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分解型複素数とフラクタル

どうも、108Hassiumです。

以下の記事で、「分解型複素数」というものを紹介しました。

この記事では、分解型複素数を使ったフラクタル図形についてもう少しだけ深堀したいと思います。

定義と計算例

分解型複素数は、$${j^2=1}$$を満たす実数でない$${j}$$と2つの実数$${x,y}$$を用いて$${x+yj}$$と表せる数です。

複素数が「$${i^2=-1}$$となる数を実数に追加してできる数」であるのに対し、分解型複素数は$${j^2=1}$$を満たす数を追加したものです。

分解型複素数同士の足し算は複素数と同じく各成分どうしを足すだけですが、掛け算は以下のようになります。

$${(a+bj)(x+yj)=ax+ayj+bxj+byj^2\\=ax+by+(ay+bx)j}$$

複素数の場合は$${(a+bi)(x+iy)=ax-by+(ay+bx)i}$$なので、1か所だけ符号が変わっています。

割り算は以下のようになります。

$${\frac{a+bj}{x+yj}\\=\frac{(a+bj)(x-yj)}{(x+yj)(x-yj)}\\=\frac{ax-by+(-ay+bx)j}{x^2-y^2}}$$

分母の$${x^2-y^2}$$が0になる場合、つまり$${|x|=|y|}$$のときは割り算は定義できません。

マンデルブロ集合

☝z^2+cのマンデルブロ集合

以前の記事でも紹介した、$${z^2+c}$$のマンデルブロ集合です。

暗めの青や黄色の領域は$${z_n}$$が周期数列に収束していく領域で、その他の真っ黒だったりモザイク状だったりする領域が$${z_n}$$がカオス的になる領域です。

☝z^3+cのマンデルブロ集合

$${c}$$と$${z}$$が両方とも実数の場合の$${z^3+c}$$の反復は発散するか固定点に収束するかの2種類の挙動しか存在せず、そういった「実軸上での挙動が面白くない関数」のマンデルブロ集合は面白くない形になることが多いようです。

☝c/(z^2-1)+1のマンデルブロ集合

周期発散という性質は分解型複素数の世界でも同じように機能するようで、$${\frac{c}{z^2-1}+1}$$は0次の有理関数でありながら発散領域のあるマンデルブロ集合が生成されます。

しかし複素数上での周期発散関数の特徴であった網目模様は現れず、収束領域の構造も面白みのないものになってしまいました。

☝c(z+1/(2z^2))のマンデルブロ集合
☝z^2/2+1/(8z)+cのマンデルブロ集合

有理関数のマンデルブロ集合では、前述の「0じゃないのに割り算ができない数」の存在が原因のX字の模様が見られることがあります。

☝(1+0.1j)(z+1/z)+cのマンデルブロ集合(z_0=1)
☝(1+0.1j)(z+1/z)+cのマンデルブロ集合(z_0=-1)
☝(1+0.1j)(z+1/z)+cのマンデルブロ集合(z_0=j)
☝(1+0.1j)(z+1/z)+cのマンデルブロ集合(z_0=-j)

$${d(z+\frac{1}{z})+c}$$という形の関数の臨界点は$${z^2-1=0}$$という方程式の解として求められるのですが、分解型複素数においては$${z=\pm1}$$以外に$${z=\pm j}$$も解になります。

ジュリア集合

☝z^2-0.6+0.8jのジュリア集合
☝z^2-1.3+0.1jのジュリア集合
☝z^2-1.57+0.2jのジュリア集合
☝z^2-1.3のジュリア集合

マンデルブロ集合上で$${c}$$が安定領域にある場合のジュリア集合です。

複素数のときとは異なり、複数個の吸引的サイクルが存在するのが特徴です。(赤、青、緑、黄色はそれぞれ異なるサイクルに収束する初期値を表しています)

☝z^2-1.6+0.1jのジュリア集合とストレンジアトラクター
☝z^2-1.8+0.1jのジュリア集合とストレンジアトラクター

マンデルブロ集合上で$${c}$$が真っ黒な領域にある場合のジュリア集合とストレンジアトラクターです。

☝z^2-0.8+jのジュリア集合とストレンジアトラクター
☝z^2-1.4+0.1jのジュリア集合とストレンジアトラクター
☝z^2-1.5+0.1jのジュリア集合とストレンジアトラクター

$${c}$$がモザイク状の領域にある場合は、$${z_n}$$は線分の上をカオス的に動き回るようです。

その他

☝con(z)^2+cのマンデルブロ集合

※$${\text{con}(x+yj)=x-yj}$$

☝B(z)^2+cのマンデルブロ集合

※$${B(x+yj)=|x|+|y|j}$$

☝z^2+cのブッダブロ
☝z^2+cのアンチブッダブロ

※☟ブッダブロの説明

☝(z^2+c,2z)
☝(z^2-2,2z)
☝(z^2-1.3,2z)