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第2回高周期ジュリア集合選手権

どうも、108Hassiumです。

複素数たちがさまざまな関数のジュリア集合における周期を競い合う高周期ジュリア集合選手権の第2回大会を開催します。

競技の詳細や前提知識は第1回・第0回を参照してください。(画像だけを流し見したい人は読まなくてもOKです)

☟第1回

☟第0回

z^4+c

☝z^4+cのマンデルブロ集合(x=-2~2,y=-2~2)

本大会最初の競技は、マルチブロ系の$${z^4+c}$$です。

この競技の参加条件は「実部と虚部の小数点以下は2桁まで、実部は-2~2、虚部は0~2」とします。

今大会以降は解説する内容が少ないので、文章量は少なめになります。

5位:-0.61+0.38i(57周期)

-0.61+0.38iが57周期で5位にランクイン。

前回まで必ず載せていた軌道図ですが、作成の面倒臭さに対して存在する重要性が釣り合わないと感じたので廃止しました。

4位:-0.89+0.19i(60周期)

60周期の-0.89+0.19iが4位にランクイン。

前回も説明したことですが、$${z^k+c}$$のジュリア集合は$${k}$$回回転対称になるようです。

3位:-0.04+0.71i(97周期)

97周期の-0.04+0.71iが3位にランクイン。

私は素数自体には特に美しいといった感情は抱かないタイプの人間ですが、周期の値が大きめの素数だとなんだかちょっとうれしくなります。

2位:-0.76+0.26i(105周期)

-0.76+0.26iが105周期で2位にランクイン。

2位で初めて100周期を超えるという結果は、第0回から数えて3例目(この記事内全部を含めると5例)になります。

1位:0.63+0.85i(120周期)

シンメトリックに並んだ渦巻きが美しい0.63+0.85iが、120周期で1位となりました。

c(z^3/3-z)

c(z^3/3-z)のマンデルブロ集合(x=-4~4,y=-4~4)

続いての競技は$${c(\frac{z^3}{3}-z)}$$です。

こちらは前回「マンデルブロ集合が虚軸について左右対称なら$${c=±x+yi}$$のジュリア集合は同じ周期を持つ」という予想の反例として、画像のみを掲載したものです。

例えば、$${(0.5+0.9i)(\frac{z^3}{3}-z)}$$のジュリア集合は2つの臨界点に対応する2個の3周期サイクルを持ちます。

☝黄、青、紫がz_0=1に対応する3周期サイクルに収束する領域で、
白い領域がz_0=-1の3周期サイクルに収束する領域。

一方、0.5+0.9iと対称な位置にある-0.5+0.9iから生成されるジュリア集合は6周期サイクルを1個だけ持ちます。

☝(-0.5+0.9i)(z^3/3-z)のジュリア集合(6周期)

このように$${c=-x+yi(x>0)}$$が$${c=x+yi}$$の2倍の周期になることがよくあるようですが、必ずしもそうなるわけではないようで法則性は謎です。

☝青が奇数周期の領域、赤が偶数の領域

というわけで、今回の参加条件は「実部と虚部の小数点以下は2桁、実部は-3~3、虚部は0~2」とし、$${z_0=1}$$の周期のみを記録として扱うものとしました。

5位:2.12+0.13i、-2.12+0.13i(104周期)

☝c=2.12+0.13i
☝c=-2.12+0.13i

2.12+0.13iと-2.12+0.13iが、104周期で同率5位にランクイン。

上の画像だとちょっとわかりにくいですが、どちらのジュリア集合にも白い領域($${z_0=-1}$$の方のサイクルに収束する領域)があるものの、その位置関係が異なっています。

☝±2.12+0.13iの白い領域の位置関係

4位:0.76+0.65i(111周期)

グラデーションが見事な0.76+0.65iが111周期で4位にランクイン。

色の塗り方は数パターンの中から適当に選んでいるだけなので、このような綺麗な色合いになるのはほぼ奇跡です。

3位:1.51+0.5i(158周期)

1.51+0.5iが158周期で3位にランクイン。

158=2×79なのですが、79といえば第0回の$${z^2+0.24+0.51i}$$も79周期でした。

☝z^2+0.24+0.51iのジュリア集合(79周期)

この2つを見比べてみるとそっくりな気がするのですが、何か関係はあるのでしょうか?

