見出し画像

きみを照らす炎~月組公演「Grande TAKARAZUKA 110!」感想

続きましてショー「Grande TAKARAZUKA 110!」の感想を。
お芝居「Eternal Voice」の感想はこちらに。

もそもそしていたら、5分前から映像が出始める。
「月」が前に来た時に、撮影のために一斉にスマホがあがる(私含む)のが地味におもしろかった思い出。

スポットライトの下へ

さあ一方のショー"GRANDE TAKARAZUKA 110!"。
レビュー。ホント初見の衝撃が大きすぎた。
なんせ手癖でつい向けてしまうあたりの(特に雪組時代のだいたいの)位置には、一切、彩海せらさんの姿が見えないのである。

あのとんでもないバウ主演を経たあみちゃんは。
一回りも二回りも大きくなって、堂々と、しかも以前より確実に自然体で、スポットライトのあてられる位置へとあがっていた。
なんかね、ほんとね、ものすごくうれしかったよ。トップスターを囲んでの少人数ピックアップに、全部あみちゃんが入っていたことが。
その抽出された、どこの場面においても、いろんな色彩で、ばちばちに彩海せらさんが光り輝いて、もはや眩いばかりだったことが。

「当然俺のものですよ」

X上でも何回ももう呟いてるけど、何度でもいう。
今回のあみちゃんは、銀橋を、我が物顔で堂々と渡りあるく
私にとってこのショー最初にして最大の衝撃は、アヴァンギャルドでやってきた。プロローグの歌い継ぎに入ってることにニコニコして、いい声だなあと堪能して、その前のマスカレードにあみちゃんは出ていなかったので、まあ次の場面かなあ、とか、のんきに思っていた。
思っていて。
次の場面を始めるために、ひとりのスターさんが、下手のすっぽんから銀橋へと向かってせり上がった。
客席へ見せる後姿が、なんともバチッと堂々としている。

「ああ鳳月さんよね、そうよね」

……冗談でもなんでもなく、そのときオペラを構えていなかった私は本気でそう思った。
それくらい、2階席後方から見るその後姿が、堂々として立派だったがゆえに。
そうやって、見えていて、振り向いて、びかびか衣装を光らせながら、歌い出したら、あみちゃんの声が聞こえるではないか。
は!?
って反射みたいにオペラを上げたら、確かにそれは彩海せらさんだった。
ばっちばちにスポットライトをはじき返して、細かいビートを刻み刻み、あまりに堂々とひとりで銀橋をわたりゆく、彩海せらさんが、いた。

オペラが一切下ろせなくなった。
自分の初日から楽日まで、ずうっとオペラで追い続けることになった場面だった。

だってあまりにも、あみちゃんがあたりまえみたいな顔をしていて。
下手にライトが弾かれるとこっちの目が痛くなるくらいの不思議なアシンメトリーにビカビカした衣装で、ビートの速いナンバーの中で、誰よりばちばちに眩しいのは、間違いなくあみちゃん自身だった。
なんだそれ、と思った。なんで、どうして、と思った。
何が、どこが抹茶ラテだ。これがあみちゃんの、初の単独の銀橋渡りだなんてあまりにも信じ難かった。がっちりキメた表情の彩海せらさんは、さも当然のように、まるで自分のための道であるかのように、光る銀橋を歌い踊りあるく。
意味が分からなかった。
これまで知らなかった、あたらしい彩海せらさんの姿がそこにはあった。

…なのに。
なのに衝撃にはかわいい続きがあるのだ。
単独で自分だけスポットライト当たって登場だから、ピカピカさせたい!って、あみちゃんは、アクセサリーとして「望海さんから形見分けでもらった指輪」を選んだ、というのである。
ほんとそういうとこずるい。
自分が生まれて初めて「場面始まりに単独で銀橋を渡る」という場面で、そういうチョイスをする、というところが、あまりにもニクいんだよなあ、と、軽率にもだえ苦しんでしまいながらその話聞いてからずっと思ってました。いまだに何の時に望海さんがつけてた指輪だったのかは判別できていない。ざんねん。

