橋本病と診断された時のこと

私が橋本病だと分かったのは2011年でした。

忘れもしない東日本大震災の直後のことです。


夜になると37度前半の微熱があり、朝には下がる、そんな状態が1週間ほど続きました。

さすがに体が重く、だるくて仕事に集中できない毎日でした。


春先だったのでインフルエンザだとまずいと思い、夜勤の仕事中に救急外来を受診させてもらいました。


その時は救急当番の研修医の先生が診察してくれたのですが、血液検査の結果には異常なし。インフルエンザも陰性でした。


ただ、その先生に「僕が診た感じだと甲状腺が少し腫れているのが気になります。熱の原因とは関係ないかもしれませんが、後日専門医に診てもらったほうがいいかもしれません」と言われたのでした。

少しの腫れを見逃さなかったこの研修医の先生には今でもすごく感謝しています。


翌日自分が勤務する病院の内分泌科を受診しました。その時の採血結果で橋本病と診断されたのでした。



一般的に採血では主にFT3、FT4(甲状腺ホルモン)と、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、甲状腺の抗体なども調べ、総合的に判断されて橋本病と診断されます。

橋本病は甲状腺を異物と判断して出来た抗体が甲状腺自体を破壊して甲状腺ホルモンの分泌を減らしてしまう病気です。

原因は分かっていません。


橋本病になったからと言ってすぐに甲状腺の機能低下が起こるわけではありませんが、甲状腺の破壊が進めば甲状腺ホルモンの分泌は低下します。

私の場合も橋本病の経過を診ている中で徐々に甲状腺ホルモンの分泌が減り、約1年後に甲状腺機能低下症と診断されました。

甲状腺機能低下症と診断されてからはチラーヂンという甲状腺のホルモン剤を内服しています。

採血の項目自体は看護師の私でも難しく分かりにくいものですが、ざっと説明するとこんな感じです。



その他にはエコー検査もやりました。

橋本病では甲状腺が腫れてきます。

大きさの確認と、その中に癌が発生していないかを何ヵ月かに1回エコーで確認しました。



私の場合は橋本病と診断された時点では大きな自覚症状はありませんでした。

自覚症状が出てきたのは診断されて2ヵ月くらい経った頃でした。

ある日突然猛烈なだるさに襲われました。

とにかく何をするにも猛烈にだるいのです。

体は思うように動かず、体を起こして椅子に座っていることすらだるい。

なんとか仕事に行ったものの、人と話すことも辛く、仕事から帰ってベッドに倒れこんであまりのだるさに泣いたことを覚えています。


さすがに変だと思って後日病院に行きました。

しかし、検査結果では特に大きな変化は見られませんでした。

こんなにもだるいし、変なのに。


この自覚症状が辛いのに検査結果では特段問題ないというのが、この病気の本当に厄介なところだと私は思っています。


熱が38度あれば周りは心配しますし、仕事を休めと言うでしょう。

激しい腹痛や頭痛も、大きな怪我も同じように心配されるでしょう。

しかし、「体がだるい」というのは他人からは分かりにくいため、非常に理解が得られにくいのです。


「寝不足じゃない?」

「疲れのせいじゃない?」

「そういうこと私にもあるよ」

何度そういう言葉をかけられたか分かりません。


でもこれだけは言えるのは、そんなものとは比べられないほどのだるさだということなのです。


普通に家事をしたり仕事をしたり、普段の日常生活ができないような「だるさ」は単なる疲れや、自分のだらしなさ・甘えからくるものではありません。

それだけはどうしても誰かに伝えたかった。


でも、それを説明して理解を得られるような人間関係は私の周りにはありませんでした。

辛いことを辛いと言えないのは本当にきつかった。


職場の同僚たちは分かっていながら、見て見ぬふりをしていたのかも知れません。

本当に病気のことを一緒になって心配してくれる人がいたら私は仕事を辞めずに済んだのかもしれません。

病気になったことよりも理解が得られないことの方が私ははるかに辛かった。


甲状腺の症状は「だるい・寒い・動けない・頭がぼーっとする」など他人からは分かりにくいものばかりです。

そして検査をしても、大幅に逸脱しない限りは数値として現れてはきません。

でも自覚している本人はとてもとても辛いものです。


長年の経験から、このミスマッチこそがこの病気の1番厄介なところであり、辛いところだと言っても過言ではないと私は思いました。


次回はこのミスマッチによってどんなことに苦しめられてきたかを書きたいと思います。

甲状腺の病気をもつ方であれば共感していただけると思います。

もし身近に甲状腺の病気の方がいればこういう風に言われたら辛いのかというのを知っていただければと思います。

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