ちなみに、$${(2.02+i)(z^2-z)}$$のジュリア集合も79周期のよく似た形になります。

☝(2.02+i)(z^2-z)のジュリア集合(79周期)

2位:-0.76+0.65i(222周期)

-0.76+0.65iが222周期で2位にランクイン。

こちらは4位の0.76+0.65iと対称な位置の値で、最初の説明の±0.5+0.9iと同じくマイナス側の周期が2倍になるパターンです。

1位:0.01+i、-0.01+i(314周期)

☝c=0.01+i
☝c=-0.01+i

1位に輝いたのは、314周期の±0.01+i。

分岐数は大会史上最多の314分岐で、もはや1本ずつの枝を視認するのは不可能です。(ちなみに2位は前回の$${\frac{1.18+0.96i}{z^2-1}+1}$$の253分岐)

c(4/z-1/(z-3))

☝c(4/z-1/(z-3))のマンデルブロ集合(x=-0.5~1.5,y=-1~1)

$${f(x)=c(\frac{4}{x}-\frac{1}{x-3})}$$と$${f(f(x))}$$のグラフは、以下のような形になっています。

☝f(x)(赤)とf(f(x))(緑)のグラフ

実はこの関数、以下の記事であえて触れなかった「$${f(z)}$$は-1次で$${f(f(z))}$$は1次」という性質を持つ関数です。

1次の有理関数は2次以上と比べてちょっとだけ面倒な性質があるのですが、$${c(\frac{4}{z}-\frac{1}{z-3})}$$はその性質が現れないようなので今までと同様に扱うことができます。

次数とは特に関係ないのですが、この関数のマンデルブロ集合はちょっと小さ目なので、今回の参加条件は「実部と虚部の小数点以下は2桁、実部は-0.5~1.5、虚部は0~1」と狭目になりました。

なお、$${c(\frac{4}{z}-\frac{1}{z-3})}$$の臨界点は2と6の2点がありますが、$${z_0=6}$$の場合のマンデルブロ集合は原点からかなり離れた位置に壁状に広がっているようです。

☝c(4/z-1/(z-3))のマンデルブロ集合(z_0=6,x=0~20,y=0~20)

この場合の周期を調べつくすのはあまりにも手間がかかるので、今回は$${z_0=2}$$のときの周期のみを集計することにしました。

5位:-0.05+0.04i(69周期)

-0.05+0.04iが69周期で5位にランクイン。

「まだ何の生物かわからない頃の胎児」みたいでちょっと不気味ですね。

4位:0.24+0.49i(70周期)

0.24+0.49iが70周期で4位にランクイン。

3位:0.05+0.39i(89周期)

0.05+0.39iが89周期で3位にランクイン。

高周期ジュリア集合選手権はマンデルブロ集合が大きいほど大きな周期が出やすい傾向がある(気がする)のですが、この競技はマンデルブロ集合が小さい割に大きめの記録が出るようです。

2位:0.32+0.5i(120周期)

0.32+0.5iが120周期で2位にランクイン。

1位:-0.08+0.15i(222周期)

栄えある第1位は、222周期の-0.08+0.15i。

マンデルブロ集合の小ささからは想像もつかない激戦となりました。

z^2+c/d

続いての競技は、ダブルス競技の$${z^2+\frac{c}{d}}$$。

参加条件は以下の通りとなります。

  • $${c,d}$$の実部と虚部は整数

  • $${c}$$の実部と虚部は-9~9

  • $${d}$$の実部は0~9

  • $${d}$$の虚部は実部以上9以下

やたら複雑になっているのはもちろん重複対策なのですが、これでも被りを排除しきれず下位では同じ形のジュリア集合がたくさん生成されてしまいました。

☝左上から(2-i)/(2+3i)、(-1+3i)/(1+5i)、(-4+3i)/(4+7i)、
(4-2i)/(4+6i)、5/(1+8i)、(-5+5i)/(7+9i)、(6-3i)/(6+9i)

5位:(3-6i)/(5+8i) (40周期)

$${\frac{3-6i}{5+8i}}$$が40周期で5位にランクイン。

$${\frac{c}{d}}$$は1つの定数なので、生成されるジュリア集合は第0回で扱った$${z^2+c}$$のものと同じような形になります。

4位:(-6-6i)/(4+7i) (48周期)

$${\frac{-6-6i}{4+7i}}$$が48周期で4位にランクイン。

3位:(-4+4i)/(2+9i) (84周期)

$${\frac{-4+4i}{2+9i}}$$が84周期で3位にランクイン。

2位:(-2+7i)/(8+9i) (108周期)