視線を交わせる場所に

アヴァンギャルドで、後半に鳳月さんと。
雪月ではピックアップで、月城さんと。

お化粧を見てもらっていたというおふたりと、あみちゃんはアイコンタクトを交わす。トップさんと、二番手さんと、そうすることが、可能な位置にいる。
ぜんぶがそうであることに、そして(無論ご本人の内心はわからないけれど)何の気後れすることもなく、あみちゃんは堂々としている。
ひとりでも、全体でも。
溌剌と、そこに自分があることを、光を放ち続けて教えてくれる。

こんなにも変わるのか、と思った。
前回の「万華鏡」から、今回の「グラタカ」まで。ここまで彼女が変貌するきっかけなんて、絶対にひとつしかない。
バウ公演「Golden Dead Schiele」。
あのほんのわずか、2週間弱の日々が。
こんなにも彩海せらを強く大きく凛々しくしたのだ、と思った。
「あみちゃんが"私が真ん中です"の顔で歌うようになった」
観劇前に拝見していた感想の、まさにその通りの光景がずっと、ショーの間じゅう、彩海せらさんを追う私のオペラの先には広がっていた。
それがあまりにおもしろくて、うれしくて、楽しくて。
ずっとずっと、彼女を追い続けるのをとうとう、最後まで全然止められなかった。

続いてゆけ、

アヴァンギャルドでもうとっくに私の頭はパンクしていたのに、さらにもうひと場面、彩海せらさんは場面始まりで銀橋に登場する。
Moon River
またしてもここの待機中の背中をちなつさんだと油断した私、なんか色々ホントに申し訳ない。振り向いたらちょっと待ってよまたあみちゃんだー!?!?(度肝を抜かれる)

アヴァンギャルドではバッキバキに踊っていたあみちゃん、翻ってこのムーンリバーではあまりにも悠然としている。
ほんと、余裕があり過ぎて、どんどん、公演の後半になればなるほど、あみちゃんが全身から放つキラキラも、歌の深みも増していった。あたりまえのように会場全体を己がものとして、楽しそうに、ゆるやかな笑みを浮かべてひろく全体を見渡すあみちゃんの姿が、あまりにも立派でカッコよくて、何度も何度もしびれた。
なんせ、今回、ここ以外ではあまり思わなかったのだけれども。
ここの彩海せらさんは、ふとした瞬間に突然、ものすごい濃度で望海風斗さんが、そして朝美絢さんがにじんで見えるのだ。
歌詞を丁寧に、客席へ良い声で届けてゆくやりかた。すこしだけ、下手から上手に向かってうつむきがちに顔を振った瞬間の伏し目。顎から耳、首筋にかけて客席に見える角度。ズボンのラインが汚くならないように、細心の注意を(できるだけさりげなく)払ったうえで、スイッとポケットに突っ込まれる片手の形。
スポットライトがぱるくんに移って、上手に向かってハケていく、泰然自若の歩きぶり。はっきりしたライトはもう当たらないうす暗がりの中で、すうっと、姿をこちら側に焼き付けていなくなっていく、その、去り際。
泣きたくなるほど丁寧で、じんとするほど、こまやかで。その輪郭には、私が確かに過去に見ていた素敵なスターさんたちの後姿がにじんで。
きっとどこの映像にも残らないだろう、あの短い時間を、
ずっと見続けていられた公演期間は、すごくしあわせだったなあ、と、思う。


まだフィナーレ黒燕尾…とかパレード階段単独降り…!とか、書けそうなところもあるのですが、もう案の定のとんでもない長さになってきてしまったので、今回はこのあたりでおしまいにします。
次はブラフ。風間さんの東上公演。
ばっちばちのおだあみを、見られるのを楽しみにしております…!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?