーかつローシーリングとなるとトレードバリューも控え目ですし、チャップマンのようにバリューが落ちていても結果的に、十分な見返りとなる可能性が高いのではないでしょうか。

また、チャップマンは夏場までキープしてバリューを戻してからの方が良いのではという見方もありましたが、オフの間に売り切れて良かったと思います。夏場までの半年間でバウンスバックを果たすよりもむしろ、サポートできる打者がいなくなったことやモチベーション不振などで保有期間をすり減らしていただけの可能性は低くなかったと考えられるからです。

パッケージ全体は、すぐに戦力になりそうなスミス/ローグ/スニードの3人と、即戦力タイプと言われながら大きなアップサイドを持つホグランドとの組み合わせで、非常にバランスが取れていると感じました。ネームバリューはなくともソリッドだと思います。
一応、メインピースは2021ドラフト1巡目のホグランドですが、目下TJ手術からのリハビリ中であり、健康状態など不確定要素も多いプロスペクトです。オレルビス・マルティネスやジョーダン・グロシャンズなど、フィットしそうなプロスペクトは他にもいたでしょうが、そういったグレードの高い選手がメインであればここまで量が充実したパッケージにはならなかったでしょう。
その点では、ホグランドの健康状態を含めた今後のキャリアが、今回のトレードの成否を分けそうです。

TORに関して言えば、バリューの落ちているチャップマンをビッグネームのプロスペクト無しで獲得できたのは大成功と呼べる成果でしょう。汎用性の高いスミスや、ブルペンで使えそうなスニードらの放出はデプスに響きそうなものですが、これといった痛手でもなさそうなあたり、流石の層の厚さだと思いました。チャップマンの補強によって、プロスペクト層もサラリースペースもほとんど傷を負っていないため、今後の補強にも十分期待できそうです。

個人的には、仕方がないとはいえチャップマンの対価がこれとは少し寂しい気持ちもあります。ただ、これはチャップマンを勝負期に酷使してきた代償のような気もします。フロントも苦渋の決断だったでしょうが、ベターな決断に踏み切ってくれたと思います。

交換要員について

ガンナー・ホグランド

前のトレードで獲得したJT ギンに似たプロフィール(高校で1巡目指名を拒否してからプロ入り、ストライクスローワー)の持ち主。2021ドラフトではTJ手術さえ受けていなければ、ジャック・ライターに次ぐ2番手カレッジPとなっていた可能性もあったと思います。極度のストライクスローワーながら、最速96mphとパワー面でも申し分なく、スライダーとチェンジアップは打者を制圧するに足るレパートリー。力感のないクリーンなデリバリーと大柄な体躯を含めカタログスペックだけで見たら、お嫁さんにしたいくらい大好きなピッチングプロスペクトですが、健康面だけが心配。目下のTJリハビリもそうですが、高校時代からも故障とは無縁というわけではなく、数多のピッチングプロスペクトが故障沼にハマっているA'sで果たしてまともに投げられるのかという。うーん。。

ケビン・スミス

20-20のポテンシャルを秘めるSS。コンタクトスキルを欠き、2019年の初のAAでは大不振に陥りバリューを下げましたが、昨年は見事にバウンスバック。打球を巧みにスイートスポットに入れることができるフライ系打者で、20HR以上打てるポテンシャルが見込めそうです。三振こそ多いもののゾーン理解は〇。SS守備もプラスで昨年はAAAでFRAA8.5を記録しましたが、A'sには名手ニック・アレンがいるためそのままチャップマンの後釜を担うことになるでしょう。

ザック・ローグ

スタッツ先行型の技巧派左腕。プラスピッチと呼べる球種は無いものの、デセプションの効いたスリークォーターのフォームから、コマンドよくカッターとチェンジアップを散らします。タイプ的にはBALのザック・ラウザーあたりに近いかと思いますが、ローグの場合はこの一年で一気に三振を奪えるようになった点が興味深いです。今春から先発ローテ入りのチャンスを与えられるのではないかと思います。

カービー・スニード

即戦力の左のリリーバー。低めのアングルからシンカーとスライダーを投じるスタイルはアーロン・バマーそっくり。三振奪取力はもちろんのこと、プロ入り後236.1イニングで被弾わずか11なのも魅力的。ブルペンは人材不足が顕著のため、開幕ブルペンの可能性は非常に高いでしょう。AJ パクとはフロリダ大でチームメイト。


ダブル・マット時代の終焉

あれだけ希望に満ちていた2018年が、昨日のことのように思い出せます。オルソンとチャップマンという2人の若い生え抜きプレイヤーを擁し、周囲の予想より早くプレーオフに到達。その年のオフには新球場計画も発表され、誰もがチームの明るい前途を信じて疑っていなかったと思います。
しかし、早くも2022年になり、オルソンとチャップマンはチームを去り、2023年に開場予定だった新球場の建設予定地にはまだ一本のスコップも入っていません。

感情を表に出さない選手が多いチームの中で、時には感情的にリーダーシップを発揮してきたチャップマンは、”古巣”に恨み節をこぼすわけでもなくこんなコメントを残していました。

彼らがオークランドで新しい球場を手に入れて、そして長期的にオークランドに留まれる選手たちでそこ(新球場)を埋められる可能性はまだあると思う。A'sが他のチームのように同じ機会を持つに値する素晴らしい組織だと思うから、僕はそう望んでいる。

今年のトレードできた選手が主力になっているであろう次の勝負期に期待しましょう。

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