あせび野 谷川の湯から学ぶこと

コロナ禍で海外旅行にも当然行けず、とはいえ、なるべく人を避けて旅行はしたい。そして、妻の出産里帰りまであと2ヶ月位ということもあり、
残りの期間で最後の2人の時間を楽しもうをモットーに、いつもより良いお宿に泊まってみることにした。宿ごとに何処か気に入ったポイントだったのかと、他にも応用できそうな考え方やポイントがあったので、忘れぬうちに徒然に書き出しておきます。

私はこの歳になるまで伊豆に素敵な温泉があることやこんな素敵なお宿が内陸にあるとは知らなかった。伊豆と言えば海岸線…という固定概念を持っていた自分が少し恥ずかしくなりました。

ちなみに、”あせび野”の”あせび”の花の花言葉は、「あなたと二人で旅をしましょう」だそうです。何とも素敵な。確かにわいわいがやがやではなく、大切な人と二人で行きたくなるお宿でした。

【勉強になったポイント】
●やり方によって運営側も効率的になり、お客様へのもてなしにもなるWinWinが可能になる。
●効率がよく美しい。おもてなしとはWinWinの関係。働くほうも気持ちよくないといけない。
●周辺に大きな観光地が無くても、宿自体が素晴らしいとそれ自体がコンテンツになる。
●自然、特に日本の自然自体非常に強いコンテンツになる。
●強みが何かを考えて、そこを最大限見てもらう、使ってもらうにはどうしたら良いかという視点で組み立てるのが大事。
●当たり前は最高級に行う。そして、ちょっと当たり前でないところに気を配ると人間の評価はグンと上がる。
●普段、あまり価値を置いていないことやしていないことに、非常にクオリティが高いものが来ると感動しやすい(評価が高くなる)
●旅館のアンケートに関しては手書きが良いと思った。何故なら宿泊している時間の中で書くわけで、
 どういう心理状態で書くかというのが反映されるからだ。例えば、気持ちが良かったらなぐり書きはしないだろう。
 それに、大変良いという評価指標に二重丸などをする人も出てくる可能性もある。そういうのはデジタルでは取れない温度感だからだ。

【良かった点】(お風呂)
・貸し切り風呂の予約がデジタルでできること。そして、チェックインした人から予約ができることで、大抵の人は早めにチェックインをする。そうすると、遅れている人向けにチェックイン時刻の確認をしなくて良いのと、夕飯の時間も必然的に早めることができる。夕飯の時間も早い時間での2択性。18:00~と18:40~。人件費もある時間に集約できるはず。(本来は食事の場を広くとり、客室は多く…が料金も下げつつ、売上面積を稼ぐやり方もあるだろうが、この宿は1部屋の1つの食事個室を設けているので、2部入れ替えができないがそもそもできないと思われるが、それはその分、客単価を上げてカバー。いずれにしても従業員を長時間拘束しないといけないということは免れる)

・貸し切り風呂の予約に関してだが、部屋にある端末からQRコードを読んで、サイトで予約ができる。QRコードを読ませるだけなら、紙だけで良いのでは?という違和感だけは拭えなかったが、簡単にいちいちフロントを介さずに空いている時間割の中から選べるのが良い。しかも、4つの貸切風呂があるのだが、各風呂1泊につき1回のみの予約しかできないというのも絶妙。仮に1泊のうちの全部行けなくても、今回は入れなかったところは次回入ろうとなるし、気に入った&人気の貸切風呂に集中することも無い。ちなみにQRコードから入って予約ができなくても、もちろんフロントに電話をして予約をすることも可能なのでデジタルに弱いご高齢のお客様でもなんらストレスなく予約することができる。

・貸し切り風呂の時間は30分ないし40分の時間設定。これは入る前はちょっと短いかな?とも思ったけど、「のぼせるかなと思って休憩…」のこのターンが2回くらいできる時間でこれも絶妙にちょうどよかった。しかも貸し切り風呂に入る前にはフロントに風呂の鍵を取りに行き、タオルの入った籠を受け取り、帰りは使ったタオルを入れてフロントに戻す仕組み。タオルをいちいち部屋から持っていくのも面倒なので、この仕組みは有難いが、これは運営側にもメリットがあると思われた。一度、フロントに脚を運ぶことで、お客さんの様子も見ることができるし、予約だけして行かないという人物を減らす効果にもなるなと。フロントに行かなければならないという制約があると、仮に貸し切り風呂に浸かるのが面倒になった場合、恐らく人はフロントに電話をしてキャンセルをするはず。そうすると空き枠ができて、予約できなくて残念だった人に譲れることになるわけだ。宿の強みである温泉を最大効率稼働させるにはこのやり方が良いと思われた。しかも、貸し切り風呂に使用済みタオルなどを残して景観を損ねることもなく、労せずしてタオルを回収できるというのも効率的に思われた。もちろん、貸し切り風呂には時計も付いており、時間を気にしすぎて早く出すぎるということも無い。

