教育実習
自分の指導を振り返る。vol.20
自分を信じる事が出来なかった。自分の無力さを肌で感じ、夢実現へのはじめの一歩のはずが、300歩後退にみえた。ダルマさんが転んだを想像しても、ゲームに参加さえしていない距離だ。
『利光オモシロー。先生よりわかりやすい。』
の言葉を信じ、いざ登壇。
無力。
夢を抱いたその場所が、恐怖の場所へと変化した。
生徒の疑問に満ちた顔。離れていく心。引き戻そうと必死で雑談パンチをするも、沈黙というカウンターパンチが心に捻じ込まれる。
敗北。
何度立ち向かおうが、完膚なきまでにやられる。
敗北は、次なる挑戦のスタートを意味した。
夜は寝る時間なのか?
いや違う。
恐怖で身震いする時間。
勉強しようが、頭になんか一向に刻まれない。逃げたかった。
たぶん、鬱だった。
理想の授業とのGAP。理想が何かさえわからない。普通の授業でも良いと思ったが、普通が何かもわからない。
生徒へ向けた顔面は、授業の経過と共に、黒板へキスするんじゃね?って距離まで接近し、2人きりの授業。
私と黒板の愛の授業。
生徒の存在を無視した、孤独な世界。もう無理だった。
何とかしようと、先生方の授業を見学。学びにはなったが、到底及ばないという感情が上回り、不安の要素が倍増した。完全に負のスパイラルに巻き込まれた。
だけど、彼らは違った。忘れもしない。
2年7組の生徒(初生徒)は、出鱈目な授業を連発しても、受け入れてくれた。助けようとしてくれた。
わからないのに、満面の笑みで『わかるよ〜😃』って支えてくれた。嘘だって知ってた。だから、意地でも面白くて、分かり易い理想の授業をやりたかった。
だが、研究授業も含め、実る事は無かった。
絶望だった。
『教員は辞めよう』と心に念じた。
最終日の前夜、尊敬すべき担当教諭八木澤健光先生に教室へ呼ばれた。
『明日歌おう❗️』
どういう展開か理解出来ない状況ではあっが、従った。
話は続く。
『森山直太朗、さくら(独唱)は、お前の歌だ。だから歌おう!』
俺の歌?
歌詞の説明に入る健光先生。
【僕らはきっと待ってる 君とまた会える日々を さくら並木の道の上で手を振り叫ぶよ】
『ここは俺が歌う。また、お前と会いたいし』
この一節で、感無量。涙は我慢した。
【どんなに苦しい時も 君は笑っているから 挫けそうになりかけても 頑張れる気がしたよ 霞ゆく景色の中に あの日の唄が聴こえる】
『ここは、お前が歌え。まさにじゃないか?沢山授業で失敗しても、生徒達は常に笑顔だったろ。涙を流して、目が霞んで、次の日の景色が見えない時もあったろ?あの合唱コンクールの唄が励みになったことがあったろ!』
熱い…熱すぎる…。夜の恐怖の震えを上回る、心の揺れを感じた。
説明は続く。
【さくら さくら 今咲き誇る 刹那に散りゆく運命(さだめ)と知って 】
『ここからは、一緒に歌おう。さくらは、咲き誇る期間がある。お前と同じ3週間くらいじゃないか?お前の頑張りは、生徒達の心で満開になっている。不器用だけど、不器用が良かった。努力の大切さを教えてくれた。』
……涙。話は続く。
【さらば友よ 旅立ちの刻(とき)変わらない その想いを 今】
『ラスト。ここも一緒に歌おう。旅立ちの時だ、絶対に教師になれよ。お前は教師が向いている』
…残念ながら。教師には向いてない…。と思ったが、さくらは俺の唄だ!とは思った。
いざ本番。
定番の生徒達の『まだまだ利光来ないで〜』タイム。色紙のプレゼントに、誰かまだ書いていない奴がいるんだろうと察したが、ナニナニ?の定番のコメントで返す。そんなこと以上に、これから俺は歌うんだぞ!内緒だけどね!って感情が上回っていた。
『利光、後ろから入って〜!』と教室内から廊下に響く。
いざラストホームルーム!何を話そ〜なんて考えながら入場するや否や
『トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン〜〜トゥルールー♪』(さくらイントロ)
ギター担当健光先生を囲み、生徒皆んなが合唱体系に並んでいる。
やられた〜なんて感情は一瞬でブッ飛び、男女問わずの生徒の涙とクシャクシャな顔の数々、それと溢れんばかりの歌声に、心は撃ち抜かれた。
聴いているだけでは、駄目だった!と我に帰る。
俺の番突入。
声を発しない状態では、何とか我慢ができた、心の汗が大量放出。
歌詞の意味は感謝の意味。
だから、人前での涙の恥を捨て、全力で歌った?伝えた!
教室中が感動に満ち溢れた。
歌が終わり、コメントを要求された。
別れの言葉だ。
感動なのか、達成感なのか、失望感なのか、涙の意味はさっぱりわからない、わかろうともしないが、出続けるものを止める感情は機能しなかった。
何かを発した。
何を言ったかは、覚えていない。
ラストの言葉を除いては。
『感謝しかない。たがら、絶対に教師になってみせる!凄い教師になって、いつかみんなのお陰で今があるって伝えにいく』
言ってしまった…。後悔もあったが、前を向いた。
一発合格。加藤利光という教員誕生。
だから今がある。今の自信に満ち溢れた自分がある。中身ポンコツの乗り物を得てしまったから、何時間も、何万時間も磨きをかけて到達した。だから思う。誰だって本気になりゃ、諦めなけりゃ実現できるって。
本当にありがとう。2年7組の皆さん。
本当に感謝してます。八木澤健光先生。
あなたは、実習生を利用して(よい意味で)、授業の質は落ちるけど、生徒に大事な大事な、間違いなく数学より大事な、人の大切さを指導されたんですよね。身になりました。絶対に忘れません。
だから、今年も、自分は積極的に実習生を受け持ちます。
先生の指導を見習って。
自分だけでは指導できない、
人間の心の授業を、刹那に散りゆく運命を知った、さくらと、共に。
追伸 みんなからのメッセージが最近出てきて、現在みんなをFacebookで探してまーす。
では。