角川映画「里見八犬伝」を観る。
1983年に薬師丸ひろ子、真田広之のダブル主演で大ヒットした角川映画の「里見八犬伝」を観ました。
おそらくテレビで一度くらい観たことがあるかもですが、意識して最初から最後まで観たのは初めて。
脚本は鎌田敏夫、監督は深作欣二という当時の最強コンビです。
最初に原典を理解してから観たので、印象としては原作とはまったく別物であるということです。
そもそも異常とも思える大長編を2時間にまとめるわけですから、ある意味、原典をむりやり短くするより、いっそ別物に仕立てた方が映画としての完成度はあがるかもしれません。
それでも、原典のエピソードをいくつか混ぜ込むあたりは脚本の上手さを感じました。
そもそも、こういう「因縁の説明」「戦士を集める」「巨悪と戦う」というシンプルな構成はキャラクターの魅力が重要なのですが、この点においては、「里見八犬伝」の個々のキャラクターが真田十勇士などの比べて知名度が低いことが弱点だなぁと思いました。例えば真田十勇士の猿飛佐助や霧隠才蔵は忍者であり、ある程度、説明を省いても脳内変換してくれますが、知名度が低いとまずストーリーの流れでそのキャラクターの魅力を説明する必要があります。しかし、それを丁寧にやると、そこの時間をそれなりに割かねばならず、作品の時間が長くなってしまいます。
この問題に対して、この作品では思い切りよく説明を省くという方法に出ていました。あくまでも感情移入させるのは、主役の薬師丸ひろ子演じる静姫と、その恋人役である真田広之演じる犬江親兵衛だけでいい。あとの千葉真一を筆頭とする7人の犬士はざっくりと説明!という決断です。敵役の玉梓は、演じる夏木マリさんの強烈なキャラクターである程度カバー。
なので、最後の対決で真田広之さんを除く7人の犬士が次々と死んでいくのですが全くもって感情移入できません。なんならなんで彼らが命を張っているのかすらわからない。
しかし、これは監督脚本の計算のうちだったと思います。それぞれにキャラクターに一応見せ場はつくりつつ、あくまでもストーリーとして観客に残したいのは真田広之と薬師丸ひろ子のふたりだと。
静姫と犬江親兵衛というキャラクターですらありません。
印象に残すものは、当時角川映画のスターとして確立しかかっていた真田広之と、その地位をまさに不動のものにしようとしていた薬師丸ひろ子のふたりだけという割り切りの凄さです。(悪い意味ではありません!)
「里見八犬伝」というモチーフの上にファンタジーとしてのラブストーリーを軸に据える画期的な映画だと思いました。その意味ではこの映画は里見八犬伝ではありません。真田広之と薬師丸ひろ子の純愛映画なのです。
深作監督は「柳生一族の陰謀」などで、骨太なアクション時代活劇を手がけていますから、里見八犬伝でも同じ手法は使えたと思いますが(柳生一族の陰謀とそっくりなシーンも多数。。)この映画では、あくまでもファンタジーラブストーリーに挑戦したのではないかなとも感じました。(脚本の鎌田先生はその分野は得意中の得意ですから)
作品そのものはテンポもよく、ストーリーも簡潔なのと、なんといってもアクションシーンの痛快さで今の時代でも楽しめました。
またこの映画で見逃せないのは音楽です。
音楽監督にロックバンドのNOBODYを起用し、BOOWYのプロデューサーでも知られる佐久間正英とプログレッシブ・ロックの天才キーボーディスト難波弘之が音楽を提供し、主題歌はジョン・オバニオンを起用。
その洗練された音楽は日本の時代劇でありながら洋画を観ている印象を与えます。
里見八犬伝の世界を知る上で観た映画ですが、全く違うところで感心してしまった映画でありました。
最後に。
真田広之は素晴らしい。あのルックスと身体能力と肉体だけで、映画のクオリティが上がって見えるというのは稀有な才能だなと。改めて・・。
ということで。
今度は滝沢秀明が主演を努めたドラマ版の「里見八犬伝」を観てみようと思います!
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