・貸し切り風呂4つのうち3つは建物から少し離れて川の近くに歩いていくことになる。これは建物を作った際の構造上の理由なのかはわからないが、
最初は建物と別にあることが面倒だなとも感じたが、行ってみると非日常感が味わえて、これはこれで満足度を高めるなと感じた。また、これは冬だけかもしれないが(夏は汗ばむということで同じ現象になるかも)お湯に浸かってもう暫くしてからでないと次は入れないかな?と入った直後は思うのだが、帰りに建物に戻る間で少しだけ体温が戻るので、「あれ、違うお湯も入れるかな」と思ってしまい、そんなに時間を空けずに違う温泉に入る気分になる。これもたまたまかもしれないが、温泉を最大限お客に使ってもらうという点では理にかなっている。

・大浴場などにもタオルは備え付けになっており、兎に角、風呂に行く点において何も持って行かずとも入れるというストレスフリーな点が良い。
 
(お食事)
・朝食も和食と洋食の2択が可能で選べる嬉しさがありつつ、運営側もその2パターンに全力を込めればよく、廃棄ロスも少ないと思われる。

・食事の時間も、その時間は混んでいるといったような感じで運営側の都合を押し付けられなくてよい。

・料理もとても美味しい。献立にちょっとした調味料など使われているものはかなり細かく記載されていて、最初は量を多く見せるため?などと安易な発想をしてしまったが、わずかな調味料だとしても、しっかり旨さや個性があり、きっと小さなものでもしっかりと作っているということの主張だろうなと食べながら感じた。本当に1つ1つが美味しい。そして、献立で量を多く見せようとしなくても、十二分に量が多く大満足できるレベルであった。

・料理と一緒に飲めるお酒だが、単価が高く結果的にあまり飲まないという形になり、ご飯を食べる前は、今まで泊まったお宿よりも高いかなとポジティブな印象ではなかったものの、ご飯を食べ始めたら、返ってこのブレーキを有難く感じた。 お酒に意識が行くよりも料理に意識が行くべきほどに美味しかったし、お酒でお腹がいっぱいになってしまうのはもったいなかったので。なるべくお客に料理に意識が向くようにするという意図で、しかも、売上単価を下げてお酒で売上面積を稼ぐのではなく、どうせ売上げるのであれば、単価を高くして、売り上げ、そして、お客にも飲みすぎないようにしているとしたら、凄いなと感じた。考えすぎかもしれないが。ただ、よくある売店での酒類の販売もなく(コンビニも近くにないので普通に考えると、
販売しても良いと思えるにも関わらず)、自動販売機で少し売っている程度だが、その種類も少なく、単価もとても高い。これもお酒に溺れるのではなく、お湯や空間をしっかり楽しんで欲しいからなのではと感じた。

・夕食、温泉だけでも大満足だったが、朝食がクライマックスなのではと思えるほどに良い朝食だった。個人的に感じたのは、色々なものが少しづつは旅館の朝食のあるある…だが、ここはサラダと白米が超ド級に美味しかった。こんなにクオリティ高くサラダを作られると記憶に残る。考えてみれば朝食とはサラダと白米、お味噌汁が主軸で、その他はそれを引き立てる存在とも取れるので、この戦略(という言い方はよくないが)は素晴らしいと感じた。

(設備・施設)
・細かいが、男性用の化粧水、乳液も用意しているところが流石。女性用のそれを揃えていないところはこのご時世さすがに無いと思うが、もはや男性でも当たり前にスキンケアをする時代になったので、これは用意しておいた方が評価は高い。

・これも細かいが温泉宿で靴下を用意しているところと用意していないところがあるが、靴下がある方がはるかにありがたく、このお宿も靴下が付いている。

・スリッパに自分でマジックで名前を書ける。コロナ禍ということもあるが、そもそも温泉宿で他人のスリッパとの履き違いはあるあるの定番なので、これは細かいところだがとても嬉しい。

・掘りごたつが部屋に完備。脚の悪い年配の方なども寛げて嬉しいはず。

・部屋に備え付きの温泉の洗い場の水量もしっかりしている。本当に部屋で完結したい人にとっても有難いはず。

・生け花が随所に。花や季節を楽しめる。

・部屋の鍵が2つ。これも細かいが嬉しいポイント。

・セーフティーボックスはよく使い方がわからなかったり、ダイヤル式で番号を忘れるとちょっと怖いよねということがあったりするが、ここはセーフティーボックスも入れる箱が4つに分かれていて、しかも全てリアルな鍵付き。

・男性でも浴衣ははだけて寝るときにちょっと…という人がいるかと思うが、ここは浴衣も作務衣も両方選ぶことが可能。

・チェックアウト時間が10:30と絶妙。これが11時となると運営側の負担が大きくなるだろうし、10:30だとお客側としても、午前中も十分にお風呂が楽しめる時間がある。私の場合は日の出と共にランニングをしたこともあり、午前中だけでもかなり温泉を満喫できた。

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