3位と瓜二つの$${\frac{-2+7i}{8+9i}}$$が、108周期で2位にランクイン。

$${\frac{-4+4i}{2+9i}}$$の周期因子は4、3、7でしたが、こっちは4、3、9です。

1位:(5-2i)/(6+7i) (2352周期)

$${\frac{5-2i}{6+7i}}$$が、2位に20倍を超える大差をつけて2352周期で1位を獲得。

競技自体は第0回の二番煎じでしたが、最終的な結果は今までに類を見ない大インフレで締め括られました。

z^3/3-z^2/2+c

今大会の最後を飾るのは、$${\frac{z^3}{3}-\frac{z^2}{2}+c}$$です。

この関数は0と1という二つの臨界点を持ち、それぞれに対応するマンデルブロ集合は以下の通りです。

☝z^3/3-z^2/2+cのマンデルブロ集合(z_0=0,x=-2~2,y=-2~2)
☝z^3/3-z^2/2+cのマンデルブロ集合(z_0=1,x=-2~2,y=-2~2)
☝z^3/3-z^2/2+cのマンデルブロ集合(z_0=0,1の重ね合わせ)

よく見ると2つのマンデルブロ集合は同じ形をしていて、計算してみると$${x=\frac{7}{12}}$$を中心にして対称な位置関係になっています。

ということは$${z_0=0,c=x+yi}$$と$${z_0=1,c=\frac{7}{12}-x+yi}$$は同じ周期になるのですが、$${x=\frac{7}{12}}$$は有限小数で表せない数なのでこの対称性による結果被りは生じず、2つの初期値による競技は異なった結果になることが期待できます。(前回の$${\text{con}(z)^2+c}$$の説明と同じ理屈です)

ということで、この競技はチーム対抗戦とし、$${z_0=0}$$チームと$${z_0=1}$$チームの2陣営に1位の座を奪い合っていただきます。(各選手を一人ずつどちらか一方のチームに振り分けるのではなく、1個の複素数が両方のチームに所属します)

参加条件は「実部と虚部の小数点以下は2桁、実部は-1~2、虚部は0~2」とし、どちらの初期値による記録であるかも明記します。

5位:(1,1.72+0.25i) (90周期)

最初にTOP5入りを果たしたのは、1チームの1.72+0.25i(90周期)。

4位:(0,-0.22+1.05i) (96周期)

続いて、0チームの-0.22+1.05iが96周期で4位にランクイン。

3位:(1,1.53+0.89i) (140周期)

1チームの1.53+0.89iが140周期で3位にランクイン。

ここまでは両チームが交互にランクインしており、この流れのまま1チームが1位の座を勝ち取るのでしょうか?

2位:(1,0.31+1.37i) (176周期)

これまでの流れを打ち破り、1チームが0.31+1.37iが176周期で2位にランクイン。

追い詰められた0チームが大逆転勝利を見せるのか、それとも1チームがTOP3を独占するのか、先の読めない白熱した試合になってまいりました。

1位:(0,-0.54+0.21i)、(1,-0.54+0.21i) (209周期)

0チームの逆転の一手と1チームの三連撃が拮抗し、両チームの-0.54+0.21iが209周期で同率1位となりました。

最後に

本大会の競技は以上で終了となります。

第3回の開催時期は未定ですが、競技の候補は大量にあるのでご期待ください。

それでは、さようなら。

おまけ(特別賞)

「TOP5入りは逃したものの見た目が面白かったもの」などを紹介します。

☝z^4-0.06+0.7iのジュリア集合(1周期)

プログラムの不具合により生じた模様をアレンジしたものです。

☝z^3/3-z^2/2+0.24+1.76iのジュリア集合(z_0=0、12周期)

TOP5には入りませんでしたが、$${\frac{z^3}{3}-\frac{z^2}{2}+c}$$にも2つの初期値が別々のサイクルに収束するときがあります。

☝z^3/3-z^2/2+0.09+1.19iのジュリア集合(z_0=1、14周期)

白黒領域の陰影も他の部分と同様に手動で調整しているのですが、偶然にも見たことない配色になりました。

☝z^3/3-z^2/2-0.54+0.22iのジュリア集合(z_0=0、43周期)

臨界点が複数ある場合、分岐点周りの環状の模様が2つ繋がることがあります。(原理は不明です)

☝z^3/3-z^2/2-0.49+0.8iのジュリア集合(z_0=0、27周期)

上記の-0.54+0.22iのようなのも含めて$${\frac{z^3}{3}-\frac{z^2}{2}+c}$$のジュリア集合には変な形のものが多いのですが、この-0.49+0.8iは特に変な感じがします。

☝次回予告